GAFAの面接術ーその4:GAFAの面接で聞かれる事


はじめに

前回は面接のNG集というか、GAFAでこれは聞かないですよ、と言う質問をまとめました。一時期はやったフェルミ推定とか、クイズとか、心理テストみたいなことはしないです。今回はGAFAの面接で何を見るのか、と言うことについて説明します。

GAFAの面接で何を見るのか?

各社ほぼ同じことをチェックするようになっています。それは

過去の行動を評価する

ということです。グーグル、アマゾン、フェイスブック(Meta)は各社のホームページに面接のプロセスについて詳しく説明されています。特にGoogleの説明は面白いです。というのも採用の方法についてデータ分析をしていることが書いてあるからです。各社順に見ていきます。

Google

Googleでは「構造化された面接」というのを行っています。「同じ職務に応募している応募者に同じ面接手法を使って評価する」面接方法だそうです。この面接の中では「行動についての質問と仮説に基づく質問の 2 種類」があると説明されています。「応募者が過去の状況にどのように対処したかを検証する」という質問です。具体的な質問例も書いてあります。

  • あなたの行動がチームに良い影響を与えたときのことを話してください

  • あなたの第一目標は何でしたか

  • その目標を立てたのはなぜですか?

  • 同僚はどのように反応しましたか?

  • 今後はどのような計画がありますか?

Googleの採用ページの説明で面白いのは、データ分析を行っていることが公表されていることと、よくありがちなNG集がはっきりと書いてあることです。

Googleの採用データ分析

採用に関するデータ分析をしているのがわかるのは、下記の文章からです。

Google ピープルアナリティクスチームで採用の有効性を専門とするメリッサ ハレル博士は次のように述べています。

チーム名が書いてあって、分析に取り組んでいる人の名前まで書いてあります。具体的にどのような分析をしているかまでは書いてないですが、論文の引用もあるので、なんとなく分析内容がわかります。

例えば構造化面接が多様性に富んだ候補者をより公平に扱うことができるとして、下記の論文を引用しています。
"Determinants, Detection and Amelioration of Adverse Impact in Personnel Selection Procedures: Issues, Evidence and Lessons Learned"

"Applicant Reactions to Selection Procedures: An Updated Model and Meta-Analysis"

「構造化面接は、最も優れた就職希望者(つまり、予測の妥当性)を見極めるために最適なツールの 1 つであるだけではなく、他の一般的な面接手法によくある落とし穴に陥ることもありません。」

「構造化面接を行うことで、予測の妥当性が向上し、 応募者間の差異が減少します。」とも説明されてます("A meta-analytic investigation of the impact of interview format and degree of structure on the validity of the employment interview")おそらく面接内容と、入社後の社員のパフォーマンス(昇進までの時間とか、離職率とか、在職期間の長さとか)の関係性を調べているのだと思います。

Googleが考える面接でのNG

これは意味がない、ということも書いてあります。

まずは「直感を信じてはいけない」ということです。少し前にZOZO創業者の前澤さんが批判されていましたが、面接で部屋に入ってきた瞬間に一瞬でわかる、と言うのは完全に否定されています。

前澤友作氏、採用面接で「こいつダメだ」いい人材は「一瞬で分かる」驚きの判断基準を明かす

なぜダメかというと、人間には確証バイアスというのがあるからと書いてあります。確証バイアスとは、一度何かを正しいと信じてしまうと、その仮説を支持する情報だけを集めてしまい、反証となるような情報を無視してしまう、というものです。面接の場合だと、「この候補者はいい」と最初に思ってしまうと、その人が良いという「第一印象が正しいと確認できる」情報だけを無意識に集めてしまう行動です。例えば募集している業務を行う専門知識を持っていないとか、自分が当事者として何かを解決した事例があまりない、というような時にも、そういった情報を集めることができません。入社した後に仮にその人に何か悪いことが見つかったとしても、確証バイアスが働いて見て見ぬふりをする、ということもあり得ます。

次に、難問奇問をしない、ということです。

"Google Finally Admits That Its Infamous Brainteasers Were Completely Useless for Hiring"

これは前回の記事で紹介したような、ピアノの調律師が何人いるかとか、マンホールの蓋が丸いのはなぜか、というような質問です。「ワーク・ルールズ」という本を書いているラズロ・ボックの言葉を記事では引用していて、「完全に時間の無駄」で、「全く役に立たない」と手厳しいです。「何の予測にもなっていない」「面接官が自分が賢いと気分よくなれる」というものだったようです。ちなみにこの本はこれまでのGoogleでの面接の改善やテストの結果が過去から順に追って説明されていて、おすすめです。

そのほか役に立たなかった質問として、

  • シアトルにあるすべての窓を拭く仕事にいくら支払うべきか

  • サンフランシスコの避難計画をデザインしてください

  • 1日の間に時計の長針と短針が交わる回数は

  • ある男がホテルまで車を押していって、財産を失いました。何が起きたでしょう

なんてのが記事では紹介されています。今は違うのかもしれませんが、昔の公務員試験では3問目みたいな問題が多かったですね。地方自治体の財政状況が苦しいのは、何か関連があるのかもしれません。

アマゾン

Amazonでは、「面接の流れ、重視していること、どのような準備をすべきか」について詳しく書いてあります。特に面接については、

Amazonでは、行動に基づいた面接(Behavioral Interview)を行います。

と明言されています。「Amazonの面接官には、行動に基づいた質問をするということが根付いています。」とも書いてあります。Leadership Principle (LP)というAmazonで重視されている信条というのがあって、これに沿った質問をされると書いてあります。ビデオまであります。

例えば具体的な質問として、

  • 過去に問題に直面し、数多くのソリューションを見い出した経験について教えてください。どのような問題で、どのように行動方針を決めましたか? その際にとった行動により、どのような成果が出ましたか?

  • リスクを負ったり、過ちを犯したり、失敗した時の経験について教えてください。それらに対してどのように対処し、またその経験からどのように成長しましたか?

  • プロジェクトでリーダーを務めたときの事を教えてください。

  • 過去に同じグループのメンバーのモチベーションを上げたり、特定のプロジェクトで共同作業を推進したりしなければならなかったとき、あなたはどのようにしましたか?

  • どのようにデータを使い、戦略を立てましたか?

などが紹介されています。いずれもGoogleと同じように難問奇問ではなく、フェルミ推定やクイズのような質問はありません。過去の状況にどのような行動を取ったのか、を問う質問ばかりです。

加えて、プログラマーなどの技術職では、コーディングのスキルチェックもあるようです。Googleのページでは特に記載がなかったですが、おそらく同じようなプロセスだと思われます。

テクニカル面接では、コーディングとシステム設計を中心としたスキル/テーマに焦点を当てます。コーディングチェックにつきましては、面接日時確定時にお送りいたしますメール内にコーディングリンクを記載しておりますので、そちらよりアクセスください。またシステム設計の面接に関しましては、ご自身のパソコンからホワイトボードアプリをダウンロードするか、紙とペンをご用意いただけますと幸いです。

このように、Amazonでも行動をチェックする、という面接になっています。

Meta

ソフトウェア開発の人のためページがあります。ここでも「行動」が重視されています。

このページには面接までの流れ、準備方法など大まかな説明が書いてあります。さらに詳細なガイドがあります。

Full Loop Interview Prep Guide

Coding, Design, Behavioural と大きく3つの質問があるようで、最初の二つはソフトウェア開発の人向けの技術的な質問です。コードが書けるかどうかと、デザインです。3つ目が行動となっています。技術者向けでも行動を見るのが興味深いです。

では行動でどういうことをチェックするのかというと、5つの要素が挙げられてます。

  1. Resolving conflict

  2. Growing continuously

  3. Embracing ambiguity

  4. Driving results

  5. Communicating effectively

Resolving Conflict

同僚やマネージャーとの意見の衝突・不一致をどのように解決したか、という質問です。どのように問題を解決したか、自分と意見が大きく異なるような人とも理解を示して接することができるか、という点を評価すると説明されています。

Growing Continuously

継続的に成長できているか、という質問です。成長や学びの機会を求めるような行動、態度は見られるかどうか、誰かからの批判的なフィードバックを成長の機会とできているか、どのようにスキルの向上を行ってきたか、ということを聞くようです。

Embracing Ambiguity

曖昧な状況を受け入れることができるか、という質問です。曖昧で変化が激しい環境でどのように働くことができるのか、情報が足りなかったり何かが明確になっていないような状況でも意思決定をして生産性高く働くことができるかどうか、プロジェクトの優先順位が大きく変わった時にも素早く対応ができるか、という点を見るようです。

Driving Results

結果を残せるか、という項目です。目標達成のために自分や同僚を奮い立たせた経験について聞くということです。困難な状況にあっても誰かの指示なく目標達成のために行動できるか、という点を評価するようです。

Communicating effectively

効果的に意思疎通ができるか、という項目です。チームや別の組織の人ともうまく意見の交換ができるかどうか、業務や利き手に応じてコミュニケーションのスタイルを変えるなどうまく対応ができるかどうか、という点を見るようです。

これら5つの点を評価するために、例えば「過去に行ったことについての詳細と、その結果とインパクトについて教えて下さい」「過去の事例から何かを新しく学んだ時のことについておしえてください」という質問があるそうです。

このようにMetaでは技術的な質問+行動に関する質問になっていて、行動に関した質問が含まれています。クイズとか難問奇問はありません。

まとめ

グーグル、アマゾン、メタの面接質問について、各社のホームページからどのような面接が行われているか、何を評価するのか、紹介しました。各社の説明を読んでわかると思いますが、各社ともかなり面接に力を入れていることがわかります。専門の分析チームを作って、どうやったら良い人材を面接で見抜くことができるのか、その成功率を上げるためにこれまで様々な手法を試して、日々改善していることがわかります。特にGoogleは上記に紹介したページの中でもかなり詳しく自社での分析結果についてシェアされています。

シリーズ最初の記事で書いた通り、外国(特にアメリカ)で起きた変化が10年後、20年後に日本にも持ち込まれる、ということ経験則が当てはまるとすると、今後日本の面接でも行動中心に聞く面接が主流になってくると思います。

日本の会社でも、人材育成には力を入れている、などと会社説明などでは紹介されていますが、専門のチームを作って、過去の面接の結果を全部データ化して、分析までしている会社はほぼないと思います。以前は人材ではなくて「人財」と書くことで、私たちの会社は人を大切にしています、みたいな言葉が流行っていましたが、最近はあまり目にしません。さすがにもう廃れたのでしょうか。

次回はそんなGAFAの面接にどのような準備をしたら良いのか書く予定です。

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