『空想科学読本』の新刊は、もう3年も出ていない。

いちばん初めの『空想科学読本』は、1996年に宝島社から刊行した。
都内いくつかの書店でテスト販売したところ、客に売る前に書店員が買ってしまうなど、予想外に好調で、営業部は「この本をベストセラーにする」と言い切った。僕は「ベストセラーって、決めたら実現できんの?」と笑っていたのだが、彼らは強気の重版を繰り返して、本当に60万部を超えるベストセラーにしてしまった。あれには驚いた。

1998年に僕は宝島社を辞め、半年ほどメディアワークスという出版社に身を置いて、その後メディアファクトリーに転職した。『空想科学読本』の3巻目以降は、ここからの刊行となる。
『空想科学読本3』のときは柳田や営業の担当者といっしょに全国の書店をまわり、『5』のときは既刊4冊も新装版にして同時刊行し、『6』のときは『6.5』という番外編(厚さも定価も半分)といっしょに出し……と、お祭り騒ぎのようなことをしていた。この頃の刊行ペースはきわめて不規則で、せいぜい2年に1回。ひどいときは4年も出さなかった。そんな調子だから、新刊を出すときには、本屋さんに思い出してもらえるようなことをしなければ……と思っていたのだ。

2010年の『8』あたりから、重版がかかりづらくなった。
それまでは「できるだけ売り伸ばす」を目標としていたのが、「なんとか売り切る」に変わった。こうなると初刷の部数決めは慎重になり、新刊のたびに部数は減っていく。
僕なりに試行錯誤して、たとえば『10』には「関根勤さんに柳田が講義をする」というDVDをつけたりもした。が、なんとその発売日に東日本大震災が起こり、当然ながら売れは苦戦した。
その後も部数はゆっくり確実に減っていって、2016年に刊行した『17』は、初刷3万部。そして、これ以来『空想科学読本』は出ていない。

新刊を出していないのは、『ジュニア空想科学読本』など子ども向けの本に注力しているから。かつて『空想科学読本』の刊行ペースが不安定だったことを反省して、『ジュニ空』は年に3冊ずつ出しており、さらに『ポケモン空想科学読本』などもあって、もう手いっぱいなのだ。
聞かれるとそう答えることにしているのだが、本当はそれだけではない。
『ジュニ空』は、書店の児童書のコーナーでしっかり棚を確保できているのに対して、『空想科学読本』の棚はない。新刊を出しても、どこに置かれるかハッキリしないため、たちまち返本されてしまう。
出版社にとっては「発売直後は売上が立つ商品」だから、年度末になると「数字が足りないんです。新刊出してください」と言われることもある。だが、刊行の2ヵ月後くらいからは、延々と返本が続いて「困った本」扱いされていく。

いつの間にか『空想科学読本』はそういう本になってしまった。それが不憫で、僕は続巻を作れない。結果、新刊が出ないまま、もう3年も経ってしまった。
児童文庫の『ジュニ空』だけでは、大学生とか社会人の読者には届かず、すごく残念だ。昔からの読者に新刊を提供できないのも、本当に申し訳ない。
それも気になって仕方がないのだが、まだ『空想科学読本18』に向けて動き出す気配はない。

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近藤隆史[空想科学研究所 所長]

空想科学研究所は、マンガやアニメから昔話まで「人間の想像力」を科学的に検証しています。 所長は近藤隆史、主任研究員は柳田理科雄。最近は『ジュニア空想科学読本』などが小学生のあいだで小ブームに…!  ここでは、空想科学研究所の現状や、悩みや、希望などを、所長が綴っていきます。
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