データで見るバーチャルYoutuber-”四天王”の過去と現在

はじめに

バーチャルYoutuberという言葉は、キズナアイが2016年12月1日にはじめて投稿した動画「【自己紹介】はじめまして!キズナアイですლ(´ڡ`ლ)」から生まれた。

その後、電脳少女シロが2017年8月、ミライアカリが10月、バーチャル狐娘Youtuberおじさんことねこますが同年11月に、輝夜月が12月に活動を開始する。バーチャルYoutuber黎明期において先導的な役割を果たした彼女らは、自然と「バーチャルYouTuber四天王」と呼ばれることになる。

時の流れは速いもので、彼女らが活動を開始してから早くも2年近くが経過している。今回の記事の目的は、データ解析によって彼女らの辿った軌跡を再確認することである。

データの収集方法

Youtube Data APIを使用し、各Youtubeチャンネル(A.I.Channel, A.I.Games, Siro Channel, Mirai Akari Project, Kaguya Runa Official, (旧)けもみみおーこく国営放送)の全ての投稿動画のタイトル、視聴回数、高/低評価数、コメント数、動画の長さ等を収集した。

また、けもみみおーこく国営放送は現在はバーチャル番組チャンネルと名前が変更されているが、当時の動画はそのまま残っている。そのため、初投稿動画から、実質的な引退動画である「重大発表!【036】」までのデータを収集対象とした。

解析結果

動画投稿頻度

 今回の解析のために収集した動画の総数は、A.I.Channelが727本, A.I.Gamesが622本, Siro Channelが882本, Mirai Akari Projectが233本, Kaguya Runa Officialが96本, そして(旧)けもみみおーこく国営放送で70本であった。

ダウンロード (21)

 動画総数を各配信者の活動期間(初投稿~現在or引退まで)で割ることで、1日当たりの投稿数を求めた。最も投稿頻度が高いのはキズナアイで、A.I.ChannnelとA.I.Gamesを合算するとおよそ1.5本/日、2日に3本のペースで動画を投稿している。続く電脳少女シロはほぼ1日1本、ミライアカリは3日に1本、輝夜月はおよそ1週間に1本のペースで動画を投稿している。

視聴回数

以上のように、今回解析対象となるサンプル数は非常に多く、動画の総数は2605本である。このデータから、例えば、視聴回数を図示しようとすると以下のようになる。

ダウンロード (22)

各プロットがそれぞれの動画に対応し、横軸が投稿日時、縦軸が視聴回数を表している。2018年1月付近で視聴回数に大きな変化があるように見えるのは、2018年1月30日にYoutubeのアップデートが行われ、視聴回数の検証システムが改良されたためである。

正直、この図は複雑すぎて傾向も何もわからない。そこで、初投稿日から7日区切りで領域を分け、その期間に投稿された動画の平均視聴回数を実線としてプロットすることにする。

ダウンロード (23)

これで各配信者の視聴回数の推移が何となくわかるようになった。

一目見てわかるのは、2018年以降、全体的に視聴回数は減少する傾向にあるということである。

ミライアカリ輝夜月は活動開始以降、2019年10月現在でも視聴回数は減少トレンドにある一方で、電脳少女シロは2019年からは下げ止まりに達しているようにも見える。これら他の配信者と比較すると、キズナアイは2017~2019前半までを通して比較的安定しているように見えるが、最近は特にA.I.Gamesで視聴回数が大きく減少している。

高評価数

次に、各配信者の動画の高評価数の推移を以下に示す。

ダウンロード (24)

先ほどのグラフと比較すると、高評価数は視聴回数とほぼ同じような変化をしていることがわかる。
四天王の中で唯一の例外は電脳少女シロで、視聴回数は2018年から減少傾向にあるにも関わらず、高評価の数はほぼ一定で推移している。

低評価数

次は低評価数を見てみよう。

ダウンロード (25)

面白いことに、低評価数の推移も基本的には視聴者数の推移と類似している。

さらに注目すべきは電脳少女シロであり、先ほどの高評価数とは異なり、低評価数は視聴回数と同様に減少している。以上の結果は、1年以上の長い期間をかけて、高評価ボタンを押すような熱意の高い視聴者が厳選されてきたことを示唆している。

高評価/低評価と視聴回数の比較

以上のように、高評価/低評価数と視聴回数には相関があることが明らかとなった。そこで、視聴回数に対する評価数の割合を調べることにする。

まずは、高評価数/視聴回数の割合を以下に示す。

ダウンロード (26)

すると、視聴者数に対する高評価の数は全体的に増加する傾向にあることが明らかとなった。この結果から、電脳少女シロだけでなく、すべての四天王の(そしておそらくは他のバーチャルYoutuberも)動画において、視聴者の選別が行われてきたことが推測される。

2018年に入ってからバーチャルYoutuberの数が爆発的に増大し、視聴者はより多くの配信者の中から自分の見たい動画を選べるようになった。その結果各動画の視聴回数は減少したが、残った視聴者はその配信者を自ら選んだのであり、結果として熱意の高い(高評価ボタンを押す)ようなファンが集まっていったのではないだろうか。

次に、低評価数/視聴回数の割合を以下に示す。

ダウンロード (27)

全体的な傾向としては、低評価の割合はほぼ一定、もしくはやや増大していることがわかる。また、視聴回数で割ることで、大きな低評価数の増大をより明確に見て取ることができる。

例えばA.I.Channelでは、活動初期で低評価がやや高い期間があり、これはゲーム系の案件動画に起因している。また、A.I.Channelは2018年4月中旬に、ミライアカリは2018年8月初旬にそれぞれ大きな低評価を記録している。これらの動画は、どちらも実在の人物をゲストとして招いた回であることは興味深い。(もっとも、これはゲストのネット上における悪評が原因であると思われるが……)

さらにA.I.Channelは5月中旬ごろから低評価の割合が増え始め、6月下旬~7月ごろからはA.I.Gamesも巻き込んで爆発的に低評価の数が増大している。これは2019年5月25日に投稿された動画「キズナアイが4人いるって言ったら信じますか? #1 」に端を発するキズナアイの分裂に明らかに関係している。
低評価数の増大が1か月以上の長期にわたっていることから、単発的な炎上案件ではないことが見て取れる。実際、この低評価数増大は現在も続いており、いまだに収束する気配は見えない。

各配信者ごとの高評価率の比較

ダウンロード (28)

最後に、各配信者ごとの高評価率を同じ軸上に描いたグラフを上に示す。各配信者の高評価率の増大率はほぼ同じであるものの、電脳少女シロの高評価率が突出して高いことが見て取れる。

また、電脳少女シロの高評価率は、2017年の末から2018年の上半期にかけて急激に増大している。この時期は「今日こそ「プレゼントされたら困るもの」論争に決着をつけます!」やミリしら動画などが投稿された頃であり、視聴者を置いてけぼりにするぶっ飛んだ内容から「頭が為になる」といった言葉が生み出された。

視聴回数のグラフを改めて見ると、この時期の視聴回数減少は特に著しく、ここで多くの視聴者がふるいに掛けられたことは想像に難くない。

まとめ

バーチャルYoutuber四天王であるキズナアイ、電脳少女シロ、ミライアカリ、輝夜月、そしてバーチャル狐娘Youtuberおじさんことねこますの全動画の再生数、高/低評価数をYoutube Data APIを用いて収集して解析した。その結果、以下のようなことがわかった。

・2018年ごろから、すべての動画の視聴回数は減少する傾向にある。これは、バーチャルYoutuberの爆発的な増加(こちらによればおよそ1000人/月)によるパイの奪い合いが原因であると考えられる。

・一方、視聴回数に対する高評価の割合はすべての配信者で増大する傾向にあり、それぞれの配信者に合わせた視聴者の選別が行われていることが予想される。

・この選別の割合は電脳少女シロのチャンネルで特に顕著である。特に2017年末~2018年において視聴回数の大きな減少と高評価率の大きな増大が確認され、この時期に視聴者がふるい分けられたことが示唆される。

この記事を書いた感想

Youtube Data APIで遊んでみたいな~と思っていろいろやってたらなんか面白くなってきて記事にしました。何せバーチャルYoutuberは動画本数が多いので、いっぱい解析できて楽しかったです。

一応動画コメントも収集していて、言語の種類から視聴者の国籍分布だったり、内容から極性分析(ポジティブなコメントかどうか)を判別したりもやってみたかったんですが、なかなかうまくいかなかったので今後の課題です。

次はにじさんじ、ホロライブをはじめとした生放送主体の配信者をメインに解析してみたいと思います。気が向いたら。

konkon



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?