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ひとり映画祭

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観た映画の記録。
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記事一覧

世界が広がる瞬間|スタンド・バイ・ミー

世界が広がる瞬間|スタンド・バイ・ミー

小学生の頃、わたしの世界は『家』と『学校』で成り立っていた。
学校でイヤなことがあれば行きたくなくなり、けれど体調が悪いわけでもないので親には明るく送り出されてしまう。トボトボと登校するわたしの中に「学校に行かない」なんて選択肢は存在しなかった。今いるこの世界でどうにか上手くやっていくしかない。子どもながらにそう思っていた。

中学生になり『ライブハウス』に行くようになってわたしの世界は広がった。

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全自動と愛情と|老人Z

全自動と愛情と|老人Z

アニメ『ウォレスとグルミット』で描かれる朝の支度シーンが好きだ。
犬のグルミットがレバーを引き、寝ているウォレスのベッドが立ち上がる。ベッドは上から吊り下げられた紐で支えられ、床がパカっと開き、ウォレスだけがその穴に滑り落ちていく。と同時に用意されていたサスペンダー付きのパンツが履かされて、そのまま食卓の椅子にストンと到着。両腕を上げればどこからかシャツの袖(アームカバー?)が装着され、後ろからや

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ただ作品に身を浸す贅沢| Away

バルト三国の1つ、ラトビア出身のアニメーション作家にギンツ・ジルバロディスさんという方がいます。
彼は8歳の頃からアニメを作り始め、弱冠25歳にして1人で長編アニメーション作品を作り上げました。繰り返します。1人で、です。たった1人で75分のアニメ作品を作り上げたというのです。かかった年月は3年半らしく、そんな短い期間でこの完成度?と驚いてしまいます。
前置きが長くなりましたが何が言いたいかって、

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コロシアムはSNSのよう|グラディエーター

コロシアムはSNSのよう|グラディエーター

最後まで観られるんだろうかとドキドキしながら2001年アカデミー賞作品賞を受賞した『グラディエーター』を観ました。ドキドキというか、もはや動悸。
作品賞以外に音響賞(録音賞)、視覚効果賞、衣装デザイン賞、主演男優賞(ラッセル・クロウ)も受賞しています。

「最後まで観られるんだろうか」というのは内容があまり得意なタイプのものではなかったから。奴隷として人がお金で買われ、命を賭けた戦いの場に出され、

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醜く、そして美しく|アメリカン・ビューティー

醜く、そして美しく|アメリカン・ビューティー

今年から使い始めたSUNNY手帳には『MY WATCH LIST』のページがあり、観たい作品を24作品分書けるようになっています。
わたしが書いたのは2000年から2023年のアカデミー賞作品賞のタイトル。毎年3月に発表されるため今年の分は後から書き込む予定です。アカデミー賞には「大賞」が無いので、数ある賞の中から注目度の高い「作品賞」に絞ってみました。

『スラムドッグ$ミリオネア』『英国王のス

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賞与を断る選択肢|サンドラの週末

賞与を断る選択肢|サンドラの週末

突然ですが、賞与(ボーナス)欲しいですか?
わたしは欲しい。多ければ多いほど嬉しい。賞与が出たらあれを買おう、なんて考える時間は楽しいし、また次の賞与まで仕事を頑張ろうとも思える。

もし、賞与を断れるとしたら、どうしますか?
愚問だよ、断らない。当然貰う。なんで断る必要があるのか。だってほら、そろそろ洗濯機だって買い替えたいし。そういう家電って毎月の給与からじゃなく賞与が入ったきっかけで買い替え

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「持ちつ持たれつ」な関係性|紅の豚

「持ちつ持たれつ」な関係性|紅の豚

名作というのは何度観ても新たな発見がある。

金曜ロードショーで久しぶりに『紅の豚』を観た。
最初にこの作品を観たのは大学一年生の頃。当時付き合っていたひとに「ジブリで一番好きな作品なんだ」と勧められたのがきっかけだった。三年以上付き合っていたのに、彼とどんなものを食べたのか思い出せない。唯一しっかり味を思い出せるのが、この映画を観た時に彼が作ってくれた和風パスタだ。味付けのメインはお吸い物だった

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97分で青春を謳歌する|サマーフィルムにのって

97分で青春を謳歌する|サマーフィルムにのって

「この夏の間だけ、みんなの青春わたしにちょうだい」

勧誘して集めたメンバーを前に、ニッと笑いながらハダシは告げた。
その勧誘メンバーにわたしはいない。当然だ。ハダシは映画『サマーフィルムにのって』で伊藤万理華が演じている主人公の名前なのだから。けれどPCモニターを通して観ているだけのわたしも、ハダシと仲間たちと共にかけがえのない夏を過ごした。

わたしは自分の97分をハダシに捧げ、その代わりに青

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まるで幽霊の擬似体験| A GHOST STORY

まるで幽霊の擬似体験| A GHOST STORY

映画『A GHOST STORY』を観ました。

台詞の少ない映画です。
主人公は冒頭で亡くなり、幽霊になるのですから。

これは亡くなった主人公が妻を見守る物語です。

1.33 : 1
この映画は「スタンダードサイズ」と呼ばれるアスペクト比で制作されています。アナログテレビの比率と同じ、と書くとイメージしやすいでしょうか。
1.33:1の四隅が丸くなった画面で映画が映し出されます。

通常より

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月極オトコトモダチは恋愛を超えるのか

月極オトコトモダチは恋愛を超えるのか

男女間の友情は存在するか否か。
これは永遠に議論されるテーマのうちのひとつ。

そもそもどこまでが友情でどこからが恋愛なのか、その線引きだって人それぞれだろう。この永遠のテーマを重すぎず爽やかに描いた映画が穐山茉由監督の『月極オトコトモダチ』だ。

78分で、この満腹感。
甘い恋愛映画ではないのに無性にどきどきした。

WEBマガジン編集者の那沙(徳永えり)は「男女の間の友情は存在するか」について

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「普通」ってなんだろう(こっことルル子)

「普通」ってなんだろう(こっことルル子)

「なんで家族が増えるのは嬉しいんや?」

小学3年生の、こっこの質問。
この質問にあなたなら何て返しますか?

映画『円卓 こっこ、ひと夏のイマジン』を観ました。
原作は西加奈子さん。

今ではすっかり綺麗なお姉さんになった芦田愛菜さんが、まだ「芦田愛菜ちゃん」だった頃の作品です。(2014年公開)

芦田愛菜ちゃんが口が悪い役なのが新鮮。「うっさいわ、ボケ」なんて言っちゃいます。映画の中での一番

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エル・ウッズにはピンクの戦闘服

エル・ウッズにはピンクの戦闘服

ピンクの服を最後に着たのはいつだっけ。
考えてみても思い出せないほど、わたしとピンクの関係性は希薄だ。

普段取り入れない色こそ足元に、なんて文言を鵜呑みにしてコンバースの真っピンクのスニーカーを履いていた時期はあった。あれはいつだっただろう。やけに足元だけが目立っていて、だけど結構気に入っていた。

グロスも、チューリップも、ランドセルも、それからマイメロディも、ピンクより赤が好きだ。

だけど

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「すいません、好きなんで。」

「すいません、好きなんで。」

全く羨ましさのカケラも無い恋愛映画を観ました。

それがこちら『友だちのパパが好き』(R15)。
タイトルの通りの内容なので映画を観なくても大まかなストーリーは分かります。

友だちのパパを好きになってしまった女の子と、友だちにパパを好きになられてしまった女の子の話。

「え、ええっ? 何それ、マジで言ってんの?」
「だってホントだから」
「やめてよ」

もし、自分の仲の良い友人が自分の父親のこと

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知ってた?サッカーって隕石から生まれたの! -アーリーマン-

知ってた?サッカーって隕石から生まれたの! -アーリーマン-

時代をタイムスリップする作品は数多くあるけれど、2つの時代が同時に描かれる作品ってあまり無いんじゃないのかな。

しかも石器時代と青銅器時代のサッカー対決なんて。

アードマン・アニメーションズによる2018年公開の長編アニメ映画『アーリーマン 〜ダグと仲間のキックオフ!〜』を観ました。

もともとストップモーションアニメ(コマ撮り)が好きで、その中でも特にアードマン作品が好きなんです。

『ウォ

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