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人生は、映画じゃない。

関西テレビ放送開局60周年記念の舞台『サメと泳ぐ』初日を観劇してきました。
(投稿までだいぶ時間が経ってしまった…)
三軒茶屋の世田谷パブリックシアター初めて行ったんですけど、3階からでも結構舞台上と近い感じがしてとても観やすかったです。あと、椅子の座り心地が良かった!座面を倒す(座れる様にする)と足の置き場も出てきて、3時間でも全然座っているのが苦じゃなかった。

ハリウッドの大物映画プロデューサー・バディ・アッカーマン(田中哲司)。人間としての評判は最悪だが、数々の作品をヒットさせ、彼のアシスタントは皆映画界で出世すると言われている。脚本家志望のガイ(田中圭)は成功を夢見てバディの元で働き始めた。痛烈な侮辱の言葉に耐えながら無理難題に対応する日々を送る中、新作を売り込みに来た映画プロデューサー・ドーン(野波麻帆)にガイは心を奪われ、やがて恋人関係になる。制作部門のトップへの昇進に命を賭けるバディは、映画会社会長のサイラス(千葉哲也)にアピールするため、ドーンの企画を利用しようと一計を案じてガイにある提案をもちかける。信頼と懐疑心、名誉と屈辱、希望と失意、それぞれの思惑が入り乱れる中、ある晩、バディとガイの歯車が狂い始める――――

公式HPより

1994年の『ザ・プロデューサー』という映画を元にした舞台。
原案の映画は未鑑賞。

ポスターデザイン、すごく格好良いんですよね。
3人の表向きの顔と、影で表現される裏の顔。

※以下、内容ネタバレ含みます。


鑑賞者は主にガイ(田中圭)の目線で物語を追っていくことになります。そしてそのガイの物語は大きく3つに分けられます。

① バディ(田中哲司)の元でパワハラに耐えながら素直なアシスタントとして働く
② 自分の仕事にも慣れてきて、ドーン(野波麻帆)との恋人関係も順調だけど、バディのやり方に疑問を持ち始める
③ 純真ゆえに爆発してしまう


バディはちょっとしたことですぐに怒鳴るし物を投げ散らかします。舞台上でもガイに向かってまあ色々投げつけます。コーヒーをデスクにこぼされてガイは慌てて拭きに行ったり。この舞台、後片付けが大変そうなシーンがちらほら出てくるんですよね。
(クリップを投げつけられて咄嗟に手で持っていた脚本(?)で顔を守る仕草をする田中圭が愛おしくて可愛いので、そこ見所です!)


それでも何故バディの元で働いているかというと、ガイは本当に心から映画が好きなんですよね。だけど映画が好きだからこそ最初に「映画が好きなのか?好きなことは仕事にしちゃ駄目だろ。これは、映画じゃない。映画ビジネスだ。成功するためには、どんな人でも蹴散らせ。それがお前に出来るか?」なんて言われちゃう。人格否定されるのはもう懲り懲りだ、と思いつつも辞めずに働いているのは、バディの元で働きたいという想いが強いから。
けど何故バディが良いのか。きっとそこが物語の大きな核となる部分。

バディのことを尊敬できて、ついていきたいと思うから?
バディの創る映画が好きだから?
働く環境が良いから?
自分のやりたい仕事ができているから?

観ていた限り、どの答えも違う。おそらくバディが大物プロデューサーだから、という答えが正しい。
ただ単に映画が好きだからじゃなく、この人の元で働きたいからでもなく、その肩書きに付いていってたんだ、と気付いてからのガイのじわじわと滲み出てくる心の黒さがものすごくリアルでした。これはお芝居だけど現実の話だなあと。ハリウッドの話だけど日本だってこういうことは全然あるぞ、と。

ガイが変わっていくきっかけとなるのはそれだけではなくて、ドーンと恋人関係になったことの方が大きい。ううむ、こういう形の恋愛わたしはしたくない。。笑
心から好きな相手。仕事では自分の立場が下。仕事でも対等な関係になりたいのに、それは彼女を裏切る結果へと繋がっていく…。
恋人が仕事をする上で良きパートナーとなっているのなら良いんだけどな。今回のこのふたりは違う。現にバディはガイを利用してドーンから良い仕事を奪おうとしていた訳だし。

あ、ドーンとガイのラブシーン、すごかったです。昨年の田中圭くん主演舞台『僕だってヒーローになりたかった』ではここまでのラブシーン無かったので、思わず息を止めて(自然に止まったんですけど)観てました。
田中圭は突然色気を全開にしてくるから困る!(大好きです!)


自分の好きな作品を創りたい人。
社会にとって意味のある作品を創りたい人。
どういう作品を創ればヒットするかを考えて創る人。

どれも正しいんだと思う。
その人なりの正義があって、その人なりの生き方がある。

自分にとってやりがいのある仕事をしたい人。
会社にとって利益のある仕事を大事にする人。
人のために働くことがなによりも好きな人。

物作りに携わっていなくても日常でも言える話なんですよね。気持ちが強い人たち同士が衝突すると爆発が起きる。純真すぎるが故に。あれ、これ『ラ・ラ・ランド』を観た時も似たようなことを思ったぞ。

見てください、パンフレットのデザインも可愛い。凝ってるなあ。


どんなリスクを抱えたとしても富や名声を手に入れようとする人のパワーって計り知れない。格好良いときもあるし、恐れの対象となるときもある。

サメはきっとわたしたちの生活の中で泳いでいる。
ふと気が付いた時には自分自身がサメだったりするのかもしれない。

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