お年玉争奪戦2018

ウチの実家はかなりの貧乏だったので、子供の頃はちゃんとお年玉をもらったことなんて無かった。
『お年玉はお母さんが預かっておくね~』なんて言われて二度と戻ってこない…なんてのはどこの家庭でもあることだとは思うけれど。

でも、ウチの実家が少し特殊だったのは、お年玉を奪い合うシステムがあったことだった。
父親がだいたい5000円くらい用意して、トランプで勝った者だけが賞金としてそれを獲得できるという仕組みである。
賞金はすべて小銭で用意されており、1回勝つと300円~500円…くらいの試合を10回戦程度で行う。

上手いこと10回勝てば5000円くらいのお年玉を手にすることができる。
しかし全敗すればお年玉はビタ一文として支払われない…僕たちはデッドオアアライブ形式のお正月を過ごしてきたのだ。

ちなみに、正月に行われるトランプ大会の対戦相手は弟たちである。
たぶん言ったことは無かったが、僕には3人の弟がいる。

すなわち僕は4人兄弟の長男…もっとも長い男なのだ。
なにが長いのかはわからんけれども、そりゃもうとにかく長い。
近所のおばさんにも『あら~昆布ちゃんは長いわね~』と褒められたことがあるとか無いとか。特に股間のパワーショベルの長さといったら…おっと、話が脱線しすぎた。

本題に戻るが、ともかく我が家では古来よりお正月のお年玉争奪戦が繰り広げられてきたのだ。
ウチにはお小遣いなんてシステムも無かったものだから、このトランプ大会は子供時代の僕ら兄弟にとって数少ない稼ぎのチャンスだった。

とはいえ、僕は言うまでもなく、弟たちもすでに全員成人している。
もうお年玉をもらうような年でもない…というかお年玉を配るべき年齢に達しているし、みんなそれなりに稼ぎもある。

が、お年玉争奪トランプ大会は今年も例年通り開催される運びとなった。

父親から『3日の夜に実家に来るように』と指令が来たのだ。
つい昨日親戚の集まりがあったのに何故…?と尋ねると、例年通りトランプ大会を開催するために弟たちも召喚するのだという。

仕方なく実家に行ってみると、マジで面倒くさそうな顔をした弟たちがそこにいた。
それはそうだろう。弟たちはそこそこ稼いでいるし、次男に至っては実家から50㎞くらい先に住んでいるので交通費だけで損をしそうなレベルなのだから。

子供が全員成人し、父親も出世した現在、実家はそれほど貧乏ではなくなっている。

が、お年玉の総額は相変わらず5000円くらいなのだ。

もはやこのトランプ大会はお金を争奪するためのものではなく、お正月の伝統儀式になってしまっているのだろう。
弟たちもそれを理解しているので、『こんな少額のためにわざわざ集まるのも面倒くさい…』と言いつつもトランプをしに集まるのだ。

子供のころは熱気に満ち溢れていたトランプ大会。
勝ち負けで泣いたり、ズルをしたしないで怒ったりしていた弟たちもすでに良い大人…今年のトランプ大会は非常に落ち着いた雰囲気の中で執り行われた。

ただし、僕を除いては。

僕だけは本気である。

誰よりも本気で5000円を取りに行っている。

弟たちはハッキリいってそこそこ出来が良い。
次男と四男は県内トップクラスの大学を出てIT系の会社に就職してバリバリ働いている。
三男は専門学校卒だが、そのまま技術を生かしてイラストレーターだかデザイナーだかの仕事をしている。

僕だけなのだ。

『働きたくない』という理由で会社を辞めて個人事業をやっているのは。

もとい、ガチでお金が無くて困っているのは、僕だけなのだ。

僕の1日の食費はだいたい500円である。
そう、5000円もあれば10日間は生存できるのだ。

のんびりとした年始の空気感のなか、一人だけカイジの世界観でトランプに参加する僕。

そして始まるトランプ大会。
しかし状況は甘くない。なにせ弟たちは全員トランプが上手い。
トランプというか、あいつらはゲーム全般が上手すぎるのだ。将棋でもオセロでもスマブラでも勝ったこと無い。
昔は特殊能力:長男の暴力を使って何とか渡り合っていたが、今はあの能力を使えない。(大人だから)

何も考えずに次々とカードを切っていく僕に対し、キッチリ作戦を練って応戦してくる弟たち。
なんだこいつら。5000円なんて大して欲しくもないはずなのに。金の亡者め。もうゆるさん。

激闘は1時間近くに渡って続き、結局僕は5000円の賞金のうち800円を手に入れた。

こうして僕の2018年は終わった。

余談だが、帰ろうとする僕に父が『おう、勝てたか?』と聞いてきたので『すっげぇ負けたので二度とやらねぇ』と不貞腐れたところ、すごい哀れまれて5000円もらった。
そう、さっきも言ったが既に実家は貧乏ではない。貧乏なのは僕だけなのだ。

弟は『長男がいい歳こいてお前…お年玉もらうなよ…』と言っていた。
まぁでも、親としても息子が餓死したら困るだろうし、息子が先に死ぬのも親不孝だし、ありがたくもらっておくことにした。
僕にプライドなんてものはないのだから。

そんなわけで、なんやかんや良い年明けになった。
ハッピーニューイヤー!

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