地獄でなぜ悪い。

好きな脚本家の1人、坂元裕二さんが手がけたドラマ『カルテット』が始まりました。

まだ初回なので、物語の形が少しずつ見えてきたばかりだけど、キャストよし、会話も展開も坂元裕二らしさ満載で、これから楽しめそうです。

僕の好きな坂元裕二作品は、『最高の離婚』『それでも、生きてゆく』『問題のあるレストラン』なのですが、どれも軽快な会話が繰り広げられる一方で、テーマは重くて暗くて、そこがいいです。

作品が持つこの暗さはきっと、坂元さんの経歴から来ているのではないかと思っていて、wikipediaでの略歴を見てみると、

1987年、第1回フジテレビヤングシナリオ大賞を19歳で受賞しデビュー。

1991年、『東京ラブストーリー』が大ヒットし、「月曜日の夜9時は街から女性たちが消えた」と言われるほどの社会現象となる。

2008年、『わたしたちの教科書』により、第26回向田邦子賞受賞。

1991年に23歳で『東京ラブストーリー』を書いてから、次に出てくるのが40歳で書いた『私たちの教科書』。実に17年間も空いています。

きっとこの17年間に、たくさんの脚本を書きながらも、あまりうまくいかなくて地獄を見るような辛い経験もして、そこから戻ってきて、今の作風に行き着いたのかなあと考えているとすごく心が惹かれます。

思えば昔から、心を惹かれるのは何故か地獄を見てきた系の人々で、高校生の時のヒーローだった山瀬功治というサッカー選手は、両足の靭帯を断裂していたし、大学生の頃に憧れていたイギリスのバンドマンはドラッグ中毒でどうにもならない状態でした。社会人はじめたての頃に憧れたTUGBOATの岡康道さんは、借金取りに追われる学生生活と全く合わない営業マン生活で大変な苦労していました。

我ながら暗い、と思いながら、彼らだからこそできるプレーや、作れる作品は今触れても、やっぱりとても魅力的に感じます。

地獄は、見ないに越したことはないけど、地獄を見たからこそ、手に入れるものもきっとあるのかもしれません。それは多分限界を知ったからこそ自分が持っているもので戦おうという開き直りと、周りに対しての優しさのようなものな気がします。

ともあれ、これから、毎週火曜の夜が楽しみです。

Twitter(@konishi36)もやっています。

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