自家製処方箋のすゝめ
だいすきな本がある。梨木香歩著『不思議な羅針盤』。小説『西の魔女が死んだ』で有名な梨木さんのエッセイ。
年を重ねるに連れ、エッセイを好んで読むようになった。エッセイのすきなところは、ノンフィクションなところ。それでいて、フィクションのようなところ。数ページにすっきりまとまっているシンプルさもすき。
思えば、『源氏物語』より、『枕草子』がすきな高校生だった。
『不思議な羅針盤』で一環して描かれているのは、人や世界との距離感の話。各エッセイのタイトルもこんなふう。
「近づき過ぎず、取り込まれない」
「ゆるやかにつながる」
「近づき過ぎず、遠ざからない」
「『スケール』を小さくする」
等々。
梨木さんの文章は、喜怒哀楽がそれぞれそのままの重みで伝わってくる気がする。それでいて、どこか淡々とした風情なのがとてもすきだ。
この本は、少し疲れてしまったときの薬として読もうと思った。本や音楽、食べ物、飲み物、友人、知人。少し疲れてしまったときには、この本。高ぶった気持ちを落ち着かせたいときには、この曲。落ち込んだときには、この人。
その時その時の自分の状態に合わせた処方箋。目下、鋭意作成中。
ありがとうございます。いつかの帰り道に花束かポストカードでも買って帰りたいと思います。