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道の先に

 自転車に乗るのは久しぶりだった。毎日電車に揺られながら家と会社の往復。休日も電車移動が基本。そんな日々をずっと送っていた。

 南国、竹富島。貸し自転車屋さんで自転車を借り、私はあてもなくペダルを漕ぎ始めた。鼓動が早まり、呼吸が荒くなる。「超」がつくインドア派の私にとって、それは久々に自分の体全体を駆使する運動だった。

ああ、自分は生きているんだな。

 そんな当たり前のことを、自転車を漕いで思い出すなんて。なんだかおかしくなって、自然と微笑んでしまう。

 赤瓦の家々のあいだをゆっくりと通り過ぎ、両脇に緑が広がる小道をスピードよく駆け抜ける。道はまっすぐだったり、くねっていたりして、この先に何があるのかわからない。淡いブルーの空の下、ペダルを漕ぎ続ける。

 やがて道が途切れ、目の前にはどこまでも青い海が広がっていた。これは行き止まり?そうじゃない。泳いでいくことだってできる。

私は、自由だ。

ありがとうございます。いつかの帰り道に花束かポストカードでも買って帰りたいと思います。