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自分の考える住みやすい暮らし

2021年、小学校の授業で、愛馬ハナと一緒に学校に招いていただき、以下の質問に答える機会がありました。これはそのときに整理した回答案です。

①考える住みやすい下川の町(理想)

食べものや水、燃料資源など、人が生きるために必要なものはすべて森林が育んでくれる。それを大切に守って生かすことが、最も便利で環境にも人にも無理のない、持続可能な豊かな暮らしだと思っている。
森林の中に家や店、施設があって、多様な動植物が生息し、森林から得られる身近な恵みを持続可能な形で生かしながら、みんなで分け与えあい、支えあって、日々の暮らしそのものを楽しみながら、つながりあえって暮らせるまち。
生きるために必要な仕事、運動や健康維持、交流、遊び、学びがつながっているような暮らしができるまち。(家事も含め仕事が運動や健康維持にもなり、交流、遊び、学びにもなるような暮らし)

②考える下川の課題


課題1  森林と生活空間が分かれている。
その理由は何かというと(なぜそれが課題かというと)
森林の恵みを生かしたくても時間とエネルギーを使って運び出さなければならない。
豊かな自然がある下川町では、自然の恵みを生かしたお金のかからない暮らし方があるはずなのに、仕事に追われて時間に余裕が持てず恵みを生かしきれていない。結果、お金の依存が増え、お金を稼ぐために時間に追われる悪循環が生まれる。
そうなってしまうと都会と比べ不便と感じることにつながる。
下川町の環境を生かした働き方と暮らし方こそが、
そこに住みたい暮らしにつながると思う。
 
課題2  下川町の馬文化が消えようとしている。
その理由はどうしてかというと(なぜそれが課題かというと)
 馬は昔から人の暮らしを支えてきた欠かせないパートナーで、仕事、運動や健康維持、交流、遊び、学びを結び付けた暮らしが実現できる可能性を持っていると感じている。
(それが消えようとしている)
 また、馬の多くは競走馬か食肉の2択が多いのが現状だが、
馬はそれ以前に暮らしのパートナーであるべきだと思う。

③その課題を解決するために今、していること

6年前から町内で「馬」を生かした暮らしに取り組んでいる。
その理由は『馬と共に人が生きることで、人間社会が抱えるさまざまな課題を解決できる可能性があり、心も豊かになり、地球に優しい暮らしが実現できる』と思うからである。
飼っているのは、日本在来の北海道和種馬「ドサンコ」のハナ。今は9歳になった。
なぜ「ドサンコ」なのかというと、人の都合で改良された馬ではなく、自然の中で生きる力がある自然の馬を飼うことが重要と思うから。ドサンコは北海道の厳しい自然を自力で生き延びることができ、冬も雪から草やササを掘り出して食べて生きる、たくましさがある。

馬は雑草やササなど増え過ぎるほどある資源を食べ、人や物を乗せて運ぶエネルギーに変えて、良質な肥料となる馬糞を出してくれる。馬は自転車と同じ軽車両で、私にとって日常の移動手段でもある。時々、ハナに乗ってお出かけや買い物、自転車に乗る友だちとサイクリングもしている。最近では名寄市内まで往復した。馬は人と一緒に移動していろいろな場所の人と交流できることも魅力。馬と出かけると近くの方が集まって、交流も生まれる。自然にあるものを循環しながら、人と自然、人と人を結び付けてくれる。

馬を飼うさまざまな理由:
馬は人と互いを思いやり、心を通わせることで動く動物でもある。
馬に感謝と思いやりの気持ちをもって接することで馬はそれにこたえてくれる。
馬の気持ちになって、やってほしいことをわかりやすく伝えること、何よりも感謝の心が大切。思い通りに動かない場合は、自分の伝え方や接し方に原因があるかもしれない。
自分のことを考えてくれない、言っていることがわからない人の言うことは聞きたくないと思うことがあると思うけど、馬も同じ。馬から生きるために大切なコミュニケーション能力を学ぶことができる。

乗馬は乗る人の心を前向きにし、全身の筋肉を鍛えることができ、心身の健康や機能回復に結び付くことが医学的にも認められている。不登校やうつ病、認知症や介護予防などへの効果が期待できる。乗馬の移動は自動車より時間がかかるので不便と感じるかもしれないけど、馬と心を通わし、人との交流も生まれ、効果的な運動にもなって、心身の健康にもつながり、ガソリンも使わない、排気ガスもない、運動不足にもならない、体が不自由な方でも移動できる可能性もあり、楽しくて環境にも優しい。
ハナは推定で時速最大40㌔で走れると思うが、舗装された道路では脚の負担がかかるので、16㌔程度に抑え移動し、バランスが保たれた状態であれば、重さ200㌔まで運ぶことができる。
『馬と共に人が生きることで、人間社会が抱えるさまざまな課題を、持続可能な形で複合的に解決できる可能性がある。』

馬を通じた活動:
乗馬で移動しながら、町内のいろいろな施設や地域を巡り、こども園、森のようちえん、老人ホーム、障害者支援施設、そして小学校などあらゆる方々と交流し、保育・教育・介護・福祉に活用している。町内のさまざまな地区でも草刈りを兼ねて出張放牧し、近くの人たちに触れあってもらっている。ハナを放牧することで、子どもや大人、高齢者が集まって、自然と世代交流が生まれている。

身近な森林資源を生かす手段の一つとして、みくわが丘の活動にも参加させていただき、
毎年2か月程度、みくわが丘に馬を放牧して、増え過ぎたササを食べてもらって糞をしてもらって、森林の生物多様性に結び付けられるよう取り組んでいる。日ごとに放牧する場所を変えて草刈りにも活用している。自宅の庭にも定期的に放牧して草を食べてもらっている。
馬糞は微生物が豊富で土を良くしてくれて、植物を育むことができる。庭の野菜は肥料や農薬は使わず、馬糞で作っている。馬糞で育ったおいしい野菜を食べて私たち夫婦は生きている。馬糞は畑を作る地域の方々との物々交換に活用している。
最近は、ハナにそりを引かせたて遊んだり、小さな畑を耕すことにも挑戦している。
馬を飼いたいと思う移住者がこの数年増えており、下川で6、7人のグループを作って、馬を通じた交流も始めた。馬を飼う人が下川で増えてくれることを願っている。 (現在は出前草刈放牧を実施し、町内の民家や施設を巡って馬で草刈りサービスも実施中。物々交換または無償ボランティア。みくわは2024年度から通年放牧開始予定 )

馬以外の取り組み:
持続可能な暮らしのために、馬以外の取り組みもしている。
自分でも森林を所有してその恵みを生かし、春は山菜、夏秋は野菜、(たまに川魚)、冬はシカ肉など、その土地で育つ、その時期にあるものを食べる暮らしを心掛けている。
その時期、その場所でとれる食べ物には、その時期、その場所に暮らす人に必要な栄養を与えてくれると思う。(たとえばトマトは夏にとれるが体を冷やすことができる)

エネルギーも自給している。
電気は太陽光で発電し、発電の半分は余るので逆に売っている。
太陽光発電は、気温が低いと発電効率が良くなり、雪が地面に積もるとその反射光も受けて発電量が高くなる。年間の発電量は雪国だからといって、決して不利ではない。(その後、蓄電も始め売電・買電をやめて自家発電・自家消費に転換)

料理や湯沸かし、暖房などの熱には、薪、使われない木材、枯れ枝、燃やせるごみなどを燃料に冬は薪ストーブ、夏は手作りのミニロケットストーブなどを使っている。
時間のないときは料理にカセットコンロも使っている。
枯れ枝一塊でその日のごはんも炊ける。枯れ枝はノコギリを使わなくても、手で簡単に折ることができる。もし、森林が近くにあればお金をかけずとも燃料はいっぱいある。
地域の人たちでお互いの作ったものを物々交換して暮らせる社会につなげたい。

④ 子どもたちに伝えたいこと、思いなど


私は幼い頃から高校卒業まで、東京や大阪など都会で育ったが、
お金をかけずに身近なもので暮らせる、下川町の自然豊かな暮らしが一番便利だと感じている。環境に優しい暮らしが、人にも優しい暮らしなのだと思う。皆さんが将来、都会で暮らすことがあって、道に迷ったとき、暮らしに必要なものがなんでもある、下川町の便利な、豊かな暮らしがあることを思い出してくれたらうれしく思う。私は下川に移住したとき、家も仕事もお金もなかった。月1万円で暮らした時期もある。
それでも生きられた理由には「相手のためにお互いの自分のできることをする(支え合い)」「分け合う循環」「身近な資源を生かす」の3つがある。
自分のできることを手伝って、お礼に食べ物をいただく。自分で作った野菜ももらった食べ物も必要な分だけ食べ、残りは周りに配る。すると周りから違うものをお礼にいただく。その支えあいの循環が自分を生かしてくれた。アイスクリーム1個を全部食べず、半分で十分だと思えば、だれかと半分にして分け合い、半分をじっくり丁寧に味わえばいいと思う。(その心と行動が暮らしやすさにつながる)
2人で分け合えば、2人で2倍楽しめる。
馬とふれあいたい、もっと知りたいと思ったらいつでも声をかけてほしい。

馬授業 (1)


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