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富士山は、本当にあった。

 久々に東海道新幹線に乗った。新幹線や飛行機に乗るときは必ず窓側の席を確保する。窓から景色を眺めるのが好きなのだ。「旅の思い出」というと、旅先でのことより、移動中の乗り物の窓から見た景色を思い出すことの方が多いかもしれない。

 東海道をひた走る新幹線。雲の合間から富士山が顔をのぞかせる。富士山とはほど遠い土地で生まれ育った私にとって、地理や古文で出てくる富士山は、同じく授業で習うエベレストや京都と同じくらい自分の日常とはかけ離れた「世界のどこか」だった。

 だから、初めて富士山を間近に目にした時は、単純に驚いた。テレビや教科書の中だけの存在だったものが、実体を伴って目の前に現れた瞬間のあの新鮮な驚き。

本当にあるんだ。

 数年前の山梨への友人たちとのドライブ。富士山に縁のある神社にお参りし、少し高いところから富士山を眺めたあのとき。そのとき私は初めて富士山の美しさを心から噛みしめたような気がした。

ありがとうございます。いつかの帰り道に花束かポストカードでも買って帰りたいと思います。