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粉奈丸ベスト3 鑑賞編

粉奈丸がオールタイムベスト的に、22歳という浅い経験の中で感じたことを書き溜めたもの。


ベストアーティスト

1位 ネクライトーキー

外せない。
初めて衝動的にライブハウスに行きたくなったアーティストで、もうほぼ雛鳥から見た親鳥みたいなものだ。刷り込みみたいな部分もある。石風呂さんの時代から名前を知ってはいたんだけど、その時はそうでもなかった。たまたま引っかからなかった。「ゆるふわ樹海ガール」のワードとして頭に残る感じ凄いな、みたいな。

5年前にオススメ動画として流れてきた「オシャレ大作戦」を聴いた時、ここまでキャッチーに暗さを語っていいんだ!と思った。オススメに来たのは多分RADWIMPSやボカロMVをYoutubeで漁っていたからなんだけど。

歌詞の全て、キーボードの暴れ方、圧倒的な魅せ方の上手さ。そして、ただ楽しくてやっている人が集まっているようにも見えるチグハグな状態の安心感。

出会ったときから今までずっと、気持ちをポップに代弁してくれる人たちだ。別に根暗と思われようが構わないけど、その気持ちを蔑ろにされたくないし、気持ちが分かられたうえで日々を暗く過ごしたいわけでもない。
根暗というアイデンティティーは誰に在ってもよくて、それを表現に昇華してもいい。

30代になってからこの人たちに逢ってたら?と思うと、絶対にハマってないだろうな、とも思う。根っこの部分が刺々しく、それでいてキンキンするような感性がそのまま溢れている楽曲ばかりだ。

どこかのインタビューか配信で「『25を過ぎたら死ぬしかない』って書いてるけど、僕ら全員25過ぎてますし、それでも生きてますんで、そういう曲です」みたいなことを言ってたのが妙に染みたのも覚えている。
遡って見た「だけじゃないBABY」には、燻っているからこその言葉と「好き」が詰め込まれていた。
モヤモヤを昇華する部分に、ずっとひどく憧れがある。

2位 PEOPLE1

フロップニクで遭遇した。これも最近だけど、22年だけの人生でのベストアーティストってこれくらい最近でもいいんじゃないか。

最初はMVすごぉ~、だった。出会う頃には元ネタをちょこちょこ拾えるほどには色んなものが浅く好きだった。ツインボーカルを最大限活かしたつくりと、癖になるリズム。
とんでもない作曲ペースと毎回変えてくる作風に、底知れない凄みを感じた。初めて見てから4年だけなのに、感謝してもしきれないくらい繰り返し曲を聴いている。

3位 星野源

この人の人情の部分が好きなんだけど、とはいえ曲も好きだ。とんでもない向上心と人としての良さ、2010年代以降のシンガーソングライターのお手本と言っていい。それ以前のことを僕は知らないし。

最初に聞いたのがSUNだったかで、オールナイトニッポンを聴いて、恋の配信をリアタイして、えっ!!?!?!??!?!?となったのを覚えている。ちょっと凄すぎた。芸能人として一番ノリに乗り始め、旬と言っても過言じゃない時期にたまたま15歳の自分がブチ当たったのだ。好きにならない方がおかしいと思う。
掘れば掘るほど、ド暗さみたいなものが見えてくる。重ねたくもなってしまう。一人でモノを作るアーティストは、実際みんなこんな心であってほしい。

ベストネクライトーキー曲

1位 だけじゃないBABY

この優しさ、ほぼエッセイだ。「あ~こんなんじゃだめっすね~」と語りながら、「君はどうだい?やってみる?」と振り返りざまに聴いてくる。MVもとんでもなく雰囲気に沿っていて、心暖かくなるままに、似た誰かのことを思って作ってくれたような錯覚をする。
コメント欄の「すごく優しく説教された気分」というのはその通り。
のび太のパパの説教「くろうみそ」みたいだ。

2位 北上のススメ

とにかくキャッチーだ。わざわざ意味まで捉える必要がないほどに。僕としては、無我夢中な継続の曲だ。別に意味ないけど、楽しいからやる。社会はくだらないけど、くだらなくてもやることは同じ。ふざけたサビの合間に挟まる、語りの部分が本当にグッと来る。「北へ向かう」が「創作をする」の隠喩でも全然違和感はないな、と思う。

3位 がっかりされたくないな

本当にファン全員に申し訳ないしありえないけど、正直に書く。えっ!?!?!?僕のために書き下ろしました!?!?!?と思った。割とそのままだ。そして、なんとなく結論が出てない感じのフワッとした終わり方をする。寂しい曲だけど、「沁みる」っていうのが正しい。
ネクライトーキーって名前だけあって、「深夜とコンビニ」とか「夏の雷鳴」とか、本当に寂しい曲はとことん寂しい。でも、それが根暗の実情だからそこが好きだ。

選外佳作は「夏の暮れに」と「遠吠えのサンセット」。というか全部。ネクライトーキーの本質は「寂しさと暖かみ」じゃないかと思う。
歌詞とメロディのちぐはぐ感こそ受け入れられ難いけど、200年後の人類に聴かせて「え!?!?200年前の人もこういう曲作ってんだけど?!!?」と思わせたい。枕草子を現代訳した時みたいな気持ちになってほしい。ちょっと新しさも感じる、いつかは必ずわかってくれる人が居る音楽だと信じている。

ベストPEOPLE1曲

1位 夏は巡る

最初に聴いた時は「なんだこのふざけた曲」と思ったが、急にある時繰り返し聴きたくなった。気づくとその年に120回聴いている曲になった。スルメ曲なんて言葉がまかり通るなら、この曲はあわだま曲。ずっと舐めていると、急に中のソーダが爆発したみたいに刺さった。
「君の生涯に二度と強い雨の降らぬように」って祈りにも近い歌詞と、そのまま進んでいこうとする気概。本質的にはネクライトーキーを好きになる理由と変わらない、とたまに思う。

2位 僕の心

日記にも何回書いたんだよって感じだけど、さらけ出しすぎてて嫌いになれない。実際曲としては簡素で初めて聴いた人には大体微妙な反応をされるんだけど、「僕が死のうと思ったのは」「生きてることが辛いなら」と味わい方が一緒だと思う。例に漏れずMrs.の「僕のこと」やキタニタツヤの「私が明日死ぬなら」も好きだけど、より詩としての暗さを強調するとこうなってしまう。簡単に死ぬなよって思うかもしれないが、本人の思い詰め方としては大体そんなもんだ。恋の曲と同じくらいには聴く側の土壌が同じだと思う。
基本的にたまに辛いまま日々って進むので、別にそれでもいいのだ。

3位 鈴々

ほぼ最新曲。とにかく元気。2ndアルバムのラスト付近なのに既に原点回帰的で、それでいてバズらせる気が満々。ちょっとアーティストとしての怒りさえ感じる。これだけ上手く表現にできたら楽しいだろうな、ってそういう曲。

選外佳作はエッジワースカイパーベルトと怪獣。それぞれ北上のススメとだけじゃないBABY的な理由で好き。

ベストいよわ曲

滑り込みで入れさせてほしい。

1位 一千光年

すっごい明るい。それもそのはず。
ボカコレのための、初音ミクのための、クリエイターのための、未来のための曲だからだ。全フレーズがどう切り取っても嬉しい。
いよわさんと言えば不穏な隠喩、不安定なメロディーと、音の可愛さだと思う。実際明るい方向に持っていくことなんて容易いはずではあるのだ。
それでいて実験的な音を作っていくこの人は、令和の時代の音楽の教科書に乗ってほしい、なんてたまに思う。

2位 さよならジャックポット

どうもいよわさん自身の、理解して貰えなかった鬱憤のたまったクリエイター自身の曲に聴こえる。
うるさいけど、そのうるささこそがいよわさん、みたいな。

実際のいよわさんがこんな人なのかはわからないけど、なんらかの節目みたいな雰囲気を感じ取れる曲だ。

親や環境、世界への恨み辛みを表現として昇華する。親ガチャや毒親って言葉が一般的に使われるようになったのも、どう考えても簡単に他と比較できるネットの台頭があるからだと思うが、反動としてそれを表現にできる人もいる。「人生って運ゲー!」みたいな、くそもへったくれもない唾吐きの方が共感できる。実際運ゲーだから。
最終的に「自分で選びましょう」と言っているような終わり方もする。とはいえ運ゲーを受け止めつつ、のような気がする。

この人の書く言葉は凄い。作曲依頼のペースがすごすぎてどうやっても仕事が追い付かないだろうけど、いよわさんがエッセイを書いたら絶対に買ってしまうと思う。

3位 黄金数

僕はどんな曲でもかなり歌詞によって印象が左右されてしまうんだけど、本当に流れている音だけで聴くこともある。「黄金数」はその一つだ。言っていることがなんかカッコよくて、なんか怒ってて、なんか美学を感じる。世界観の表明の仕方に、かなり小説的な良さがある。

選外佳作はyuigotさんとコラボした「Cloudsurf」とP丸様。とコラボした「スーパーレア」。ただ共同で作り上げた曲ってまたちょっと意味合いが変わる気もする。本で言うところの共著みたいな。

ベスト星野源曲

1位 夢の外へ

なんじゃこの楽しさは!
言うまでもなくMVの楽しさが全てだ。
星野源の美学は「楽しさ」じゃないかと思う。世界はどうせしょうもないから、楽しむ以外に方法がない。世界に「しょうもなw」と思えば思うほど、この曲の旨味が増していく。

歌詞の中で、曖昧な解を出すことも受容している。別にキッパリ答えを決めることが全てじゃない。
根暗全員がゆっくり辿り着くであろう「曖昧さ」の境地の曲。

2位 Crazy Crazy

1位はスパっと決まったけど、2位以下が難しい。全部良いから。

そして、星野源が歌っていることはほぼ全て同じだ。
エッセイを読んだ時も「同じ人間の言葉だな」と思った。
もちろん客観的に振り返って世界のしょうもなさを感じてしまうフェイズもあるみたいだけど、それも含めて星野源なのだ。

「やるなら楽しくやろうぜ」しか言ってない。
じゃあ一番楽しい曲、「狂う」って明言している曲が好きだ。
かなり直接的なメッセージ性を、わかりやすいMVと音って表現でガツンと伝えてくる。本人映像が流れるカラオケでこの曲を歌うの、流石に楽しすぎ。MV込みで考えていることはもう明白だ。

ギャグ」や「地獄でなぜ悪い」のメッセージのそのまま感もかなり好きなんだけど、この人が笑う姿を見ていた過ぎる。

3位 Week End

ゲンホシノさ、それは話が違うじゃん。カッコよすぎるじゃん。惚れちゃうじゃん。やめてよ。これじゃテレビのなかのスターじゃん。

テレビのなかのスターではあったわ。

ベスト映画

とはいえ映画のなんたるかを全く知らない。
人となりを知るためには、映画を羅列するっていうのがただ楽な気がするだけで。映画の評価なんて、性癖に刺さるかどうかの気がする。
世間の評価が一番関係ない。

よく知らないものほど定番を挙げたくなるのって不思議ですね。

1位 サマーウォーズ

わかりやすすぎる。
こんなに全部噛み合ってるアニメ映画ってない。千と千尋の神隠しより寓話感が低くて「ありそ~~~」と思える範囲のファンタジー。
そもそもオープニングといって差し支えない電脳世界OZの魅力と、その危うさが2時間の一本に綺麗にまとめられる。テンポが全くモタモタしておらず、ずっとワクワクさせられる。

セリフの全部が口に出したくなる。
オタクだから友達とこれだけで会話のテンプレートを投げ合うこともある。年に一回は見る。

2位 ペンギン・ハイウェイ

映画館で見てて泣いちゃった映画ってこれだけかも。
おおかみこどもの雨と雪で切なくなりはするんだけど、溢れはしない。
しかもペンギン・ハイウェイに関しては、世間的にそもそもそんなに泣く映画じゃないっぽいのだ。

個人によって感受性に刺さりやすい媒体があるんだと思うけど、僕にとって映画はそうでもないらしい。

それでもこの映画が刺さってしまったのは、ただの性癖としか言えなくて。なんかただ性癖全部載せ映画でしかないからこそ、結末が切なくて「あぁ……」って泣いちゃった。
アニメ映画を見る時が一番オタクの空気が滲んでるのかもしれない。

3位 セトウツミ

映画好きの父親に「サブスクで一緒に見てもいいけど、ストーリーものはキツい」と伝えたところ見せられた映画。
映画と言うか、ただのユーモラス脚本短編集。

「見た!面白かった!」と周りに漏らしたあとに「こういうウィットに富んだの好きそうだもんね」と返されて「うっひょ~」と思ったのが懐かしい。

もっと面白い映画を見るとこの枠が塗り替えられる気もする。
映画に求めているものって本当にテンポと会話だけかもしれない、と思ったのもこの作品がキッカケだ。映画版ヤーレンズみたいな。何気ないお喋りのオシャレさ。

ベスト漫画

漫画、全然読んでないんだけど記憶をたどって一応書いておく。大長編ストーリーは一個も入ってこないと思う。

1位 日常

キャラのぶっ飛び方がキャッチーすぎる。性癖を詰め込みつつも、ギャグ漫画として全体的に綺麗だ。不条理とあるあるの中間くらいを上手くついて来る。
それもファンにとっては「今更なんなんだよにわかが」だろうけど、かなり技量がないとありえない上手さで間違いない。

えぇ~次の回!次の回!となるのはギャグ漫画単行本だろうがそれが理想だろうし、飽き性な自分にとっては長編ストーリーよりずっと楽しませ方が性に合っていた。
中でも空気感のぶっ飛び方が好きなギャグ漫画だった。

2位 干物妹!うまるちゃん

いや~。申し訳ない。申し訳ないわ。

2位は干物妹うまるちゃんですって書く人間なことが。ズボラな可愛さってこうキャッチーなほうが絶対いいよねってアイマスの双葉杏とうまるちゃんを見て思った。

出会った時代に遡ると、キャラの性癖をドサッと載せたあとに需要に合わせてフルスピードでお届けに参った漫画だ。
「需要に間に合っていた」をメインとして作品を褒められるのはファンからしたらたまったものじゃないだろう。

現実味がないからこそのよさというか、「あったらいいね」の全部載せかつ、そうだった場合の理想的なボケツッコミみたいな。

性癖全部載せしながらのもしもボックスで、綺麗に笑いが取れるあるあるを全部やった、みたいな漫画。作者が尖ってないとできない。サンカクヘッドだけに。Sorry。

3位 聲の形

ストーリーが読めないとは書くものの、これだけは吸い込まれるように読んだ記憶がある。
たまたま家の棚に置いてあって、まあ生きづらさテーマだろうし!wと思って読んだら、「ああ、そうな、まあな」と思いながら読めた。
描写としてはエグるほどではないけど確実にどっかにあっておかしくない話だ。やけに写実的。

デザインも可愛いから読める。ただこう、こんな風にどうやっても救われます!でもないよな~と先に闇金ウシジマくんを見ていたから思った。
お話の流れとして、ただ好きな漫画ではある。
たぶんちゃんとストーリーとして少ない手持ちの中から答えるならこれになるんだと思う。

ベスト絵本

1位 しろくまちゃんのほっとけーき

何が好きだったかな~とぼんやり思い出す時に、今もハッキリと脳に置いてあるのはこの子の顔だ。
オノマトペを用いて、美味しそうかつわかりやすく伝えてくれる。

絵本の存在意義みたいなものをあとあとから考えると、しろくまちゃんのほっとけーきってすごくね…………?みたいな気持ちにもなる。
というか絵本の世界ってかなり深すぎるんだろうな、とたまに思う。

2位 ちびくろさんぼ

正直覚えてない。
聞いた話によると、今は売ってない。
続編のことは知らない。
でも覚えるほどに印象深い。

ただただ「トラがグルグルと回って最終的にバターになる」というちょっとだけ共感性をくすぐる面白さ、ファンタジーかつ若干のギャグ感。
「なんじゃそりゃ」と思いつつも、どこかコミカルで「物語の面白さ」と「ヘンテコな表現の面白さ」を同時に感じられる。

まあそこまで思って読み聞かせられてないだろうけどね。

3位 おしいれのぼうけん

こっっっえ!!!!と思った。
ちょっと恐怖心がありつつも、好奇心をくすぐる。逆も然り。
ちょうどいい塩梅の怖さと温度感。
幼児が黙ってなくほどの怖さでもないけど、ドキドキしながら感じる得体のしれない恐怖。この表紙だけなんか覚えているみたいな人も多いだろう。
というか僕もそんな感じ。

ベスト漫才

1位 「コーンフレーク」ミルクボーイ

その、良すぎる。
もう内容については語らない。
M1とお笑い好きだなぁって思えたきっかけは、この人たちが面白すぎたからだ。

テレビ朝日のYoutubeチャンネルで「焚き火で語る」という企画動画がある。M1決勝進出者などの芸人が対談をする動画で、ベスト漫才を決めるくだりが大体あってそれでもなおこの漫才は評価されている。

チュートリアルのチリンチリンか、笑い飯の鳥人か、ミルクボーイのコーンフレークは頻出だ。これは凄いことなのだと思う。その動画らはアーカイブ期限があり、集計はできなかった。

本当にお笑いを愛している人がベストを決める時、もう完成形だと思ったものは決まっているらしい。そしてM1ベスト審査点もしっかり取ってしまっている。

ちゃんと聞くと悪口なのに、間とテンポと展開があるあるによって神がかっている。
「コーンフレークはまだ朝の寝ぼけているうちやから食べてられる」なんて、文に起こしたら悪口だ。
システムが凄いのも確かだけど、演者としての底力みたいなものが二人にはある。

2位 「サワムラー」真空ジェシカ

真空ジェシカが有名になり始めた頃に動画が消えた、本当に面白いネタ。たまに見返すことは叶わなくなったし、熱意を伝えることしかできない。

「生まれた時の声を録音したものが、『スマブラのサワムラーがモンスターボールから出てきた時の音』だった」という大喜利から完全なおふざけを展開する。

確かに前提知識(キャプテン翼や林修や東京ホテイソン)も要るんだけど、未来のお笑いってこれなんだろうなって初めて見た時に思った。最終的にジェスチャーボケに発展する。

不可解なダンスが全てボケになるような感覚。ほぼパズルやクイズみたいな気持ち良さで、ネタを書いている人が「漫才はぷよぷよ」というのが分かってしまいそうになる。

10年後の真空ジェシカが見てみたい。実質30年後のお笑いがこの人のフィルターから見ることができるんじゃないか。

この人らが2023年のM1決勝で「大衆向けじゃない状態の漫才を見たい」とよく言われたのを覚えているけど、この人らが大衆向けに作らなくなったら本当についていけないと思う。

「吉住でシコった」とか「舞台袖で交尾をしている」とか「ハイハイをしそうな赤ちゃんで賭ける、赤ちゃん版の競馬『競育』」にチャンネルを変えて辿り着いた大衆が追い付けるわけがないのだ。
実際に地上波でマグロと赤ちゃんが押し付けられてせめぎ合っている時、面白さと怖さが同時にあった。

ラヴィットの真空ジェシカに一部がついていけないのと全く同じで、「お笑いです」と思ってない人が見た時の惨劇をM1でやるわけがない。
問題はそのバランスの調整がひどく難しいってことなんだろう。
だからこそ「大喜利」という笑ってもらうことが前提のフィールドが得意なのは納得感がある。

優勝してくれ~!

3位 「毒爪」マヂカルラブリー

ツッコミの村上、「いい大人が集まってこんなので笑ってんじゃないよ」みたいなことを言っていた気がする。その通りである。この漫才はほとんどコロコロコミックなのだ。これも動画は残っていないので悲しい。

「即死の毒爪を全ての武器の中で最強だと言い張る野田が、銃やマシンガンやロケットランチャーを持つ村上に避けるなどしてゆっくり立ち向かい勝利する(ことになる)」のを繰り返すだけのネタ。
書いてみてもしょうもなさが満点だ。
小学生が作ったのか?

最終的には弾にしっかりとダメージを食らいながら毒爪を刺しに行く描写がある。さながら不死身の杉元だ。
絵面と状況の面白さだから、これ以上語ることはないかもしれない。

選外佳作

「ねづっち」パンプキンポテトフライ
「怒ってる?」ストレッチーズ
「Youtubeチャンネル」スタミナパン
「部屋探し」オードリー
「ダイヤモンド」Yes!怪奇どんぐりRPG

ベスト国語教材

今考えてみると国語が好きだった。母親が中学国語教師だったからか、感想を述べると嬉しそうだった。それだけなのかもしれない。

1位 おれはかまきり

シンプルに童心で選ぶと、これが一番いい。
というかこれが一番好き!って言えない学校がまあまあ憎かった。冒険譚の序章にすら感じるのに、自分にはどこか危なげ儚げに映った。
ハリガネムシの存在を知るともっと好きなった。カマキリは本当に心からワクワクしていて、元気だったんだろうか。

言っていることはいっちょ前なのに、なんか想像上のカマキリがちっちゃいのだ。完全にカッコいいとは思えなかった。ひらがなで書いてあるのも関係するかもしれない。
ニャースやチョッパーが好きな理由と同じで、何かの諦めを感じる。ちょっと無理をしているようにも感じるのに、道化でもあるし冒険家でもある。

本当にギラギラしているやつは「おれの こころも かまも どきどきするほど ひかってるぜ」なんて言わない。
「おれは がんばるぜ」とはわざわざ言わない。「あまり ちかよるな」の意味も違って聴こえる。

心のことを不意に語り持ち出すやつに、本当にカッコいい奴はいない。きっとだからこそ好きだ。

コンクリート街の近くの雑草に棲むカマキリが、自分をどこか奮い立たせるような、そんな気概を感じてしまう。

隠喩(メタファー)がどことなく好きなのも、この詩が好きなことから始まっている気がする。

2位 ごんぎつね

かなしい……。でもこうだよな。
行動のすれ違いと、社会と、思いやりの報われなさと、勝手な同情ってこうなんだよな。
よな…………。

3位 寿限無

教科書に載っているのを見た記憶はないけど、付録みたいな小さな言葉遊びや詩が中心の本が与えられて、それに載っていた。皆が寿限無を覚える中、就学してすぐに言えて当たり前くらいまで練習していた。
童心・本心・素直なまま好きなのはこれだと思う。隠喩とか表現とかまるで関係なく、ただ気持ちいいから好き。歌や音楽やダンスと本質的に何も変わらない。

こんなに口出していて気持ち良く、舌が回ることを味わっていていいのか。それを皆が練習しているすばらしさって国語って教科にあるのか。でもって脚本のボケとして綺麗だ。

ソーラン節や、学校では教えてもらえない外郎売りも、ただ「Enjoy」の部分にしか意味がない気がした。
「寿限無」が何故か面白いって思えたから、今になってもなんでも面白いのかもしれない。


こなまるでした。

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