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アジア紀行~(続)ベトナム・ホーチミン再び③~

ベトナムの銀行業務

チョロンに出かけた日の出来事で、前回書き忘れたことがある。
ビンタイ市場を出たのは昼過ぎだった。たぶん2時間ぐらいは市場の中をウロウロしていたことになる。
次の目的地を『歩くベトナム』の推薦コース、〈ビンタイ市場→チャタム教会→天后廟(ティエンハウ廟)〉と決定する前に、ひとつしておきたいことがあった。日本から持ってきたドルのベトナム・ドンへの両替だ。1ドルが2万ドン以上に替わるので、一度に多額の両替をすると、財布に入らなくなる。今回も20ドルほど替えておこうと思っていた。

市場の前の道路を横切って、銀行らしき小さな建物を見つける。扉を開けて中に入ると、数人の視線がこちらを向く。みんな食事をしている。
『あれっ、間違ったのかな?』
しかし、やっぱりここは銀行だった。ただし、昼休み。日本の銀行や郵便局は昼でも営業しているが、ここベトナムでは昼休みは休業なのだった。次に開業する時間を尋ねると、午後1時半だという。まだ1時間以上ある。昼休みは11:30~13:30というから、何と2時間も仕事をしないのだ。何も知らない外国人が、12時過ぎにやって来て、両替をしてほしいとお願いしても、無理なものは無理。まあ、いますぐ困るわけではないので、引き下がるしかなかった。
こんなベトナム人が(いや、他のアジアの国の人々も含めて)、日本にやって来て、日本人の働き方を見たら、きっと驚くだろう。彼らにとって、残業なんて論外だろうな。

天后ティエンハウ

さて、前回の続きです。

突然の雨に降り込められて、街角でしばらく雨宿り。しかし20分ほどで空が明るくなり始め、やがて青空が見え始めた。
いっしょに雨宿りをしていた男性に天后廟の場所を確認して、水たまりのできた道路に歩み出す。

天后廟はすぐに見つかった。前回ベトナムに来たときにも訪れたはずだが、ほとんど記憶に残っていない。古くて威厳を感じる御廟である。

門の上の屋根飾りがおもしろい。ぎっしりと聖人が並んでいる。入口両側の高いところに獅子がいる。

入口を入ったところに置かれている聖獣もおもしろい。口には玉をくわえている。子取り・玉取りの対になっている。

中に入ると、巨大な渦巻き線香の列! 中国寺院で必ず見られる懐かしい光景だ。

この天后廟が建てられたのは1760年だという。かなり古い御廟だ。中央に祀られているのが、航海安全の神といわれる天后聖母媽祖まそ。道教の女神である。

バスターミナルへの道

天后廟を出て、来た時とは別の道を通って、もとのビンタイ市場の方に向かう。通りには布地屋さんがずらりと並んでいる。

この通りの突き当たりに教会があった。チャタム教会だ。行きはまったく気づかずに通り過ぎたのに、帰りにはあっさり見つかった。

チャペルの中に入ってしばらく休憩する。正面のキリスト像を見つめていると、ここがベトナムであることを忘れてしまう。ひとりの男性が、十字架のついた数珠を手の中で繰りながら何かを唱えている。自分も目を閉じて黙想する。

教会を出てしばらく歩くと公園があり、中央の池で大きな黄金の龍が水を吐いている。

時計を見ると午後2時30分。暑いせいか、あまり食欲はないが、空模様がまた怪しくなってきたので、ビンタイ市場の向こうにある「南龍(Nam Long)飯店」という店に入る。お薦めメニューは「揚州炒飯」だというので、それを注文する。

あっさりした塩味で、炒飯の上や周辺にエビやイカや肉が配置されている。
青菜が入ったスープもついていて、そこそこ美味しかった。値段は70,000ドンだ。
食べている途中で、またスコールがやって来た。さっきよりももっと激しい降り方で、強い風も吹き、店の中にいて大正解だった。それでも風に吹かれた雨のしぶきが店の中に入ってくる。
ベトナム風のアイスコーヒーも注文。グラスの下半分はコンデンスミルクだ。この甘さ、やみつきになりそうだ。
3時40分、支払いを済ませて店を出る。おばさんが店の名刺を持ってきてくれる。

バスターミナルに着くと、ちょうど1番のバスが発車する直前だった。
今度は4,000ドンを料金箱へ。
40分ぐらいでベンタイン市場前のターミナルに到着。結局一日をチョロンで過ごしたことになる。
ホテルに戻り、シャワーを浴びて、やっと体が軽くなった。

明日はベトナムを出て台湾に向かうことになっている。午後に両替したせいで、まだベトナム・ドンが手元にかなり残っていた。夕方、昨日行った国営百貨店にもう一度行ってみる。えびせん(の元)やお茶などを購入する。
店を出ると、あたりはすっかり暗くなっていた。道路の反対側は人民委員会庁舎前の公園で、建物がライトアップされている。ホーチミン像も見納めだ。

振り返ると、国営百貨店もライトアップ。イルミネーションで飾られた町が夜の闇の中に浮かぶ。

「サイゴン」と呼ばれた町は、時と共に変貌し、新しい町に生まれ変わっていくようだ。

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