音楽『スカ』って何?⑥

さて、前回はジャマイカの歴史を見ていきました。
おさらいすると、

 ●ジャマイカ島にスペインの船がやって来る。
→●植民地化され、先住民は奴隷にされる。
→●過酷な労働と疫病で働き手が激減。
→●アフリカから黒人の奴隷が連れてこられる。
→●イギリスがやってきてイギリスの植民地にされる。
→●フランス革命の波を受けて反乱が起きる。
→●奴隷貿易の終結。
→●ストライキが反乱へ発展(バプテスト戦争)。
→●奴隷制度の廃止。
→●元奴隷への扱いに抗議する反乱が起こる(ジャマイカ事件)。
→●ジャマイカ独立

おおまかではありますが、このような歴史を辿ってきた国なのです。

長く支配され、奴隷として扱われ続けた人々。
そんな人々が生活の中で奏でたリズム、民謡、社会風刺。それがメントでした。

とにかく聴いてみましょう。
メントはこういう音楽です。

さて、

メントと時期を同じくして流行した音楽、それが『カリプソ』です。

こちらは『アンドリューズ・シスターズ』の『ラムとコカコーラ』。
(こちら、歌詞の意味がなかなかです。興味のある方は是非!)

リリースは1945年。
日本がポツダム宣言を受け入れ、第二次世界大戦が集結した年です。

その後の1950年代から植民地の解放、独立の動きが世界的に高まっていきます。
メントもカリプソも、それくらいの時期に流行した音楽というわけです。
(日本だと『東京ブギウギ』が1947年発表。今日だと ク〜リア アサヒが 家で冷えてる〜 で馴染み深いあの曲!)

カリプソはカリブ海域全体に広まった音楽。

東京ディズニーシーには「セバスチャンのカリプソキッチン」というショップがあるそうですね!今回初めて知りました。
『リトル・マーメイド』に登場するカニのセバスチャンはカリプソ大好きなんだそう。
あの有名な『アンダー・ザ・シー』もカリプソ(とレゲエ)!

カリプソを発達させたのは、ジャマイカと同じくカリブ海の島国である「トリニダード・トバゴ共和国」。
聞き慣れない国だ……と思いましたが、リンボーダンスやスチールドラムが生まれたのはここなんだそう。おぉ、そう聞くと縁遠くはない。
首都ポートオブスペインで行われるカーニバルは、ブラジル・リオのカーニバル、イタリア・ヴェネツィアのカーニバルと並ぶ世界三大カーニバルの一つ。
ここでもカリプソは行進用音楽として大活躍しています。

この国は「トリニダード島」と「トバゴ島」、二つの大きな島と近くの小さい島々から成る国です。
日本が北海道、本州、四国、九州の四つの島メインで成立しているのと似てますね。

トリニダード・トバゴもジャマイカと同じ様に、ヨーロッパからの侵略で奴隷にさせられ、強制労働に従事していました。
仕事場では私語が禁じられていたため、労働者たちは雇い主たちにバレないようこっそりコミュニケーションを取る……暗号の歌を歌い始めたのです。
それがカリプソの起源と言われています。
身の回りで起きたニュースであったり、ときには雇い主であるヨーロッパ人……つまり白人の悪口を隠語にして歌ったり……

…………小学生が授業中に手紙回すみたいなことしてる!!いや、労働の過酷さはそんなレベルの話ではないのですが、人間の強かさを感じます。
世間話や上司の悪口でストレスを発散し結束を高める現場の人々。現代に通ずるものがあります。

当然それに気づかれて規制されたこともあったのですが、そうなるとますますヒートアップ。
バレないよう、より巧妙な暗号に。
抑えつけへの文句は強くなり、より過激な政治批判が盛り込まれるように。

時を経て、第二次世界大戦が終わりを迎えるとイギリス(当時トリニダード・トバゴを統治していた国)に働きに出る人が増加しました。
その人たちが持ち込んだカリプソがイギリスでブームとなります。

「アメリカの方の国から働きに来たんだ?ようこそイギリスへ!今歌ってたのなんて曲?故郷で流行ってる歌?へぇ!いいじゃん!」
みたいな感じでしょうか?

第二次世界大戦中、敵国の文化に親しむ者は異分子とされました。
日本でも英語を使うのが禁止され「ニュース」と言わず「報道」と言え、みたいなことが起きています。
敵国の音楽なんて、もちろんだめ。

そんな戦争が終わり文化の交流が再開する。
音楽もまた、再び開かれた道、そして新たに作られる道を進んでいきます。


この頃はメントの曲がカリプソだと言って売られることも多々あったようです。
当時、外国での知名度はカリプソ>メントだったため手に取ってもらえるようわざとそうしたり、似ているから売る側が間違えてしまったり……

https://youtu.be/DYYkJ0kwNss

そうして、カリプソだと言ってアメリカで売り出されたメントの曲『バナナボート』。この『ハリー・ベラフォンテ』が歌うバージョンが最もよく知られているものです。
ざっくり言うと、労働者が徹夜でバナナを積み込みながら「もう家に帰りたい」と言ってる歌詞です。……過労つらい。

https://youtu.be/75PkR4VLqCs

日本ではこちらの替え歌が有名かも?

メントとカリプソは生まれた場所が近く、成り立ちも形式も似ています。はっきりした区別はないようです。
比較的、メントは民謡的でゆったり穏やか、カリプソは社会批判強めで過激……そんな感じです。

昔から存在する音を楽しむ心。
支配の歴史から芽生えた反骨精神。
メント、そしてカリプソ。

各地の音楽が混ざり合い、ここからスカが生まれます。

今回はスカの生まれる源流となった音楽を調べました。
次回も引き続き、そちらを見ていきたいと思います。

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