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2022年のJ3リーグを振り返る いわきFCを中心に

 今季2022年のJ3は実に衝撃的なシーズンとなった。
 衝撃の第一は、何と言っても参入1年目なのに圧倒的な成績で優勝・昇格を決めたいわきFCである。
 一部メディアやネットの投稿などでは、今もいわきFCについて「フィジカル」とか「マッチョ」という言葉ばかりが踊っている。新規参入時の報道で、素晴らしく立派なトレーニングジムと鍛えた筋肉を誇らしげに見せる選手の画像・映像が目についたのは確かだが、SNSには「最近のJ3には体力任せの乱暴なサッカーをするチームが・・」などという見当違いな書き込みも現れている。その種の記事や投稿は、リーグ戦34ゲームにおいていわきFCがどんなプレーをしてきたのか全く観ずに、当初のイメージに囚われた妄想で書かれているのだと思う。
 リーグ戦において明らかになってきたいわきFCの最大の特徴は、実はパワーよりもスタミナであった。ゲーム終盤になっても走力が全く落ちないことが目に見えて明らかであり、全得点の七割以上を後半に決めていることもそれを示している。チームの目標にある「最後まで倒れない・走りきるサッカー」を忠実に実行していたことが解る。
 また、シーズン中に出されたカード数を比較すれば、上記の「乱暴な・・」などという誹謗中傷に近い投稿が全くの妄想であることは簡単に判る。いわきFCは、18チーム中レッドカード・ゼロの4チームのひとつであり、イエローカードの33という数も、宮崎(30)についで2番目、富山(33)と並ぶ少なさなのである。元J1のチームでありながら多い方から2番目にいる松本山雅(58)との対比が鮮明ではないか。
 また、一部のサッカーオタクの口癖のようになっている "タテポン" サッカーをやっていたわけでもない。無駄な横パス・バックパスを極力せずに全員で攻め上がるが、実は意外にオーソドックスなパスサッカーであり、鍛え上げた走力とスタミナによって終盤になっても(他チームのように) "間延び" しないだけなのである。このことは得点が特定の「エース」に集中せず、多くの選手がゴールを決めていることからも認められる。
 正当なショルダー・チャージなどでは勝つことが多く、審判によっては笛を吹かれることもあるがカードに至ることはない。また、シミュレーション的な行為を一切しない、審判に対して決して文句を言わない、ゲーム終盤にリードしていても露骨な時間稼ぎをしない、といったことも徹底していた。すなわち、極めてクリーンなサッカーをしているので、観ていて本当に楽しいのである。
 実は、このいわきFCと同じ方向を向いていると感じられたチームがもう一つある。それは、昨年J3に参入していきなり3位と健闘したテゲバジャーロ宮崎である。大活躍した主力選手を引き抜かれたことで今季前半は苦戦していたが、終盤になって力を発揮し出し、藤枝と引き分け、鹿児島・松本を破って昇格を足止め、さらに首位のいわきにも勝っている。いわきの選手が「走り負けた」唯一のゲームだったと言えるかもしれない。宮崎もまた上記のように警告(カード)の少ないチームであり、よく鍛えられた走力で最後まで走りきるゲームをしているので、今後が楽しみである。
 一方第二の衝撃、マイナスの方向で予想を裏切った代表はJ2に復帰(昇格)できなかった松本山雅と、14位に沈んだFC岐阜だろう。山雅は、ゲームにおいて攻守の方針が定まってない印象が強く、無用なファウルを重ねてカードをもらう傾向が目立った。昇格をかけて最も重要なゲームとなった33節の宮崎戦で、点をとるべく途中投入された選手がボールと無関係の暴力行為でレッド退場となったシーンに今季の山雅が集約されていたと感じる。
 また岐阜は、輝かしい経歴の選手をいくら集めても、それだけでは勝てないことを見事に証明してしまった。33節までに15ゲーム以上出場した選手だけの平均年齢を比較すると、最も低い(若い)のがいわきFCの24.50歳、そして最も高いのがFC岐阜の30.22歳である。これでは、仮に今季昇格できていたとしてもその先は?であったと言わざるを得ない。
 最後に、来季のJ3には岩手と琉球が降格してくる。またJFLからは優勝した奈良クラブと、2位となったFC大阪が参入、2023年のJ3は20チームのリーグ戦となる。そしておそらくは、最下位となった2チームにJFLへの降格または入れ替え戦が課せられることになると思われる。


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