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雨の消炎作用

 日曜は一日中ベッドの上にいた。
 それまでの1週間の疲れが自分が思っていた以上にたまっていたらしい。

 腹痛がひどく起き上がるのもやっと。ロキソニンを飲んだらおさまるかと思いきや、腹痛はおさまるどころか頭痛までしてきた。雨が降っているせいかもしれない。
 こういうときは、マンガやドラマにも集中できない。本当にじっとしているしかない。観念して、ベッドに横たわったまま、少しだけ開けた窓の隙間から入ってくる雨音に耳をすます。

 私の住んでいる部屋は防音性能がよく、近所で工事をしていても窓を閉めれば外からの音は何も聞こえない。だから、窓を閉めていると雨音も全然聞こえないのだ。よっぽどの大雨ですらそう。

 日曜の雨音は、しとしとしていた。ざあざあ降るでもなく、ぱらぱらまばらに降るでもなく、しとしとと静かに細く降り続ける雨。

 雨音を聴きながら、ふと、ここ最近は随分とエネルギッシュに動き回っていたなと思う。いろんな人に会ったり、いろんなとこにでかけたり。信頼する先輩の言葉を借りれば「ちょっとドライブモード」。ややアクセル強めで日々を運行している状態。気持ちもちょっと高ぶり気味だった。

 そんな中の雨の日。
 江國香織さんの「雨」にまつわるエッセイの一節を思い出す。

 雨には消炎作用があると思う。だから、もしも感情の起伏−たとえば恋愛−がある種の炎症だとしたら、雨は危険だ、といえるかもしれない。

 雨の消炎作用。梅雨時や雨の日は落ち込む・からだがだるい・頭が痛くなる、という人は多いし、私も多分にもれずそういう傾向はある。今までは「いやだな」と思うことが多かったけれど、雨は、人生という道中でアクセルを踏みすぎないようにセーブしてくれる作用があるのかもしれない。うつらうつらしながらそんなことを思う日曜の午後だった。


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ありがとうございます。いつかの帰り道に花束かポストカードでも買って帰りたいと思います。