小波 季世|Kise Konami

随筆家。徒然なるままに徒然なることを。 本・旅・猫・日本酒・文化人類学(観光/災害/ダ…

小波 季世|Kise Konami

随筆家。徒然なるままに徒然なることを。 本・旅・猫・日本酒・文化人類学(観光/災害/ダークツーリズム)。第二回 杜の都人類学賞受賞。 KIRIN×note #また乾杯しようコンテスト審査員賞受賞。無類のホヤ好き。

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苦くて甘い「乾杯」を、一緒に。

あのお酒とあの思い出ハタチを迎えてから10年が経った。10年もあれば、大学や地元、会社や旅先でのいろんな「お酒」の思い出がそれなりに降り積もっている。 学生の懐にもやさしい値段の飲み放題のお店で、おそるおそる飲んだカシスオレンジ。だだっ広い河原でバーベキューをしながら、喉に流し込んだ缶チューハイ。寒い冬の恒例だった誰かの家での鍋パーティーに、必ずといっていいほどあった梅酒。たまに帰る実家で「せっかく季世が帰ってきたから」と、家族が用意してくれていた地元の日本酒やワイン。社会

    • 3月日記|あなたという本はどんな本?

      ■石橋を叩いて割る彼女、今にも落ちそうなつり橋を走り抜けようとする私3月某日。疲労感とともに目覚める。前日、気づいたら7cmヒールで1万歩近く歩いていた。パソコンや本が数冊が入った鈍器のようなかばんを持ち歩きながらの移動だったので、さすがに足首が悲鳴を上げている。 疲労のあまり寝るのが優先で、マッサージを怠ったのがいけなかった。まずは体を温め直さなくては。寝ぼけまなこで浴室に向かい、蛇口をひねってバスタブにお湯をためる。 上京する姉が今日から泊まりにくるというのに、家の中

      • 2月日記|哲学のある公園−Jとの往復書簡

        ■アメリカからの友人と旅人2月某日、アメリカ在住の友人Kが一時帰国するというので数年ぶりの再会。数年ぶりでも、久しぶりという感覚はほぼなかった。お互い、今以上にもっと未熟だった学生時代に出会い、相手の赤裸々な一面を良くも悪くも知り尽くしているから、ということもあるかもしれない。 私が人生に弱気になっていたときにKに本気で怒られたときもあるし、Kに対して私が烈火のごとく怒り狂い、絶縁予告をしたこともある。そんな仲なので、昨日も会っていたかのように軽口を叩き合いながらお酒を飲

        • 友人からのプレゼント、『華氏451度』。1953年に書かれたとは思えないほど、今の時代に刺さる。 おもしろすぎて早く結末が知りたいけど、読み終わってしまうのがもったいない…という幸せな悩み。 今年は出会った本のこともいろいろ書いていけたらと思います。

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        • 「人生で初めて」の体験集
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        • 人生
          136本
        • 画集
          0本
        • 言葉
          21本
        • 25本
        • 21本

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          1月日記|ソウル、そして日常。

          ■6年ぶりの海の向こう 2024年の2日目。10年ぶりに韓国を訪ねた。人生3度目の訪韓。 海外旅行は実に6年ぶり。コロナで海外渡航も難しかった2021年、海外に行けるようになったらすぐに行けるようにと新調したパスポートは、お披露目になるまでに実に3年がかかった。 成田空港とも6年ぶりの再会だ。6年前も今回も、年明け早々日本を発つ。クリスマスや年越しのシーズンを過ぎてから海外渡航するのは、飛行機のチケットやホテル代が少し安くなるというのが理由。だけど、非日常的な季節に旅

          1月日記|ソウル、そして日常。

          連なる記憶

          夜空という名のキャンパスに、大輪の花が次々に、そしてどこまでも咲き誇る。視界いっぱいの、いや、視界を優にはみ出すほどに大きな、一瞬だけ咲いては消える花たち。 花火の開始直後はとにかく大興奮で、この壮大な景色をどうにか記録しようと必死でスマホの撮影ボタンを連打していた。でも今はただ、この夜を記憶しようと空を見上げている。スマホの代わりに、慣れ親しんだブランドのお酒の缶を持ちながら。 * * * 遡ること、数時間前。ユキさんと私は、人で混み合う東京駅地下・グランスタにいた。

          2023年7-9月に出会った印象深いコンテンツたち

          例年この手の記事を書くのは半年か1年に1回。ただ、この3ヶ月はかなり盛りだくさんだったので、記憶の彼方に行ってしまわないうちに…と思い、パソコンを開きました。 ※2023年上半期のnoteはこちら ※2022年のnoteはこちら。 ※2021年のnoteはこちら。 ■本・マンガ①『さみしい夜にはペンを持て』 ベストセラー『嫌われる勇気』のライターとしても知られる古賀史健さんによる中学生向けの本。 中学生向けではあるものの、これはそれ以外の年齢の人も、特にオトナたち

          2023年7-9月に出会った印象深いコンテンツたち

          文化人類学視点の自己紹介note

          学問バーKisi本店の1日店長になります。きたる2023年9月30日(土)18:00-23:00、学問バーKisi本店さんにて、1日店長をやらせていただくことになりました。 新宿、歌舞伎町の片隅。ありとあらゆる年齢層の人や娯楽、ネオンがひしめく夜の街を通り抜けてたどりつくのは、バーやレストランが所狭しとひしめくビルの5F。 扉を開けると、そこは「お酒を片手にアカデミックな会話を楽しめるバー」。様々な専門をお持ちの方が日替わりで店長としてあなたを待っています。 今回、私が

          文化人類学視点の自己紹介note

          嵐の後には凪が来る。

          盆地育ち、海知らず 海に入るのは苦手だ。それでもたまに無性に海が恋しくなる。18歳になるまで、文字通り山に囲まれて育った。実家の部屋の窓からも、小中高の通学路からも、どこにいても山が見えた。初夏になっても、県内最高峰の山はまだ山頂に雪をいただくような、そんな土地だった。 先人のそんなつぶやきを、きっとみな心のうちでふと口ずさむ。そういう土地で生まれ育ったので、私にとって海は山々の向こうにある、遠い遠い場所だった。強く意識したことはなかったけれど、まだ幼い頃、慣れない海で溺

          嵐の後には凪が来る。

          2023年上半期に出会った印象深いコンテンツたち

          早くも折り返しを迎えた2023年。記憶が鮮明なうちに、上半期に出会った印象深いコンテンツたちをまとめておきたいと思います。 ※2021年のnoteはこちら。 ※2022年のnoteはこちら。 * * * * * ■本①キム・サンウク『K-POP時代を航海するコンサート演出記』 BTSをはじめとする数多くのK-POPアーティストのワールドツアーコンサート・ファンミーティングで総演出を務めてきた「PLAN A」の社長・代表プロデューサーであるキム・サンウク氏の著作。

          2023年上半期に出会った印象深いコンテンツたち

          長崎からの手紙

          そんな旅の「楽しみ方」を私に教えてくれたのは、大学の同級生だった。 旅先から、家族や友達にではなく、自分に手紙を書く。それまで学校の修学旅行以外に旅行らしい旅行をしたことのなかった大学生の私にとって、彼女のその習慣は、ひどく大人びた、特別な楽しみ方のように思えた。 * * * 今でこそ旅先から自分に手紙を出すことは、私の旅の定番になっているけれど、初めて旅先から自分に手紙を書いたとき−−もう10年近く前になる−−はひどくドキドキしたのを思い出す。 そういえば、あの手紙

          3日前まで『BLUE GIANT』を知らなかった私が、映画館で泣き崩れた話|音楽は今でも素人だけど。

          ■音楽への無知さが生んだ「食わず嫌い」 そんな文字が踊るほどの有名作品でも、なんとなく素直に飛びつけないことがある。世の中の話題についていくためにも、最低限触れておいた方がいいものはたくさんあると頭ではわかってはいるのだが。 昨今でいうと、映画『BLUE GIANT』がまさにそうだった。職場や身近なコミュニティー内でも早いうちからかなりの話題になっていた。 曰く、「絶対行ったほうがいい!音楽が本当に素晴らしい!」「(作者の)石塚先生にサインもらった……!もう家宝!」「轟

          3日前まで『BLUE GIANT』を知らなかった私が、映画館で泣き崩れた話|音楽は今でも素人だけど。

          「人生で一番のオムライス」。

          そう母に嘆かれたのは一度や二度ではない。 食べることが大好きな姉と比べると、私の食への情熱のなさは余計際立っていたのだろう。どんなに具合が悪い時でも、姉はしっかり食べる。私はといえば、具合が悪くなると食欲までなくしてしまう始末。ゼリーや果物を食べるのがやっとというありさま。 一方の姉はお菓子や甘いものも大好きだ。姉が楽しみにしていたポテトチップスを父が勝手に食べてしまった時の嘆きと怒りたるや、我が家の歴史上、最大級の災禍といっても過言ではない。まだ十代だった姉の壮絶な怒り

          「人生で一番のオムライス」。

          2022年に出会った印象深いコンテンツたち

          noteを始めてからおそらくもっとも記事更新の少なかった2022年…。とはいえ、振り返ってみると、今年もまた様々なコンテンツに救われた1年でした。備忘録もかねて、今年出会った印象深いコンテンツをご紹介したいと思います。  ※2021年のコンテンツ振り返りはこちら。 ■本①『清少納言を求めて、フィンランドから京都へ』 これはもう、年始から最高の読書体験でした。 『枕草子』といえば知らない日本人はいないほど、学校の授業で「春はあけぼの…」の暗唱テストがあるほどの名作。 

          2022年に出会った印象深いコンテンツたち

          2021年の思い出深いコンテンツベスト5

          早くも2021年も最終日。今年は以前に比べてnoteを書くことがぐんと減りましたが、「いつかnoteに書きたい!!」と思えるような出来事・コンテンツとの出会いも無数にあった1年でした。 せっかくなので自分の備忘も兼ねて、「2021年の思い出深いコンテンツ」を5つご紹介したいと思います。 ■舞台・展覧会①ミュージカル『レ・ミゼラブル』帝劇公演 言わずと知れた名作『レ・ミゼラブル』。ヴィクトル・ユーゴーが1862年に執筆した小説をもとに、1985年からミュージカルが上演され

          2021年の思い出深いコンテンツベスト5

          「音」の時代がやってきた|『ボイステック革命 GAFAも狙う新市場争奪戦』読書録

          ●今日一日の「音」時間はどのくらい?あなたは今日、どのくらい「音」に時間を費やしただろうか。 「『音』って・・・?」と思われた方もいるかもしれない。ここでいう「音」とは、「音声のみで楽しむこと」を前提にしたコンテンツのことだ。 好きなアーティストの楽曲、ポッドキャストや音声ニュース、たまたま道ですれ違った人たちの何気ない会話・・・。それらはすべて「音」として感知され、私たちの気分を高揚させたり落ち着けたり、新しい知識を得るきっかけになったりする。 私はといえば、平日は毎朝

          「音」の時代がやってきた|『ボイステック革命 GAFAも狙う新市場争奪戦』読書録