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404 Not Found


白、しかなかった。
辺りを探ってみても指先に触れるものはない。どんなに注意深く見つめたって境界線らしきものもない。音もなにもない空間に白と僕、ほかにはなにも。ここ数日の激務に疲れきっていた。今夜は帰ってからそのまま眠ったはずだった。だとするとこれは夢なのだろうか。まいったな。思わず吐いた下向きな溜め息は白に混じってすぐに消えた。


「ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ       」

さっきからきみの声を思い出せないでいる、白と幻想のあわいにいてだから僕は記憶に靄がかかってしまったのかもしれない。笑っている唇が薄れて頸から下へ、華奢な輪郭が音もなく白に覆われていく。引き留めようと手を延ばしかけたところで静止した。・・・きみとは一体誰だっけ?


座り込んで項垂れたままどのくらい経ったのだろう。いま視界には、白の中に自分の掌だけがくっきり浮き上がって見えている。けれどそれもじきに白夢に飲まれて消えるんだろう。自分を思い出せなくなるのが先か、あるいは。

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それだけ書かれた白い画面がふと頭に浮かんだ。存在しないもの。よくわからないがここはそんな場所なのかもしれない。透けていく掌を虚ろに見下ろしながら僕は、








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