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ありがとう

かっこよかった
とにかくかっこよくて

その頃のわたしは
この人が作る次の曲が聴けるまでは生きていたいって思いながら過ごす日がたくさんあった
青臭いけど、ほんきでそう思ってた

頭もからだも押し潰されそうにかんじるとき
わたしを人間の形に保たせてくれていたのは

読みかけの本であり
流行りとは離れるように何度も何度も聴き続ける同じ音楽だった

ミッシェルガンエレファントの曲をイヤホンでずっと聴いてた

スピッツも
山崎まさよしも
斉藤和義も
中村一義も
ブランキーも
サニーデイも
峯田もUAもCHARAもスカパラもだいすきだったけど

チバさんの声が
歌詞が
すごくすごくすきだった

"世界の終わり"を聴いて夢中になった
次の曲が待ち遠しかった
県外のフェスで何度か観ることができた

チバさんもアベさんも
ウエノさんもクハラさんも
かっこよくてどこかチャーミングだった

高3の冬に チケットを予約して
やっとライブハウスでミッシェルだけを聴きに行けるはずが
定員をオーバーしていたと連絡が入って
チケットが幻になった

大げさだけど
だいぶ前からそれだけを楽しみに
バイトも受験もやってきてたから
悲しくて

1人で行くはずだったライブ
すごくすごく楽しみだったのに

その夜泣いたせいなのか
知恵熱みたいに高熱が出たのを覚えてる

次の機会こそはと思っていたけれど
結局単独ライブを観に行けないまま
ミッシェルは解散してしまった

ちょっと遠くても
無理してでも
行けばよかったとしばらく後悔してた

結婚してからはライブで音楽を聴くことも減って
子どもと一緒だと
聴く音楽も以前とは変わって

車の中で流す音楽は
みんなが知ってるような曲で
とてもいいんだけど

心臓をぎゅっとつかまれるような
まるごと赦してくれていると感じるような
歌詞を必死に追ってしまうような

そんな歌をあまり聴かなくなっていた

スラムダンクの映画を子どもたちと観て
「オープニング曲もかっこよかった」
って息子が言ってて

娘も
「あの鉛筆の絵と曲が合ってて
なんかすごいね かっこいい」
って言ってて

うれしかった
わたしは何にも関係ないのに誇らしかった

町田康の文章も
つげ義春の漫画も
なんだかわからないし
わたしでは手に負えない感がすごいのに
惹かれてしまう時があって

そこに目が行く時
そんな時はくるしい時が多くて
でもなぜかそういうものが
救ってくれている感覚があった

チバさんが紡ぎ出す言葉も
そんな効力があった
すごく強いものだった

強くて優しくて
かっこよかった

もっと聴きたかったとか
それは私じゃ言えないなと思う
だって何年もまともに聴いてなかったから

でもこれからもずっと
特別なミュージシャンです
だいすきです
わたしもあなたに救われました
ありがとうございました


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