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世界が滅亡するその時は

世界が滅亡するその瞬間が
はじめから明らかならば
滅亡の阻止のため
何もできることがないのならば
お酒を飲みながら
最高な音楽にひたすら身を委ね
その最期の瞬間を大切な仲間と一緒に
満面の笑みと共に迎えたい

7月29日快晴@苗場スキー場
この日フジロックフェスティバルに参加してきた
フジロックの感想については
先日書いたこちらのnoteも読んでいただけたらと思う

お前はいつまで回想しとんのだ
現実に早く戻ってこいと
思われる方がいるのかは知らないが
まだまだ感想が止まらないので
ここでさらにライブについてまとめたい
そもそもあの空間の楽しさが本来の世界の姿で
この下界の辛さが異常なのではないかという
私からの問題提起はまた何処で

自分はもとより音楽が好きなので
ライブにはよく参加していた
参加していた
過去形だ
2020年1月以降私のライブの予定は全て
吹っ飛んだ
2020年年始に購入済みの6公演くらいのチケットは
全て現金に戻った
ここまで嬉しくない臨時収入なぞ初めての経験だ
経験したいものでもない

ちなみに私の2020年最初で最後のライブは
Ringo Deathstarrの名古屋公演である
Nagoyaという曲を作るほどに
何故か強く名古屋を認識してくれている
稀有なアーティストではなかろうか
好きなのだけれどもあのまま私が死んだら
人生最期のライブがRingo Deathstarrになるところであった
好きな音楽だけれどもそれは少し違うのだ
地獄の門番がいたらこれはちと同情されるんじゃなかろうか
いや、好きなんだけれども
絶対人生やり直しさせられると思う
本当に彼らの音楽は好きなのだが
でも私の人生最期のライブではないのだ
ちなみに、2021年はひとつのライブもなく終了した

2022年に入りここまできて
意外と生きていけるものだな
と考え始めた
ライブで私の人生なんとか生き繋いでいる
そう考えて生きていたのに
ライブに全く行かないこの2年半
それでも私は生き続けている
なんならより元気に楽しく生きている自信もある
上京も叶え
体調はもはや不安になるくらいに元気で丈夫
一年に一回くらいは風邪を引いていた体調も
この2年半風邪っぽい症状が出た記憶もない
たまに低気圧で頭がやられるくらいだ

めちゃめちゃに元気なのだ
私はなぜライブに行っていたのだろう
本当に私の人生にライブは必要なのだろうか
そう考えるまでにライブの光がぼやけ始めていた

冷静に考えて海外アーティストのチケット代は正直高い
ライブハウスでも7000~8000円は掛かる
有名どころだと10000円や20000円から
最近だと最高10万する席も見かける
個人的な最高金額はU2で更新されている
ノエルギャラガーが同行するかと予想して
比較的前の方で見れそうな5万円の席を取ったのだが
結局彼は日本公演には現れず仕舞い
バンコクまではついて来ていたらしいのだが
読みは外れ、しかも日本に来ていない事実に
当日会場で気づくという有様
U2の素晴らしさを感じられたので悔いは無い
実際にライブを体感することで
なぜノエルがU2を好きで
ボノに懐いているのか
さらにノエルのことも普通に大好きじゃん、と大事なことに気づけた
こういった気づきにはお金に代えられない価値がある
というより、お金を払ったら気づけるというものでもない

こんな感じで実際にライブに行くことで
得られるものは大きい
だから大好きだ
と思っていたのに
それでも2年半一本も行かなくても
生きていることに気づいてしまった
ライブがないと生きていけないと思っていたのに
不味いことに気づいてしまったぞ
これは非常に困った
アイデンティティがひとつ消えかけようとしている
私は何故ライブに行くのか
基本的に地方に住んでいたから
東京や大阪公演に参加する際の
交通費宿泊費まで含めると正直馬鹿にならない
でもライブがあるから仕事も乗り越えて
頑張って来たと思っていた

ライブなくても生きていけるもんだな

そう思うまでに至っていた
どこかでほんのり気づいてはいたが
ライブに行かなくとも心臓は止まらない
当たり前のことではあるのだが
脳も、四肢も臓器も
何ひとつ知らぬ顔して動き続ける
ライブに行かずしても物理的には止まることは何も無い
いつもと同じように流れていく日常
少し制限が多い世情ではあるが
ただ私の毎日からライブが消えただけ

過去のライブを思い出してみても
楽しい記憶は蘇る
また行きたいとはもちろん願う
けれどそれだけ
来日してくれたらなあと
願う、それだけ

それだけでいいのだろうか
もっと私はライブを渇望して
次のライブの予定までは生きていられると
ライブを命綱に生きていたにも関わらず
あの必死さが消え失せていた

消え失せていたと感じていた
同時に私の中で全てが薄く色褪せ始めていた
そしてそのことにもはや気づくことができないでいた
徐々に褪せていき
その色が当たり前のようになり始めていた
苗場の山でVampire Weekendを見るまでは

暮れ始めた空に囲まれたホワイトステージ


緑に囲まれた深海

フジロックでは午前からいろいろな音楽に触れた
日本から海外をメインに活動し
惜しまれながらも今年活動を休止することを告げた幾何学模様
どこか泣きそうな表情で、復活を果たした感動を
ステージからファンと共有していたDoping Panda
こんなにも素敵な音が日本からも生まれていたのかと
国内アーティストを聞かなくなり久しい
私を戒めてくる程に素晴らしく潜り込んでくる音で
森を浸してくるD.A.N
自らの叫びをひたすら観客と大地に殴り込んでくるJPEGMAFIA
ただただ楽しい時間を追い求めるJonas Blue

一粒の砂も例外なくきらめく時間と空気
ちらりと通りがかりに聞いた音楽でさえ
全てに命が走り出し
音が緑の中で踊り始める

推察するに、ライブが無くなった2年半分のリハビリを
急速に済ませた
2年半、ライブを飲まず食わずで生きていたから
徐々にギアを上げていく
断食明けすぐの食事は軽食からと聞いたことがある
それと同じだ
とはいえフジに降り立った時点で
最初からアクセル全開
いきなりメインのビーフステーキみたいな状態ではあるのだが


兎にも角にもそんなこんなで
リハビリを済ませた身体を携え
Jonas Blueを途中で切り上げ
向かうは初日のヘッドライナー
Vampire Weekendを迎えるグリーンステージへ

彼らの音楽はよく聞いていた
アルバムは全部好き
優しく包み込んでくるその音と作品が好きで
昔から聞いていた
のだが、正直特別思い入れがあると言うほどではない
アーティストの好きのランクが10段階あるとしたら
7くらいの好き度だろうか(余談ですがoasisはランク外です。神なので。神なので!!)
けれども彼が、フロントマンのエズラがどんな人か
その雰囲気だけでも触れたい
彼は今年のリアムギャラガーのアルバムに参加している
今のリアムとアルバムを作成した1人はどんな方か
その雰囲気に触れられればと
そういう軽い気持ちでステージまで足を運んだ

Vampire Weekendを迎えたグリーンステージ

深海から駆け上がる

結論全て思い出しました
いや本当に全部思い出した
思い出すよりも
さらに鮮明に頬を叩きつけられた

深い眠りから強制的に引き上げられ
深海で眠りに沈み込もうとしていたところを
トルネードに巻き込まれながら海上に戻された
ものすごい渦に巻き込まれ揺さぶられ
動きを止めていた
全ての血管が脈を打ち始める

基本阿呆のように健康なので
死にかけたことはないのだが
心肺蘇生により息を吹き返したら
こんな気持ちになるのではないのだろうか

それくらいに全てが
世界が色を取り戻した
やっと、やっと
私はなぜライブが好きなのか思い出した
思い出した
そしてそれと同時に深く理解した
ライブはもちろん音楽が好きな理由も
全て全て全て

いったいどこの誰だ
ライブなくても生きていけるもんだな
とか言い始めたやつ
廊下に立たせるどころの騒ぎじゃない
校舎裏にこいとかそういうのとも違う
死にかけとるがなお前

もう少しで深海に埋めた光は消えそうに
寸でのところで
Vampire Weekendが息を吹き込んだ
その清流はあまりにも勢いよく
一気に海上へと
久方ぶりの酸素が肺に流れ込んでくる

ようやく思い出したあの感じ
体の境界線は崩れ曖昧になり
他者との境界線もぼやけ
そこにあるのは最高の音と
自分の感覚だけ
この二つしかないのに
それと同時に全てと繋がるあの感覚

これを求めていた
内に忍ばせていたマントルから
溶岩が溶け出してくる
このためにライブに足を運んでいた
Vampire Weekendが強烈に
刺しこんできた
この感覚は未だ詳細を明文化できない
ライブに行く人ならわかるでしょとしか
伝えようがない
みんな何を求めて音楽を聴きに行くのか
その目的は知らないが
私は2年半の眠りの果てに
全てを思い出した
思い出すと同時に
そこには新しい色が広げられていた

思い返すと長い長い眠りについていた
あまりにも長い潜水
深海の底にまで辿り着くほどに
深く深く潜り込んだ先
2年半の間、脳も活動を止め
矢継ぎ早に行く状態のライブが止まり
その感覚を休ませると共に
研ぎ澄まされた淡い光はより鮮やかに
周りの色を吸収して
輝く準備を始めていた

Original Loveと共にグリーンステージで

眩しい光の先

私の夏の再開が
Vampire Weekendから強烈に告げられた
これは私も非常に頑張らなければならない
恐ろしいステージだ
これほどまでに強烈なのに
ボーカルのエズラはひたすらに優しく観客に語りかける
冒頭の機材トラブルで音がひどく
10分程調整の時間
パフォーマンス中に何度も観客とスタッフへの感謝を伝えてくる
どれだけの感謝を捧げても
足りないのはこちらなのにも関わらず
こんなに優しい人がリアムのアルバムにも
参加してくれているのか
今の彼はこんなにもきれいな
優しさに応えているのか

SunFlowerで開幕したライブ

最初の一曲であるSunflower
この一曲は日本に対する労いが込められていたのではないか
これまでよく頑張ったねと
柔らかなギターの音に包まれ
もう大丈夫だと、根拠はないが
もう大丈夫だから、泣いてもいいから
もう全力で笑ってもいいのだと
フルマラソンを終えてタオルに包まれる選手のように
Vampire Weekendが織りなす
羽衣に抱かれて静かにその眠りから
舞い戻り始める

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