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西宮市大谷記念美術館「西宮で観る至高の美術 和泉市久保惣記念美術館展」~展覧会#14~

西宮市大谷記念美術館開館50周年記念・和泉市久保惣記念美術館開館40周年記念交換展

めちゃくちゃ長い展覧会の名称です。この後に、「西宮で観る至高の美術 和泉市久保惣記念美術館展」と続きます。
タイトルが示すように、西宮市と和泉市の二つの美術館が、それぞれ今年で50周年と40周年という区切りの年になるそうです。そこでお互いの収蔵品を交換して展示するという、珍しい展覧会となりました。
和泉市久保惣記念美術館では、この秋に「開館40周年記念交換展 特別企画ダイアローグ かたちのちから -西宮市大谷記念美術館所蔵品展-」が開催されることになっています。


和泉市久保惣記念美術館は、現存する着色の「伊勢物語絵巻」の中で最も古いもの(鎌倉時代)を所蔵しています。ただし、残っているのは、詞書二段と絵七段だけです。
私はこの数年、地域のコミュニティセンターで、「伊勢物語絵」を鑑賞しながら『伊勢物語』を読む講座を開いているので、今回の西宮市大谷記念美術館の展覧会にこの絵巻が出ることを期待していたのですが、残念ながら出展されていませんでした。

面白かった青銅器

今回の展示で、いちばん熱心に観たのは第1室の「金属工芸」。その数99点は、ほとんどが中国古代の青銅器です。
何が面白かったかというと、部屋の入口に小さなライト(懐中電灯)が置いてあって、これで青銅器の細部の模様を観察できたことでした。
これまで、白鶴美術館や泉屋博古館などで、たくさんの青銅器を観てきましたが、こんなサービス?は初めてでした。青銅器独特の饕餮文や蟠螭文など、いろんな文様が光の中で浮き上がります。青銅鏡の裏の神獣や文字もよく見えます。一点一点観ていると、この部屋だけで時間が過ぎていきます。

中国絵画・日本絵画

展示は、中国絵画~日本絵画と続きます。日本絵画の中で目をひいたのは、若冲の「乗興舟」と応挙の「写生図」ですね。
「乗興舟」は、若冲が京都伏見から大阪天満橋まで、淀川下りの風景を延々と描いた長さ11.6mに及ぶ版画の大作です。これは京都国立博物館でも観たことがありました。
文化遺産オンラインでも見ることができます。

円山応挙の「写生図」は十四面展示されていました。江戸時代の写生画といえば、真っ先に応挙の名前が思い浮かびます。当時、博物学的関心の高まりとともに、写生を生かした装飾的画風が、京都を中心に人気を博したのですね。

浮世絵

最後の部屋が「浮世絵」です。
7月の声を聞いた1日、京都では祇園祭が始まりましたが、江戸時代には、祇園祭の神輿を鴨川の水で洗う神輿洗の際に、祇園の芸子たちが仮装行列を行ったそうです。それを「祇園ねりもの」と呼びます。この「ねりもの姿」(24枚)が展示されていました。

祇園ねりもの・源氏夕顔
和泉市久保惣記念美術館「デジタルミュージアム」より 

そのほか、歌川国芳の「水滸伝豪傑図」「相馬の古内裏」、葛飾北斎の「五十三次図」など、多数の作品をみることができます。

歌川国芳・相馬の古内裏
和泉市久保惣記念美術館「デジタルミュージアム」より

今回の展覧会を観て、和泉市の久保惣記念美術館に一度は行ってみたいと思いました。和泉市久保惣記念美術館には、国宝の青磁鳳凰耳花生(銘万声)や、多数の重文作品が所蔵されています。今回の展覧会には、そのようなものは来てませんでした。
和泉市久保惣記念美術館のホームページは充実していて、「デジタルミュージアム」のページから、館蔵作品を見ることができます。


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