その日はワクチンの接種があり、買っておいたポカリスエット900mlのペットボトルと接種券を持参して、会場近くの喫茶店で待機していた。

接種済みの知人からは、水分をとるように口酸っぱく言われていたので、喫茶店の水も多目に飲んで開場を待っていた。

私の周りはほぼ全員、使える伝手を使って接種を済ませていた。自治体のオンライン予約開始時間を度忘れしたというポンコツなだけの理由で予約すらとれていない私を見かねて、受けるためのテクニックというかメソッドを色んな人が教えてくれて、いや受けたくない訳ではないんですよ、とか言っている間に職域接種が始まり、受けられることになった。

前知識が多すぎて緊張していたのか、開場よりだいぶ早く着いたので、時間をつぶさないといけない。喫茶店で本を読んでいても落ち着かないので、店を出て歩くことにした。

地下鉄の駅の周りは高架や坂道があって、どの方向に歩きだしても面白い。坂道を上りだすと、歩道沿いに立っている案内版（棒）に神社と書かれている。近づいてみると、ビルのエントランスに並んで鳥居があった。建物と参道の組み合わさり方がモダンな雰囲気だ。

石造りの狛犬はコンクリートとも相性が良い。

近所のよく通る道に顔見知りの猫がいて、道で寝そべっていたり、居酒屋の前で待機しているのだが、通り過ぎるときにふと気配があって振り返ると、こちらを見て鳴いて何か言いたそうにしている。最初は野良だと思っていたが、人に慣れている様子なので半分飼い猫のような立場かもしれない。マスクを外して、猫といろいろ話したくなった。