わたしの名画
わたしにとっての大切な絵。
それはなんだろうと考えていた。
すぐ思いつくのは塩川いづみさんが描いた
ビションフリーゼがモチーフのイラストだ。
初めてみた時、わたしは大学生だった。
お気に入りの雑貨屋に暇があれば通っていて、
そこにそのイラストがあった。
シンプルな線だけでこんなにもかわいく、おしゃれに描くことができるのかと感激して、お店の前から動けなくなった。
当時のわたしはもやもやしていたのだ。
世の中にどうしてもっとシンプルでおしゃれな柴犬グッズがないのか、と。
だけどその時わたしは確信した。
犬種は違うけど、このイラストが自分の求めているものだ!と。
それからはずっと「塩川さん、柴犬もおしゃれに描いて下さい」と願う日々が始まり、数年後、それは叶わぬ願いだと悟った。
だから自分で叶えようと思った。
そしてわたしはイラストレーターになった。
あの出会いがなければ、あるいは塩川さんが柴犬のイラストを描いていれば、わたしが絵を描くこともグッズを作ることもなかっただろう。
ひとによってはたかが絵なのかもしれない。
だけど、誰かの人生を変えるような、わたしにはそこまでできないかもしれないが、誰かの人生を少し傾けるようなそんなものを作っていけたらなと思う。
そんなことをふと思った一日。
湖中
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