改めて考える、千と千尋の面白さ
テレビで放送していると必ず観てしまうほど好きで、ジブリ作品の中でもいちばん多く観返している作品であるにも関わらず「千と千尋のどこが好き?」という質問をされると思わず言葉に詰まる。
ハクが千尋にくれる真っ白のおにぎり
オクサレ様の入浴のため貰う薬湯の札
釜爺やリンのキャラクター
千尋がハクに言う「良い子だから」
坊ネズミのエンガチョ
久石譲の名曲『あの夏へ』
好きな部分は数あれど千と千尋の面白さってどこにあるんだろうと考えると言葉が出てこない。あれれ、好きなんだけどうまく説明できないぞ。
うーん?と首を捻るわたしに対し恋人は好きな部分をペラペラ語り出す。彼もまたジブリ作品の中で千と千尋がいちばん好きだと言い、昨夜の金曜ロードショーをわたしたちは楽しみにしていたのです。
そんな訳で『耳をすませば』ぶりに恋人と映画について喋った内容についてまとめたnoteです。それではどうぞ!
『大麦こむぎ』 「恋人」 でお送りします。
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建物内で繰り広げられる物語
「世界観がずば抜けて他のジブリ作品と違うよね」
『どう違うの?』
「湯屋という建物がメインじゃないですか。他のジブリ作品だと、大空を飛び回ったり、草原を駆け巡ったり、」
『…待って、草原って何』
「草原を駆け巡るのは…ヤックルですね」
『ああ、もののけ…いや、森だよね。笑』
「だからそういった自然と一体感があるのがジブリの世界観だと思うんだけど、そこが建物がメインになってくる。基本的に湯屋の中での生活が軸になっているじゃないですか。千と千尋が他のジブリ作品と違う世界観を持っているのはそこが大きいのかな、と」
『湯屋はどこが魅力的なんだろうか』
「ただの温泉宿じゃないよね。当然だけど僕たちのいるこの世界は人間用のお風呂がある。だけど湯屋には神様がお風呂に入りにくる。色んな神様がいるから小さいお風呂や大きいお風呂、お湯の種類も沢山あって。そういう神様に合わせた色々なギミックというか、建物の構造や仕掛けが湯屋にはあるから、建築が好きな人が観ても楽しいと思う」
『そうだね。わたしはやっぱり釜爺の所に続く階段が怖い』
「うん…あんなの、人間界でやったら違反だよね」
『危険だもんね』
「あと色彩も特徴的だよね。ジブリの中でも千と千尋は色が違うと思う」
『千と千尋は何となく赤のイメージがあるなあ。湯屋が赤だっけ。あ、違うか、湯屋の手前の橋の色かな』
「結構暗闇のシーンも多いから黒も沢山使用されてるんだよね」
『黒と、差し色の赤』
「他のジブリ作品は舞台が自然の中だったりするから緑が多く使用されているけど、逆に千と千尋はあんまり緑のイメージがない」
『千尋のボーダーのTシャツくらいかな』
水上列車が通る世界
『どのシーンが好き?』
「いっぱいあるけど、やっぱり水上列車のシーンかな。さっきも言ったけど今回ストーリーのメインって湯屋での生活じゃないですか。そこから出るんですよね、水上列車で。だから最初に千尋がトンネルをくぐって人間界からやってきて、そこから温泉街を通って、湯屋があって、っていう世界観だったけどそこからちょっと遠出する訳ですよね」
『うんうん』
「この世界ってなんなんだろうって不思議に思うよね。人間じゃない何かが暮らしている街」
『ああ、湯屋以外の世界のことね。湯屋ではいなかったけど乗客たちも顔が無いし』
「そうそう。そこがなんとなくただ情景として流れていくだけで何の説明も無いし、本編にも関係が無いんだけど、もし千尋が通ってきたトンネルの先が湯屋に続く温泉街の場所じゃなかったら…水上列車から見える情景の街の物語があったんじゃないかなあって思うんだよね」
『確かに湯屋と水上列車が通る世界は同じ世界だけど違う世界のようにも見えるよね』
千尋の立場になんてなれない
「カオナシが”千を出せ”って言ってめちゃくちゃ食べて大きくなって、で、千尋がひとりで行くじゃないですか」
『うん』
「その超デカいカオナシと、そこにちょこんと座っている千尋の絵が僕は好きですね」
『あの、食べ物が散乱してる部屋の』
「自分だったらって思うと座ってられないって言うか…」
『無理だね』
「腰抜かして立てないと思うし、言葉失うと思うんだよね」
『"あげる"って言われたら貰うよね。断れないと思う。千尋はすごいよね』
「千尋、好きです。あの、びっくりした時とかに可愛くない声を出すところとか。例えば、カオナシが温泉札をいっぱいくれて、お湯が溢れちゃったシーンとか、きゃーとかじゃなくてうぇって言うんだよ。そこ好きですね」
『トトロのメイちゃんみたいな顔よくしてるよね』
「あと、千と千尋って人間の方が珍しいんだよね。ジブリって人間外のものがいっぱい出てくるイメージがあるけど、別に人間が珍しいってわけじゃない。人間がいて、それ以外がいて、どう共存していくか、みたいな」
『ああ、そうね。猫の恩返しくらいかな。猫の国にいくから人間の方が珍しくなっちゃうのって。あ、でもハルちゃんも猫になっていくね』
「人間がメインだと思うんだよね、他の作品は。でも千と千尋は、千尋が珍しい生き物で、つまりこれって上京して新しい街へ行ってこれからどんな生活が始まるんだろうっていうワクワク感や不安感と似ていて、そこが面白さなのかなあって思う。明日から外国で暮らせ、って言われたら"えっ"ってなるじゃん。やっていけるかなって思うけど、でも相手は人間だから。千と千尋のこの世界は人間いないからね」
『…怖いよねえ』
「その世界で"ここで働かせてください"って言って暮らしていかなくちゃいけないって相当キツイよね。名前も奪われたのに千尋はそこで働いて、すごい」
『真似できないよね』
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ひとつの映画を誰かと話してみると違った視点でまた映画を観られるので非常に楽しいです。特にジブリとか子供の頃から繰り返し観てきたような映画だと余計に面白かったりします。あ、そういう風にこの映画を観ていたんだ、という発見は慣れ親しんだ映画に新鮮さをもたらしてくれる。まあわたしと彼は映画の好みが違うのであまり一緒に観ることも無いんですけど。
(ちょうど今日は、彼はサメ映画を観ていたのでわたしは寝室に避難して読書をしていたり。パニック、ホラー、はどうしても観られない…)
ちなみにヘッダーは昨夜金曜ロードショーを観ながら書いたものです。カオナシがものすごく笑顔になってしまいました。
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