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「動員の少ないバンドはライブするのを止めてもらえないだろうか」について思うこと――提案はどこまでも建設的でありたい

いま物議を醸している、海保さんの以下の記事について思ったことを書きます。

1.動員の少ないバンドはライブするのを止めてもらえないだろうか

2.謝罪と反論(動員がないならライブ止めろ記事について)

詳細は省きますが、1の記事から2の記事が出るまでのあれこれ、2の記事が出てからのあれこれを見ていました。そのなかで思ったのは、状況を好転させる力は「建設的な提案にこだわる姿勢」によって生まれるんじゃないかということです。

淘汰を要さない方法を追求したい

今回の記事で書かれていた内容は、
チケットノルマ分を動員できないバンドが一斉にライブハウスの出演を止めればライブハウスの生き残り合戦が起こり、ライブハウスの淘汰・サービスレベルの底上げが起こる。また、出演枠が減ることによって必然的にレベルの高いバンドのみが出演できるような環境が生まれ、伴ってチケットノルマ制も必要なくなる。

と言ったものだと思いますが、僕はライブハウスの環境改善を実現するための手段は淘汰を要さないものを追求したい。

確かに、僕も日ごろライブハウスに行くなかで不便を感じたり、スタッフの対応で嫌な思いをしたり、「これ音源も聴かず手当たり次第で連絡して来たよね?」と思いたくなる出演依頼メールをもらったりした経験はあります。「これはさすがにステージに上がっちゃいけないだろう」といった具合のライブを観たこともあります。バンド側にノルマを押しつけてしまえばなんとか経営が成り立つという仕組みが怠慢につながっている側面はあると思います。

ただ、筆者は仕事柄、キャパ300以下のライブハウスに足を運ぶ機会は比較的多い方だと思っていますが、上記のような経験をする頻度はそこまで高くない実感があり、どちらかと言うと楽しんでいる側なので、ライブハウスが腐っているとは思っていません。

また、「ライブハウスが1件潰れる」というのは、積み重ねられてきた歴史が終わるということであり、誰かにとっての帰る場所が失われるということでもあり、それはとても重い…できるだけ回避したい派です。

これからのライブハウスのあり方とは?

昨日、アジカンのGotchさんがSpincoasterの素晴らしい記事を紹介していました。ブッキング・イベントのノルマ制廃止を打ち出した下北沢THREEの店長・スガナミユウさんのインタビュー記事です。

スガナミユウ(下北沢Three)「超理想的で、超現実的で、超能動的で、超フレッシュ」――新たなステートメントと革新的なプランを掲げた下北沢THREEの仕組みと哲学

引用したい箇所たくさんあったんですが長くなってしまうので2つだけ。

【引用】
THREEは平日はほどんど粗利がないんです。なので土日が唯一の稼ぎ時なんですが、うちの場合土日は、昼のデイ・タイム、夕方のライブ・タイム、深夜のクラブ・タイムがあって、最大1日に3つのイベントを行うことがあります。こういう風にイベントの数を増やすことで、それぞれに対して料金の条件を下げることができるんです。人件費は別として1日に稼がないといけない金額を割っていけるわけだから。
【引用2】
人がいつでも出入りしやすい状況を作ることが重要だと思っていて、平日深夜に居酒屋/深夜定食屋の”スタンドかげん”に入ってもらっているのもそのためです。持ち込みイベントばかりだと、THREEのカラーというものはどうしても薄れていってしまうから、それを防ぐためにも一日のどこかにTHREEのカラーを出せるような場所を確保するようにしています。行きつけの飲み屋みたいに、毎日フラッと来ちゃうような場所にしたいんです。

この記事にはライブハウスのビジネスモデルを変えるヒントが沢山詰まっていると思います。一番ヒントになりそうだと思ったのは「ウチはこういう考え方をもった店です」という明確なステートメントとともに魅力的なプラン(提案)を多数打ち出していること

THREEのサイトから引用

どれも主催側のニーズを汲み取って練られているプランだと感じました。魅力的なプランは持ち込みイベントの比率が上げ、それによって1本1本のイベントが内容の濃いものとなり、イベント本数の増加に伴ってハコの収益的にも折り合いがつく。

あともう1つ、平日深夜に居酒屋/深夜定食屋を入れたり、毎週金曜日にフリーパーティーを催しているのも凄い。
これは、ハコのカラーが失われないようなバランサー的な役割を果たしつつ、お客さんがふらっと立ち寄ってくれるような場所づくりにも寄与している。これはつまり「ライブハウス集客しろ問題」に対する1つの回答になりうると思います。

ここまで書いていて思いましたが、こうした取り組みって2毛作みたいだなと。ライブハウスがそれぞれのハコの特徴に合わせて2毛作、3毛作を模索するというのは収益的な問題を改善するうえでもアリかも。

(そう言えば、数年前に月見ル君想フで行われた結婚式の2次会に参加したことあったなぁとか、取材元のSpincoasterもスペースマーケットでbarの時間貸ししていたなぁ(募集ページが超丁寧だし実際にお客さんの評判も良くて最高)とか、いろいろ思い出してきた。)

「ライブハウスがライブハウスという業態にとらわれないやり方」というのはこれまでいろんなお店が実践してきたことだと思うのですが、この取り組みの成否を決めるのはステートメントなんだなと、どういう想いを背景にプランを打ち出すかで決まるんだなというのを、THREEのインタビュー記事を読んで思いました。


とっ散らかってしまったのでこの辺で終わりますが、僕は犠牲のうえに成り立つ提案は可能な限り回避したいし、誰かを傷つけることのない建設的な議論によって問題を解決したいというスタンスを崩したくない、崩したくなっても崩してはいけないなと思いました。

最後にもう1度リンク貼ってブログを終えようと思います。
本当に良い記事なのでこの記事を読んだ方は読んでみてください!

スガナミユウ(下北沢Three)「超理想的で、超現実的で、超能動的で、超フレッシュ」――新たなステートメントと革新的なプランを掲げた下北沢THREEの仕組みと哲学

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