放課後、魔法少女【創作】

アタシ、加賀美(かがみ) ほづみ。レッドブルドーザーってあだ名が付いてるけど、一応普通のセレブ小学生だ。ある日、ユニコーンのとんがりって珍妙な生き物に、魔法少女にされちまった。これから、一体どうなちまうんだぁ!!・・これで、いいか?わかったんなら、一発殴らせろ。

「この世から数字をなくしたい」
某ショッピングモール、フードコート。いきなり、物騒な単語が飛び出した。
「あん?どうしたんだ、マキ。いつもいるかいないかわかんねぇのに、いきなり発言して」
「青天の霹靂」
「ウメコも夕方なのに、まだ体力あんだな」
「神々の包容」
「ウメコさん、今日は昼休みからずっと保健室で寝てたって。それより、数字をなくしたい」
マキが、そう言いながらごそごそとランドセルを漁る。
「あぁ、もしかして今日いきなりあった、アレか?」
「うん、算数のやつ」
マキが、取り出したのは35点の算数のテスト用紙だった。
「意外だな、マキってなんか勉強出来そうなのにな」
「驚天動地」
「算数以外なら、出来るんだけど算数が無理すぎる」
ちなみに、マキの普段のテストは国語90点。算数45点、社会97点、理科86点である。まぁ、算数以外の勉強はできるほうのようだ。
「別に算数以外がこんなに高いなら、算数頑張らなくてもよくないか?」
ここで、ほづみのテストの成績を発表すると国語32点(おまけで、100点)、算数19点(おまけで、100点)、社会56点(おまけで、100点)、理科66点(おまけで、100点)である。人の事は、全く言えない。ところで、おまけ(権力)ってなんですか?
「だからだよ。算数さえなくなれば、悩まされることがなくなるのに」
「たまに、ちょっとマキのことが分かんなくなるわ。いいのか、マキそんなんで主人公張って」
「回避行動」
「そうだな、マキをなんとか説得するぞ。このままだと本気で算数消しかねないならな」
「いやいや、いくらなんでもそんなことはしないよ。でも、算数のメリットが分からないとやるかもしれない」
マキ、目がちょっと本気である。目の奥に光がない。
「算数のメリットか。そうだな、敵の数が分かりにくいと殺るとき大変」
「普通は、戦わないからいらなくない?」
「シンデレラ」
「いや、私は体力ありますから」
「数字がないと、金がないから物が買えない」
「物々交換でいいじゃん」
「身体測定」
「むしろ、体重とか知りたくないし。なくていいです」
「何歳かわからない!!」
「分からない人世の中にいっぱいいるじゃん」
「くっ、思ったより数字いらなくないか。ヤバい、このままだと数字が失われてしまう!!」
「なんだか、楽しそ~」
「おっ、燃料切れたか。いや、ちょっと数字のない世界も観てみたいかなって。ヤバかったら、魔法でなんとかすりゃいいし」
「おいおい!魔法をそんなことに使うなきゃわ」
「おっ、居たのか。とんがり、ってその語尾キモいな」
「語尾はいいきゃわ。魔法をあんまりほいほい使うなきゃわ」
「あぁ?自分が魔法少女になってって土下座しといて、ほいほい使うなだぁ?じゃあ、魔法少女にすんなよ」
ほづみがとんがりを、足で踏みつけながら反論する。
「魔法少女を増やすことが、妖精としてのステイタスきゃわ。だから、増やすきゃわ。それに、あんまり世界を変える魔法を使えば、」
一瞬、ほづみの力が緩んだのを見逃さなかった。とんがりは、その隙に踏みつけから抜け出し、テーブルに座った。
「おっ、どうなるんだ?」
「とんがりの立派な角が折れるきゃわ」
一瞬、とてつもなく冷えた空気が流れ、フードコートのBGMが空しく辺りを包んでいた。
「なんとかかんとかーー」
「ヤバい、すっかり放置されたマキが魔法の呪文唱え始めたじゃないか!!」
「やめるきゃわ、やめるきゃわ。何年もかかったきゃわ!折れたくないきゃわ!!」
「なんか、うるさいからやっちまえ!マキ。変な世界だったら、容赦しねーけどな」
「あぁー、あぁー」
「おい、まだか。まだなんか?」
「いやーぁぁぁ!!!」
阿鼻叫喚でぎゃあぎゃあ騒いでいる中、マキはとても落ち着いて魔法を唱えていた。魔法が完成するまで、後少しと言うところで、ある一言がマキの動きを止めた。
「数字なくなったら~、テストもなくなっちゃうよ~」
テストがなくなれば、得意な国語も得意ではなくなってしまう。評価しているのは、数字なのだ。
「・・やっぱ、やめる」
マキは、杖を下ろした。なんだか、憑き物が取れたように清々しい気分だ。そうだ、逃げないでしっかり数字と向き合おう。数字がなければ、評価が出来ないのだから。努力がすべて消しすみになってしまうのだから。
「あっ?やんねーのかよ。つまんねーな」
「ありがとう、ありがとうございます」
最初の止める気はどこに行ったのか、すっかり盛り上がっていたほづみは、残念そうに肩を落としとんがりは、語尾も忘れて泣き崩れていた。
「みんな、騒いでごめんなさい。私、頑張って算数克服するよ。それはそれで、」
マキがちらっと泣き崩れたとんがりを見る。
「私より目立とうとしたから、折れて角」
「はぁ?むぁぁぁぁぁぁ!!!」

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