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ドラキチ合宿記事『基本セット2020ドラフト』編

text by このゑ@moriyasu

『基本セット2020(以降、M20)』ドラフトは8月に行われるグランプリ・千葉2019と、9月に行われる日本選手権2019の開催フォーマットです。

(グランプリ・千葉2019はシールド混合、日本選手権はスタンダード混合です。)

 もちろんどちらもテーブルトップ・ドラフト(8人で卓を囲んでピックを行い、対戦もその8人のなかから選ばれる従来のブースター・ドラフト)ということもあり、『MTGアリーナ』のAIドラフト(AIを相手にピックを行い、ランダムな相手と対戦するドラフト)とはまた別のピック観・ゲーム観・ドラフト観が必要になってくると思います。

 BIGsの河浜貴和さん主催、そしてBIG MAGICのサポートによって開催される「ドラキチ合宿」ではテーブルトップ・ドラフトの実践練習として『基本セット2020』・プレリリース週の7月6日7日、発売日週の7月13日14日、祝日の15日の計5日間にて泊りをふくむ合宿を行いました。

総参加者は約30人、5日間での成立ドラフト卓数は33卓となりました。

(他にも6人チームドラフトやシールド練習を挟んで、M20リミテッド全体の理解向上につとめています。)

この33卓のドラフト記録から見える傾向について、今回も記事の形でみなさんにお伝えしていきます。また今回、これまでより原本(基本)とするデータの掲載種類を増やしました。

これまでは『戦績(3勝~0勝)ソートしたデッキ』を基本にしてきましたが、今回はそれとは別に「どのデッキと対戦したのか」の勝敗一覧も用意しました。この一覧を読み解くことによって「どのデッキタイプや色は他のどのデッキタイプや色に対して勝ちこしているのか、負けているのか」など、これまでお伝え出来ていなかった視点もお伝えできるようになりました。

最後には「3勝デッキ」の写真もいくつか掲載しています。デッキタイプ別かつ「レアリティの低いカードで多くが構成されている」ことで、あるていど再現性の確保できそうなものを選んでいます。


『前提』

カードギャラリー

 基本セット2020に帰属する全カードが掲載されています。環境を把握する上でプールを覚えることは最初に行いましょう。

また久しぶりに再録されたキーワード能力であるプロテクションは挙動が独特なシーンがいくつかあります。呪禁と類似の能力と考えていると見落としがちなテクニックなどもいくつかあるので、挙動を間違いなく把握できるようにしておきましょう。

(一例:《神々の思し召し》によって、既にエンチャントされている《平和な心》や《金縛り》を剥がす。《小走り犬》で敵クリーチャーの色を変え、プロテクション持ちのクリーチャーの攻撃を通す・死なないブロッカーにするなど)

数枚の有色アーティファクトも見慣れない人はアーティファクトであることを見落としやすいかもしれません。(《聖域の門》など)

※注:カードギャラリーには構築済みセット専用収録のため通常パックからは排出されないカードも含まれています。それぞれ構築済み専用プレインズ・ウォーカーカード(《鼓舞する指導者、アジャニ》《天界の風、ムー・ヤンリン》《吸血鬼の王、ソリン》《炎の憤怒、チャンドラ》《自然の報復者、ビビアン》)以降が「番外カード」として、通常パックのリミテッドでは存在しないカードです。

 また今回、土地枠が少々独特です。「コモンの2色土地」「《進化する未開地》」「基本土地」のいずれかが、いわゆる「基本土地枠」から出ます。他の人と枚数がズレてしまうので練習のときにパックからむいた基本土地は取り除かないようにしましょう。(レアの特殊地形はレア枠から出ます。)

BIGs 河浜貴和 今夜勝ちたい『基本セット2020』プレリリース

 こちらはいつもの河浜さんによるチートシート。プレリリース・シールド向けのためゲーム観などはドラフトと異なるところもありますが、カードプールは共有なので基本となるマナレシオ(スタッツ)などはドラフトにおいても変わらず、「覚え得」なので必ず意識できるようにしておきましょう。

・表1『デッキ別:成績』

 対戦決めの方法は簡易スイスです。[表1-1]は3-0から0-3までの勝利順・勝利数順(〇〇〇,〇〇×、〇×〇、×〇〇、〇××、×〇×、××〇、×××)でソートしたデッキカラー別の一覧表です。

色表記について。
①エクセルデータの色はWUBRG,タッチカラーがwubrg表記です。
②エクセルデータの項目を示す文ではW(白)U(青)B(黒)R(赤)G(緑)併記です。
③まとめなど本文のみの文章では白青黒赤緑表記です。

[表1-1]

この[表1-1]を中心にどんなことが分かるか、読み解いていきましょう。

まずデッキを「メインカラー2色の組み合わせ」となる10種類に分類しました。

※「3色均等」や「2色タッチ3色」「ほぼ単色」などのイレギュラーもいずれかに分類しています。

10デッキの勝利数の割合と使用合計数をまとめたものが[表1-2]です。

[表1-2 合計・降順]

[表1-2 合計]

まず合計(使用者数)の項目から見ていきましょう。最多はRG(赤緑)、GU(緑青)の緑系が並びました。ゲーム観レベルの話としてはRG(赤緑)は《這い絡む火跡》による【赤緑エレメンタル】、GU(青緑)は《発現する浅瀬》による【青緑エレメンタル】と、《不屈の巡礼者、ゴロス》などによる【緑多色】がデッキとして成立しています。

同じく緑絡みのGW(緑白),GB(緑黒)の使用率は下位のため、緑の人気というよりも青・赤・緑の3色をまたいだサイクルである【エレメンタル】要素の人気が高いことが分かります。

使用者数第2グループはUW(青白),UR(青赤),WB(白黒),RB(赤黒)です。

このうちUR(青赤)は《稲妻の嵐族》を含む【青赤エレメンタル】デッキが多く、エレメンタル・サイクルの人気はどの2色の組み合わせパターンでも人気です。

 UW(青白)に関しては元々【青白フライヤー】というのはリミテッドでは安定して人気のあるデッキタイプですが、今回も《天穹の鷲》というロードを得て、安定した人気を誇っています。

 ここまで緑か青絡みのデッキが上位を占めていましたが、つづくWB(白黒),RB(赤黒)が初の黒絡みのデッキです。今回、黒はスタンダード・パックとしては『基本セット2013』ぶりにコモン収録された《殺害》をはじめとして優秀な除去カードを豊富にそろえたことで人気を誇っています。

WB(白黒)は《血に飢えた曲芸師》が強い【白黒ライフゲイン】、RB(赤黒)では損失の少ないトークン系を生け贄に捧げて強力なスペル・能力を多用する【赤黒サクリファイス】はアーキタイプの完成時に強く、好まれています。

 そこからは下位グループに属します。BU(黒青)とGW(緑白)の少なさはカードの弱さによるものというよりもBU(青緑)やGW(緑白)での強いカード(《鉄根の大将軍/Ironroot Warlord》等)がGU(緑青)軸の【緑多色】でタッチして使われていることの多さも一因の様子です。

下位2位のBG(緑黒)も同様に、ある程度が【緑多色】に強い形のパターンを吸われた形です。最下位はWR(白赤)です。WR(白赤)は明確なデッキタイプの指標がないと判断したプレイヤーが多く、【白赤トークン】や【白赤フライヤー】などのビートダウンデッキが使われましたが、競合・類型のないデッキカラーとして、最下位の使用者数です。

[表1-2 3勝数・降順]

UW(白青)が、より使用者数の多いRG(赤緑),GU(緑青)を抜いて1位となっています。

GU(緑青)からRB(赤黒)までは使用者数と3勝数に大きな差異がないようにみえますが、それらに比べて、使用者数が少ないUB(黒青)が同じ3勝数ということで若干UB(黒青)の勝率が高いです。UR(青赤)は逆に使用者数に対して3勝数が少なめです。

また、今回はGW(緑白)とWR(白赤)の2色が3勝出来ていません。

[表1-2 2勝数・降順]

2勝と1勝の項目は手短かにまとめます。3勝数と大きく変わる項目になりました。

最多のGU(緑青)の安定した成績とともに、他に特筆すべきは

UR(青赤),GW(緑白)でしょうか。

3勝の少なさに対して2勝数が抜きんでています

これは「勝ちきれなかった」回数が多いことが分かります。

[表1-2 1勝数・降順]

1勝数においては、おおむねデッキの使用者数順といえそうですが、上位2つのRG(赤緑),WB(白黒)は2勝数よりも明確に1勝数が多く、ともに1勝数の項目が一番高いことからも「安定性に欠いた戦績」であるようにみえます。

2勝数との比較では他はおおむね同数程度におさまるのに対し、GW(緑白)のみ2勝数が大きく上回っているので、「GW(緑白)は安定して2-1している」ようです。

[表1-2 0勝数・降順]

3勝の項目と同じ程度に重要な0勝数項目の降順では使用者数最多のRG(赤緑)が0勝数も最多ですが、同使用者数のGU(緑青)成績の3倍近く多い0勝なのでRG(赤緑)自体がかなり負けています。

他に特筆するところではBG(黒緑)は使用者数の少なさに対して0勝数が多く「組みにくく負けやすい」ことが浮き彫りになりました。逆に「UW(青白)は31人中1人しか0勝していない」という驚異的な勝率の高さを誇ります。

では今度はこの3-0から0-3までをまとめて「マッチ勝率」という視点で各デッキを観てみましょう。

[表1-3]


3-0であれば勝利数3、1-2であれば勝利数1,敗北数2という形で出した「マッチ勝利数とマッチ敗北数、その合計と勝/計で割り出したマッチ勝率の表」です。

マッチ勝率・降順でソートしています。

UW(青白),GU(緑青),BU(黒青),BG(黒緑)までが勝率50%を超える「勝ち越しデッキ」ということが示されました。特にUW(青白)の59%はとびぬけており、安定性の高さは圧倒的です。

UR(青赤),GW(緑白),RB(赤黒),WB(白黒),WR(白赤),RG(赤緑)が勝率50%を切る「負け越しデッキ」です。

ただUR(赤緑),GW(緑白)に関しては負け越し分が1マッチだけなので実質的にはほぼ50%です。

元々使用者数の低いWR(白赤)も低い勝率ですが、RG(赤緑)の勝率の低さは使用者数に対していえば異常にも近い数値です。RG(赤緑)が「ピック時の評価」と「ゲームの戦績」が最もひもづいていないデッキとなりました。

・表2『色別:成績』

デッキごとの勝率が出たところで、今度は見る角度を変えて「使用している色(デッキに含まれる色)」ごとに勝利数を割り出してみます([表2-1]合計・降順)。

こちらは[表1]のメインカラー2色デッキとは違い、「タッチカラー」で使用している場合もカウントしています。

[表2-1]

[表2-1 合計]

表1と同じく合計項目からの評価です。UW(青白),GU(緑青)の人気の高さからU(青)が最多となりました。2番目のR(赤)は主にタッチカラーによるところが大きいです。

優秀な火力除去の他、【緑青エレメンタル】に赤を含むエレメンタル・クリーチャーが追加される形でも採用されており、今回は普段以上に赤をタッチするというアクションが多かったようです。

W(白),B(黒),G(緑)に関してはほぼ均等で、「極端に人気のない色」などはありませんでした。

[表2-1 勝数(3勝~0勝)特記項目]

3勝数ではB(黒)が若干率が高く、0勝数はU(青)とW(白)が少ない率で収まっています。

R(赤)の0勝率も若干高めです。

[表2-2]

色ごとのマッチ勝率降順です。

U(青),W(白),B(黒)までが勝率50%を超えた「勝ち越し色」であり、G(緑),R(赤)が勝率50%未満の「負け越し色」です。W(白),B(黒),G(緑)はほぼ50%なので「青は他より勝っている、赤は他より負けている」という表になりました。

使用者数と比較すると「赤は使われやすいが負けている」ことがより顕著に浮き彫りになります。

・『表1表2まとめ』

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