「幼児教育の無償化」のはなし①「幼児教育をおこなう施設」ってなに?

text by このゑ@moriyasu

MC4が終わりGP千葉2019(8/2,3,4)直前の公開(7/30)ですが今回、マジックと全く関係ない記事です。

マジックとは関係ないですが、関係あるマジック・プレイヤーの方は多いと思いますので、こちらで書くことにしました。

今年の10月から「幼児教育の無償化が開始」のニュース・アナウンスを聞いたことがある人、多いと思います。今年の5月に最終可決された施策で、可決以降凄まじい勢いで整備され各方面、実施に向けて動いています。

「子育て世代」のマジック・プレイヤーが増えつつあるいま、自分のこととして、あるいは将来のこととして、友人のためのこととして、覚えておいて損はない話だと思います。

(「子育て世代」とマジック・プレイヤーの相関性についてはシミチンさんのnote記事がとても分かりやすく、温かみのある内容です。)


今回、出来るだけ「幼児に関する保育や教育について、なんの知識もない」という方にも分かるように制度の説明をしていきたいと思います。

筆者は企業主導型保育事業(後述)の保育園運営をしています。経営者・園長・保育士として子どもたちや子育て世代の保護者に携わっています。  


①「幼児教育をおこなう施設」ってなに?


そもそも「幼児教育の無償化」というワード。無償化=タダになることというのは分かりやすいけど、「幼児教育」って、この場合なんのことを言い表してるの?と思わないでしょうか。初めて聞いたとき、僕は思いました。
(児童福祉法や学校教育法における用語としての理解とは別にした場合、「幼児教育」という言葉が一般に持つ意味合いはあまりに広すぎます。)

今回の施策では、「幼児教育の無償化」というのは「行政が認める"幼児教育をおこなう施設"の"基本利用料金"を行政が負担する」という意味合いで使用されています。

さらにこの「幼児教育をおこなう施設」は以下のように定められています。
「認可保育所」「幼稚園」「認定こども園」「認可外保育施設として届け出を出している施設」の4種類です。

※先に言うと、「現存する"幼児教育をおこなっている施設"」のなかで施策の対象から漏れた施設があります。「認可保育所でもなく、認可外保育施設として届け出も出していない施設」は届け出していない事情がどのようなものであるかに関わらず、現地点では対象に含まれないことになります。

まずは各施設の簡単な特徴や用語について、順を追って説明しましょう。

▼認可保育所とは

『厚生労働省』が管轄し、『市区町村が利用者の入退所を決定する』、『国が定めた基準を満たす児童福祉施設』であるところの保育所のことです。

※通常、厚生労働省が関与・発行する書類で「保育園」「保育所」とのみ記載されている施設は全て「認可保育所」を意味します。

保育時間(利用時間)は保護者の状況によって「8時間」「11時間」「13時間」「就労時間に合わせての利用」などがあります。

5歳児クラスまで預かるところが多いですが、0歳児クラスの受け入れは設定している園としていない園があります。

いわゆる大人数を受け入れることを前提にした「認可保育所」の他、「小規模認可保育所」「事業所内保育所」「家庭的保育事業」と呼ばれる施設も、認可を受けています。

 ■『市区町村が利用者の入退所を決定する』とは

認可保育所の利用希望者はまず「利用予定の児童が保育所を利用する必要がある」ことを市区町村に申し出る必要があります。必要書類を提出し、審査を受け合格することで「その子は保育所を利用する必要があると市区町村が認めた」ことを意味する「保育認定」を受けます。審査内容は主に就労時間証明の報告や保護者がかかる疾病の確認などです。

「保育認定を受けた子」の保護者は希望する認可保育所と利用希望時間を行政に伝え、あらためて優先度(点数)を審査することでその園への入園・利用時間・利用期間が決定されます。

 ※就労状況やかかる疾病の内容により、保護者の求める保育認定内容が受けられないことがあります。
 ※入園にあたって優先度による審査のため、「優先度が低い」と判断されている場合は希望園に入園できない場合・希望時間の利用ができない場合があります。

※先般、SNSやニュースなどで話題に挙がる「保育園入園活動」通称「保活」は「優先度を行政に高く評価してもらう」ために「生活環境を変える」ことを主に意味します。(一例として、転居や転職などです。)

 ■小規模認可保育所とは

「総定員6人以上かつ19人以下」であり、独自の認可基準を満たして運営している施設です。単に「小規模保育所」と呼ばれることもありますが、後述する19人以下定員の認可外保育施設や事業所内保育所、家庭的保育事業に対しても俗称として使われることがあります。
 
 ※「小規模」と「大規模」はどちらもその性質が子どもに与える影響は大きく、どちらが一概に良いというものではありません。

家庭環境や園児の状況によって、より相応しいと思われる施設を的確・適切に利用することが最も望ましいです。
 
 ■事業所内保育所とは

特定の会社」が「自社の従業員の子どもと地域の子ども」のために開所・運営している、独自の認可基準を満たした施設です。従業員の子どもと地域の子どもの預かり比率なども既定されています。

会社の規模等によって保育所自体の規模にも幅があるので小規模~大規模まで様々です。
後述する「企業主導型保育事業」による保育施設とは特性上、類似する部分があります。

 ■家庭的保育事業とは

地域によって家庭福祉員、保育ママとも呼ばれます。自治体から業務受託を受けた特定の個人が、独自の基準を満たす居宅などを利用して地域の子どもをごく少数(5人以下)保育する施設です。利用にあたっては事情があり通常の認可保育園に入所できないことも要件になります。

 ※「小規模認可保育所」で説明したように同時利用者数としての定員の大小は子どもごとに受ける影響が大きく、どの定員数が最も良いというものではありません。

~歳児クラスとは

乳幼児を預かる施設特有の表現です。保育施設は利用定員が年齢ごとに定められています。これは誕生日でみる「満年齢」制ではなく、年度でみる「学年」制です。「1歳児クラス」は「昨年度のうちに1歳の誕生日を迎えた園児」が所属します。「0歳児クラス」については「当年度生まれが年度途中に入園する場合」もあります。

幼稚園における「年少」は「3歳児クラス」、「年中」は「4歳児クラス」、「年長」は「5歳児クラス」と同じ意味です。「満3歳児クラス」として「当年度、満3歳児になった園児が年度途中に加入するクラス」を特別に設定している幼稚園もあります。

幼稚園とは

『文部科学省』が管轄する『国が定めた基準を満たす学校』であるところの幼稚園のことです。小学校前の3~5歳児クラスをあずかる教育機関です。
利用者の入退学は行政(市区町村)がおこなう場合と施設が直接行う場合があります。

入園にあたっては直接施設と保護者、利用予定児が面談を行い、独自の審査などを経て決定されます。

授業時間は小学校低学年より短いことが多く、午前8~9時ころから始業し、午後2~3時ころには終業します。夏休みや冬休みなど学校としての長期休暇があります。

※通常、文部科学省が関与・発行する書類で「幼稚園」とのみ記載される施設は全てこの要件を満たす「幼稚園」を意味します。(え?と思う文章ですが、「幼稚園類似施設」「認定こども園」の項目にて補足します。)

認定こども園とは

幼保連携型認定こども園』という正式名です。幼稚園と保育園両方の機能を持つ『児童福祉施設および学校としての位置づけをもつ施設』のことです。単に「こども園」とのみ記載される場合もありますが、比較的新しい施設なので「幼保連携こども園」「認定こども園」などの記載であることも多いです。(2014年施策開始)

幼稚園機能を中心にする施設は幼稚園同様、3歳児からの利用であることも多いですが、保育園機能を中心にする施設では0歳児から受けれいているところもあります。

保育園機能を持つので利用にあたっては保育認定を受けるなど保育園に準じた条件の他、幼稚園機能として面談なども含まれます。

一般に「始業から2~3時ころまで幼稚園機能としての授業を行い、それ以降、保護者のお迎えまで保育園機能として保育を行う。」というような形がとられます。夏休みや冬休みなどの長期休暇中は、幼稚園機能部分のみが休みで保護者の就労等に合わせて保育園機能部分のみが開所しています。

「認可外保育施設として届け出を出している施設」とは

(少し丁寧に説明をします。)
上記「認可保育園」「認定こども園」以外にも、保護者の希望に応じて保育や育児のサポートを提供する施設があります。現在代表的なものは地方自治体独自の基準を満たす「認証保育園」や、(厚生労働省ではなく)内閣府が制度を管理する「企業主導型保育事業」などです。

これらは「認可保育所」としての届け出・承認はされていません。ただし「認可でない」理由は根拠となる法や制度、管理団体が異なるためで、安全基準や保育方針などが不足・欠落しているというものではありません。地方自治体はこうした団体に「認可外保育施設」という形での設置届出を提出することを推奨しています。

名称から勘違いされやすい点ですが、「届出を提出している認可外保育施設」も、自治体が定める「認可外保育施設としての基準」を持ちます。届出を提出した施設は一定期間ごとに地方自治体による監査などを受け、一定の基準が満たされているかどうかが確認されます。具体的には安全基準の他、保育所保育指針の遵守や人員配置基準などがあります。

※基準が満たされていない項目については危険度などに応じて公表や処罰などがあります。

 ■認証保育園とは

 現状、東京都の独自施策です。いわゆる大都市を中心に設置されている独自基準の保育施設です。認可と顕著に異なる点は、利用者は施設と直接契約を行い利用します。
施設ごとに大規模・0~5歳児クラス(20~120名)の「A型」、小中規模・0~2歳児クラス(定員6~29名)の「B型」に分類されています。どちらも原則13時間(以上)開所しています。

「認可保育所」が持つ「従来の基準」だけでは補完しきれない都市特有のニーズ(待機児童の増加や保護者の変則的な就労時間など)に対応するために施策された施設で、認可保育所基準から緩和されている基準項目と、より細密に設定されている基準項目とに分かれています。総合的に「認可保育所」と同程度の安全基準を有しています。

 ■企業主導型保育事業とは

 内閣府が主管する保育施設です。2017年施策開始であり、他施設と比べても新しい制度です。特定の会社が運営しています。利用者が施設と直接契約をおこなう場合と、利用者が働く会社(法人格)が保育施設と契約をおこなうことで利用できる場合があります。認可保育所だけでは補完しきれない「地域ごと」「会社ごと」のニーズに対応するために施策された施設で、認証保育園同様、認可保育所の基準と比べて緩和されている部分とより細密に定められている項目とに分かれています。総合的に「認可保育所」と同程度の安全基準を有しています。

 ※施設として認可施設の「事業所内保育所」が近しい性質を持ちます。最も顕著な差異は「直接契約であるかどうか」、「企業主導型はその保育所を運営する法人と契約を結んだ法人の従業員の子どもも、"従業員の子ども"として利用できる」点です。(この2点は法人の性質・施設の特性によって評価に幅が出るべき点です。どちらの方がより良い、という話でありません。)

開所時間や利用年齢などの対象、利用料金設定は施設ごとに異なります。
 
 ■その他の「認可外保育施設」届出を提出している保育施設とは

 説明が前後しますが、「認可外保育施設の届出」自体は「定期的に子どもを預かるサービスの提供」をおこなう全ての施設に対し、提供するように自治体は推奨しています。

例えば塾やデパート内に設置され、一時的に未就学児を預かる「託児所」やコワーキングスペースなどに併設される「キッズスペース」などです。

 「認可外保育施設として届け出を出している施設」として基準の遵守などがされている施設のことを意味します。認可保育所と比較すると確認項目数は少ないですが、対象年齢や利用想定時間などに応じて省略されている項目もあり、必ずしも「届け出されていない施設」「安全が確認されていない施設」ではありません。

「認可外保育施設」届出を提出していない保育施設とは

 今回、「幼児教育の無償化」という施策にあたって範囲外とされた施設です。「認可外保育施設の設置届出」はその施設特性によって「保育施設の要件を満たさない為に提出していない(できない)施設」があります。

最も代表的なものは「幼稚園類似施設」です。

 ■幼稚園類似施設とは

 「保育施設」としての機能を持たず、「幼稚園」のように授業をする施設であり、「幼稚園」としての「国が定めた基準」を満たさない・あるいは基準から外れている運営を行う施設のことをこう呼びます。

スポーツや独自の教育内容に力を入れた個性的な方針を持つ施設」などが該当することが多いです。保護者もそうした個性を受け入れ希望した上で入園希望を出すという構造です。

※「認可外幼稚園」と呼ぶ場合もありますが、「幼稚園」を「認可幼稚園」と呼ぶことは現在、一般的ではありません。また児童福祉としての保育所機能を持たない施設は「保育施設」ではないので「認可外保育施設」とも呼ばれません。

まとめ

無償化の対象となる「幼稚園」「保育所」「こども園」「認可外保育施設」の4種類。そして「幼稚園類似施設」。

今回は大きくこの5つの施設性質について、なんとなく理解していただければと思います。

「保育」ってなんなの?「教育」ってなんなの?利用料金はどう違うの?お金は払って後から返してもらう形なの?払わない形なの?3歳までは家で育てた方が良いの?結局ウチはどの施設を利用するのがベストなの?で、はいれるの?

その他にも色々な疑問があると思いますが、順番に説明してゆければと思います。子育ても楽しく、マジックも楽しく、仕事も楽しく。きっと「自分にとってのベストな選択」は取れると思います。

ここが疑問!みたいな話があれば、ツイッターの方で連絡いただければ補足できると思います。ご意見、ご感想よろしくお願いします。

twitter(@konoe_moriyasu)


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