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黒尾鉄朗が繋いできたもの -ハイキュー!!-

2020年7月13日発売のジャンプ本誌に掲載されている
『ハイキュー!!』401話までのネタバレを含むnoteです

読んで下さる方の間口が狭いって分かっていながらnoteを書くのは初めてです。それでも書かずにはいられませんでした。

これは、ただただ黒尾鉄朗について語るnoteです。



主人公の日向が所属する烏野高校の排球部と因縁のライバル関係にあるのが音駒高校、排球部。そんな音駒の主将を務めているのが、トサカ頭が特徴的な3年生、黒尾鉄朗。

雑食のカラスと、しなやかなネコ。

とにかく全員で攻撃を仕掛け続ける烏野に対し、音駒は「護りの音駒」と言われ、しなやかにボールを拾い続ける。
“天才”と呼べる選手はいなくても、高い守備力を有していて穴がないのが音駒。


そんな音駒の横断幕に書かれている言葉は「繋げ」。

バレーボールを漢字一文字で表すなら「繋」だと思う。
ボールを繋ぎ、信頼関係を繋ぎ、勝利に繋げる。ボールが落ちたら負ける、それがバレーボールだから。

音駒のバレーはまさに繋ぐバレー。
サービスエースになりそうな強いサーブを拾い、スパイクを拾い、フェイントを拾い、コートの外に弾かれたボールを追い掛けて拾う。コートにボールが落ちるまで、ひたすら彼らは拾い続ける。音駒の1点に繋げるために。


黒尾が繋いできたものは、沢山ある。

前述した通り仲間とボールを繋いできた。
でも、それだけじゃない。

主将として後輩に的確なアドバイスを出し、時には見守り、チームワークがハマる瞬間の気持ち良さを伝え、チームの信頼関係を繋ぐ。面倒見の良い黒尾は音駒の後輩だけではなく、他校の後輩のことも気にかけてきた。

「ツッキー最近のバレーはどうだい」
「…おかげさまで」

「バレーはたかが部活」と言っていた烏野の月島にバレーボールの面白さを教えてくれたのは、合宿の夜に自主練を行った第3体育館だった。

黒尾が教えたブロックだった。

本当に おかげさまで
「極 たまに 面白いです」



そして、幼馴染で音駒のセッターである孤爪研磨。

ゲームが好き。疲れることは嫌い。
バレーは嫌いでもないけど、好きでもない。
ただ、なんとなくやっている。
辞めたらトモダチが困るから。

そんな研磨にバレーボールを教えたのが黒尾だ。

「続ける絶対的理由は無いけど 止める理由も別に無い
どっちでもないはふつうだよ」

バレーの勝敗にさほど興味を持たない研磨を全国の舞台に引っ張り上げ、辞めたらトモダチが困るからバレーを続けているという研磨に対し、多少の罪悪感を感じていた黒尾。

だけどわたしは、どっちもどっちなんじゃないかなって思ってた。研磨は「辞めたらトモダチが困るから」って言っていたけれど、黒尾にとっても「俺が居なくなったら」があったんじゃないのかなって。

黒尾にとっての高校最後の公式戦。

「クロ おれにバレーボール教えてくれて ありがとう」

試合直後の研磨の言葉。

「来年もやろうな!!」と言われた研磨が微笑みながら「うん やろう」と答えていたのを見て、黒尾は安心したんじゃないかな。だってその来年って黒尾は音駒にいないんだから。自分がいなくても研磨は自分の意思でバレーを続ける。その事実に安心して、きっと喜んでいる。



終章に突入して次々に大人になった登場人物たちが出てきた。
出てくるたびにワクワクして、ドキドキして、ハラハラした。

毎週ページをめくりながら耳の奥でキュッキュッとシューズが鳴る。迫力と、静寂。圧倒的な構成力。

そのうち「ハイキュー」でツイート検索をすると検索キーワードに「黒尾どこ」と表示されるようになった。そう、研磨以外の音駒メンバーが出てこないのだ。一体どこで何をしているんだろう。

月島と研磨にバレーの楽しさを教えた黒尾は、将来指導者になるんじゃないかなって思った。日向、木兎、侑みたいにプロになりそうって感じもしなかったし。

だから音駒バレー部を猫又先生から繋ぐのかな、って。

でも、違った。
黒尾はもっと、大きな「繋ぎ」をしていた。



黒尾鉄朗(24)
日本バレーボール協会 競技普及事業部

この文字を見たときにぽろっと涙が出てしまった。

そっか、黒尾は音駒での「繋ぎ」を大事にしながら、未来にバレーボールを繋いでいく仕事をしているんだ。「できるヨロコビ」を生み出す仕事をしているんだ。人とバレーボールを繋ぐ仕事をしているんだ。

猫又先生から、意思を繋いできたんだ。


バレーボール協会という肩書きだけれど、黒尾が語ったのはバレーボールだけではなく、スポーツの未来であり、スポーツの希望。

そしてそれは、現在のわたしたちへのメッセージだ。



来週、8年半の連載を経て最終回を迎えるハイキュー。
もちろんとっても寂しいけれど、リアルタイムでハイキューを読めている喜びを噛み締めています。

各校が背負っていた横断幕が、終章でこんなにも大きな意味を持つものになるなんて。

ここまで語ってきた黒尾は、あくまでもライバル校のひとり。こんな風にひとりひとりの登場人物についてじっくり語れるほどの描写があるのがハイキューの好きなところ。


最終回目前にして新たな「繋ぎ」を見せてくれたハイキューが来週わたしたちに見せてくれるのは、きっとひとりでは決して見ることのできなかった、頂の景色。

ありがとう、ハイキュー。
最終回、楽しみです。



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