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どうせ人は自分のことしか考えていない。ちがう?

確かあれは4年前だったと思う。
私はあるグループに所属をしていた。
そこには、「お昼ご飯を誰かと一緒に食べたい年上の女性」がいた。
彼女はいつも世の中からひどい目にあっているようだった。
「突然、ママ友から仲間はずれにされた」
「家族が自分を大事にしてくれない」
彼女はとてもつらそうだった。
私と仲間は彼女のことを可哀想に思った。
そんな彼女はなぜか、きれいで可愛い女性タレント2人を憎んでいた。もちろん、面識などないのだが。

グループのみんなで、時々ランチに出かけた。
「財布にお金がちょっとしかない」
誰かとランチをすることに人一倍こだわりのある彼女は時折そんなことを言った。
「貸すよ」
仲間数人がそう言うなか、私はつぶやいた。
「そこのATMでおろしたらええやん」
場所は三宮。ATMなんかそこらじゅうにある。
「今、旦那に○万円振込んでもらえるよう連絡した」
スマホを片手に彼女は硬い表情をしていた。働いていて収入があるのに自分のお金を自由にできないようだった。
飲食店に入ったあと、仲間から借りたお金で注文をし、振り込まれたことをスマホで確認すると急いでATMへ走っていった。


「お財布に千円しかない。足りるかなあ」
ある時はこんなことをひとりごちて、また仲間に「貸すよ」と言わせていた。
結局、その時は借りずに済んでいたが。
ある時、彼女はついにこうのたまった。

「お財布を忘れた」

仲間はまた「貸すよ」と言った。
一人が貸すことになった。
「○円足りない」
精算時、貸した人が突然に嘆いた。小銭だった。
1万円はあるが、くずしたくないらしい。
仲間は「貸すよ」とまた言い出した。
でも、実際に財布を出す人はいなかった。
「貸すよ」
つい、私は言ってしまった。
私は小銭を貸した。
その後、彼女は最初に借りた相手と私のそれぞれにお金を返すという約束をした。

この件は、2ヶ月の間忘れ去られた。
ある日、私はこの件を思い出した。
「私においては小銭だからまだいい。世話になっていることもあるし、水に流してもいい。でも、もしかして、彼女は最初に借りた人にも返していないかもしれない」
私は彼女に連絡した。
記憶があいまいなようだった。
どうやら最初に借りた相手に私のぶんも含めて全額を渡したようだった。
約束は破られていたのだ。
私は、そもそも彼女にお金を貸した人に連絡した。
2 ヶ月前なのであまり記憶がないとのことだった。
おまけに私が貸した金額は、彼女の記憶と違っていた。何だか私は自信がもてなくなってきた。
話はどんどんややこしい方向へ進んだ。

貸したお金は返ってこなくても良かった。
小銭だったし。

2人の対応に心底がっかりした。2人共、自分のことをとても真面目でいい人かのように語っていたから。本当にそうなんだと信じていた自分が情けなくなった。

私はこれ以上2人と付き合いたくないと思った。
グループから抜けることにした。

のちに、彼女にお金を貸した人からお詫びの品物と小銭が届けられた。
何だか自分が悪いことをしたような気分になった。
「この件は忘れます」
御礼と共にメールで伝えた。

この出来事がきっかけで、私は友達づくりを控え(その後、1人出来た)、生活を変えるべく仕事の新規開拓に走った。

今、その時に開拓した仕事の一部に限界を感じている。
久しぶりに、仕事を開拓し始めたきっかけを思い出した。忘れたはずだったのに。忘れますと書いたくせに。

がんばってきたけど、そろそろオーバーヒートかも。
真摯にやっていても、どうにもならん時はどうにもならん。
やるべきことはきちんとやって、晩夏には消え入りたい。

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