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海のおっちゃんになったぼく について。

『海のおっちゃんになったぼく』単行本出版8年目をむかえての文章です。出版時に書いた文章に手を入れるかたちで書いています。もとの文章へのリンクは末尾に記載しています。

海のおっちゃんになったぼく について。
2014年6月

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作品情報
タイトル:海のおっちゃんになったぼく
作:なみかわ みさき 絵:黒井 健
発行:クレヨンハウス 2006年
ISBN:4861010578
全国書店、ネット書店でお求めいただけます。

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作品のことを子供という表現があるが、それでいうと『海のおっちゃんになったぼく』はことしで単行本出版から8年、8歳になる。元となった原稿を書いたのは1992年なので、24年である。

Web検索をすると、読み聞かせの本として使っていただいたこともあるようで、このくせのある「こども」は、読み手にはかなり扱いにくいものではないかといつも心配してしまう。しかし、「我が子」の成長をうれしくも思う。

『海のおっちゃんになったぼく』は、泉州のことば(言い回し)で書かれている。泉州とは、大阪府の南のほう、和歌山に近いほうである。

祖母が泉州、岬町に住んでいて、子どもの頃はほとんどの夏休みや冬休みをここで過ごした。奈良県生まれ・奈良県育ちではあるが、ここ岬町で聞いてきた言葉が、身体になじんで、奈良の言葉と混ざっていた。(その後、京都での暮らしが長くなり、京都の言葉も混ざって、単行本の原稿を書き直す時にはかなり苦労した。)

--ちなみにペンネームの「みさき」の読みは本名で、岬町からもらっている。

『海のおっちゃんになったぼく』は、最初普通に書きかけてやっぱりしっくりいかなくて原稿を捨てて、「泉州ことば」で、話しかけるように最初から書き直した。これが高校2年の時である。

原稿用紙7枚くらいの作品は、その後の人生を変えてしまった。

童話賞をいただいて、それをAO入試の特技として大学を決めた。そこでUNIXというOSに出会い、インターネットにはまっていった。(ゼミの先生から紹介してもらったPerlというプログラミング原語を後に仕事でも使うようになり、さらにオープンソースソフトウェアや、それらに関わるコミュニティを知ることができた。)

それだけでもすごいことなのに、原作はさらにでかいものを呼び込んでくる。
当時の童話賞の審査員だった椎名誠さんが、はたらきかけてくれて、なんと黒井健さんが絵を描いて絵本化された。(『海のおっちゃんになったぼく』は、1995年に『月刊 音楽広場』に綴じ込み絵本として発表されています。)

その頃から2000年代前半は、執筆の活動や発表先はどちらかといえばネット上にシフトしていて、物書きが集まるところで800字短編やら、メールマガジンやら発表していた。オンデマンド冊子などにも何度か載せていただいた。

2005年の12月。ホームページにメールを送れるように置いたプログラム経由で、クレヨンハウスさんから1通のメールが届いた。単行本化のお話だった。

2006年に入ってから、”『海のおっちゃんになったぼく』を、2006年に出版する”ことをじっと考えながら、全体の見直しをはじめた。たしかにあの時、17歳の自分が生み出したものもすごかったけれども、30歳の僕が手がけるそれも、すごいものにしたい。そう思って、14年くらいの時間の差を行ったり来たりしながら、言葉を選び直していた。

この8年、非常にたくさんの方にご支持いただき、去年までにほぼ順調に増刷をさせていただいている。ベストセラーではないと思うが、ロングセラーだとは思う。

8年の間には、迷ったこともあった。

今でこそ言えるが、2011年の震災の後、この本は本屋や図書館にあって良いのか悩んだ。

それでも、作品をこどもとするなら、見守るのが使命なのだろう。そう切り替えて、もし世の中が求めていなければ、それは受け入れようとした。

2013年、絵本はわずかながら増刷していた。

その年の終わりには、黒井健さんの画業40周年をかねた原画展が大阪で開かれた。
そこで、『海のおっちゃんになったぼく』の原画が数点展示され、さらに図録にも掲載された。ついに、ここまできたのだ、と思った。

これから。
急にご縁が無くなって、本で言うところの死に相当する絶版をむかえるかもしれないし、細々とロングセラーでいてもらえるのかもしれない。どうなっても、さいごまで見守る。

文章の最後になったが、この作品がここまで来るためには、けして私一人の力では叶わなかったところが大きい。まずきっかけを与えてくれた読売新聞社さん。審査員で絵本化を推してくれた椎名誠さん。絵という命をふきこんでくれた黒井健さん。クレヨンハウスのみなさん。絵本を手にとっていただいたみなさん。見守ってくれたみなさん。本当にありがとうございます。

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『海のおっちゃんになったぼく』の初版が出た時に書いた、今回の文章の下地となったものはこちらのリンクから読めます。
「海のおっちゃんになったぼく について。」
http://misakiworld.sblo.jp/article/602023.html

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