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10kgやせたら育乳に目覚めた

2018年もあと10日ほど。今年1年をふりかえると、手術があったり、ジムで踊ったり筋トレをしたり、食事に気を使ったりと、とにかく自分の身体に向き合った年だった。

20代の多くの時間を、標準体重を10kg以上超える体重で過ごした。30歳を過ぎて、もう痩せにくくなったかもしれないと思いながら、「私のまず着手すべき課題は減量だ」「やせたら何か変わるかもしれない」という思いで1年間試行錯誤していたら、10kgやせることができた。

2018年、かわいい女の子のアバターをまとえるサービスが登場し、自分はどんな存在にもなりうるという考え方がようやく普及してきた。そんななか、リアル身体に回帰し、自己受容感覚を得たというおはなし。

私の理想の少女体型

「育乳」、つまり胸を大きくすることである。そんな言葉をタイトルに入れているものの、育乳の必要は自分にはないと思っていた。私は胸は平均よりはある方で、小学校高学年くらいからすでにある程度のサイズがあった。これが曲者で、親にスポーツブラを買ってくれだなんて自分から言いにくかったため、体育のときなどは服との摩擦で胸のアトピーが酷くなってしまい血や滲出液がにじんでしまった。この胸のアトピーは10年ほど悩まされた(今はほぼきれいになったものの色素沈着が若干ある)。

今でこそボリュームを抑えるブラジャーが登場し、胸の大きい(分かりやすさを考慮し、「巨乳」とする)人の悩みもカバーされるようになってきたが、胸の小さい(同、「貧乳」とする)人に比べて、悩みを吐露しにくい感じがあった。

巨乳であることのデメリットを挙げると、走ったりすると揺れて不快、胸がつかえてスリムな服が入らない、たまに希望のデザインのブラにサイズがないことがあること、肩が凝る、将来垂れるリスク、などなど。私は幸いにしてあまりなかったけどセクハラを受けやすかったりもするだろう。

胸があることは若干の誇らしい思いも持ちつつも、「そうは言っても(誰に見せるというわけではないが)別にきれいじゃないしなあ」、そして先ほど挙げたようなデメリットも鑑みると、そんなにポジティブな気持ちではなかった(逆に、胸が大きすぎる人はあまりにも人生が大変だと思うので、少し大きいくらいでちょうどよかったとも思っている)。

加えて、私は単純な見た目の好みでは、少女のような造形を理想としていた。ぱっつん前髪でまっすぐな黒髪ロング、華奢で薄い体型、少女趣味なワンピース。肉付きのよい自分がそのような体型になることは無理だと悟っていたけれど、ただ単にうらやましいなあという思いでいっぱいだった。

5年間のブラトップ生活

大学4回生のころ、部活の引退にともない、過去10年ほどやっていた管楽器演奏を辞めた。そして卒論を書くようになってストレスで体重が増加した。それから大学院浪人、大学院生活を送るに連れて体重は増加の一途をたどった。自分の身長に適正な体重より10kg以上も増加してしまったので、アンダーバストが大きくなった現実を直視したくなかったがために、下着を購入することができなかった。

そこで出会ったのはユニクロのブラトップである。窮屈な下着から開放するブラトップは、20世紀前半にコルセットから開放されたファッションを彷彿とさせ、非常に画期的に思えた。5年前に以下のような(無駄にテンションの高い)ツイートをしたほどだ。

ブラトップはとにかく楽だった。日中も睡眠時も、ゆるいホールド感が心地よく、四六時中つけていられた。洗濯機でガシガシ洗える気軽さもよかった。

爆上がりした下着への投資

そんなこんなで5年ほどブラトップを愛用していた。今年、私はピーク時より10kg近い減量に成功し、ある時「下着を買ってみようかな?」という思いに至る。今年の冒頭に掲げた「2018年にやりたいこと100」にも「いい下着を買う」という項目を含んでいたところだったのだ。

大学生の頃から愛用していたメーカーであるウンナナクールに行き、計測してもらうと、ブラジャーのサイズは太る前と同じで安堵した。それからいくつかの下着を買い足し、昔の下着を捨て、ブラトップは夜寝るときの専用になった。

そうやって購入した下着達は、私がいかにも好きそうな、ピンクのふわふわとしたレースだったり、星空をイメージした柄だったり、少女趣味でかわいらしいものだったのだけれども、あるとき「サルートを買ってみよう」と思うに至る。その時の心境もまた、当時のツイートを引用しよう。

サルートとは、ワコールが展開する下着の中でも比較的高級ラインのもので、価格帯はブラジャーだけで1万円くらいする(今まで私はサルートが最高級ラインだと思っていたが、さらにそのうえのトレフルというラインも存在することを知った)。サルートは聞いたことはあったけれど、セクシーで強めなデザインゆえに、自分はこういう感じは好きではなく、自分には関係ないものだと思っていた。

しかし、私が尊敬しているとあるストリッパーさん(突然だが私はストリップ劇場に行くのが趣味だ)がサルートを愛用している(正確には愛用していた)ことから興味を持った。Twitterで「サルート」で検索し、ストリッパーさんたちが、サルートを身につけて美しい胸部の写真を投稿しているのを何度も見た。「どうせいい下着を買うなら、ある意味最高峰なやつ行っとこう(所詮1万円台なんだし)」という思いと、人間としての強さを獲得したいという思いから、サルート購入を決断した。自分らしい柄はないかと物色してみたけど、ピンクも何か違うし……と、今までの自分なら絶対選ばなそうな深くて強めなワインレッドだ。

サルートの購入体験はというと実はすごく良かったわけではない。セレクトショップで購入したので、フィッティングに満足したわけでもなかったし、他で購入した下着より若干大きめで、自分のぴったりフィットしていたわけではなく「やっぱ自分にはサルート向いてないんじゃないか」と思いながらも、まあここまで来たしまあいいかという思いで買って帰った。最初は「この時が勝負だ」というときを中心に、いつしか(下着のレパートリーが少ないのもあって)日常的にサルートをつけていると「私はサルートをつけているのよ」という気分になってきた。

ブラジャーのベンダーロックイン

私の尊敬するストリッパーさんが「ブラデリスというブラがよい」という情報をTwitterに流していることを知った。ブラデリスは、ニューヨーク発のおしゃれと補整を兼ね備えた下着メーカーで、3ステップで胸やお尻の形を整えていくことをコンセプトとしている。当時、下着に関するコスト感覚が狂っており、ブラデリスもサルートと同様ブラジャーだけで1万円クラスのものだったが、フィッティングにしっかり時間を取ってもらえることに好感を覚え、軽い気持ちでフィッティングの予約をした。

フィッティングでは、ブラデリスのブラを試す前に、つけてきたブラジャーを正しいフィッティング方法でフィッターさんに付けてもらった。今まで自分の身体に出現したことのない谷間に衝撃をうけた。そしてブラデリスのブラジャーをつけてもらったところ、全体的にがっしりとした作りで、アンダーが結構きつい。背中やお腹、脇から集めてきた肉をブラジャーの中にしまうことで、周辺の贅肉を胸に形状記憶させるということらしい。今までブラトップで過ごしてきた私は相当に肉が流れていただろうなと思った。

ブラデリスのブラは、既存のブラジャーのラインナップの1つに加えて、週に1~2回ほどつけられればいいかなと思っていたところ、フィッターさんから「他のブラジャーをつけるとせっかくホールドした胸の肉が流れてしまうので、毎日頑張ってつけていきましょうね」と言われてしまった。

ブラジャーとは、しばらく使用しているとアンダーが伸び、補正能力が下がってくるらしい。ブラデリスでは、購入店舗に持ち込むと無料でアンダーをカットして縮めてくれるというサービスがある。アンダーをカットする必要がある時期に、次のフィッティングの予約をさせられた。つまり、アンダーの伸び具合によって、ちゃんと毎日着用しているか否かがバレてしまうのだ。次のフィッティングの予約をキャンセルしてもう行かないという選択肢もあるけど、ブラジャーのコストに見合ったメリットを享受できるわけではない。

1枚のブラジャーが1万円、育乳の指導に、定期的なカウンセリングとアフターフォロー。これを安いと見るか高いと見るか。ブラジャー界のエステサロンとも言えるし、ITの専門用語でいうとベンダーロックイン(特定メーカーの技術に依存することで、他のメーカーへの乗り換えが困難になること)されてしまったと言うこともできる。

獲得した自己受容感覚

今はすっかり、ブラジャーの付け方も覚え、せっせと周辺の肉をカップにおさめ、 2枚のブラジャーを毎日手洗いしながら回している。自分の身体を見ると、いまだに色素沈着もあるし、お腹も真っ平らには程遠いし、脚も太いのだけれど、たまに下着姿や全裸姿を鏡で見ては「あれ、美しいのでは???」と思えるようになった。

今の私には、減量できたという成功体験があり、目標を達成して自分の思う姿になることができる、という感覚がある。今の自分の身体は自分らしいもので、自分のよさを保ったまま、より美しくなりたいと思うことができるようになった。自分と美しさというものが、関係のないものではないことと思えるようになった。その実感は、自分とかけ離れた「少女のような華奢な身体」を希求するよりも、自分を確実に前へ進めてくれるように思う。

本記事は、はてなブログに投稿した「10kgやせたら育乳に目覚めた」をnote用に再構成したものでした。

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