《うさこ母さん》からのお手紙

近衛寮広報室の皆様

初めまして、映画版公開おめでとうございます。
4月と5月に配信で鑑賞しました。時期をみて、ぜひ映画館でもまた観たいと思っています。

自分も若い頃、寮ではありませんが、学内で猫に周りの皆んなで餌をあげたり、課題の材料に使う大量の毛糸箱の中で生まれた子猫たちの飼い主を手分けして探したりしたことを思い出しました。

我が家は今年、不本意な過ごし方であったGWに開かずの間の大掃除をしたことで、当時の猫の写真を見つけ、昔を懐かしんだり、若さや大人について考えたりする時間が生まれました。
今回は子供部屋を分け与える目的の片付けですが、その最中、もし親が説明なしに「個人部屋を作る話は撤回する」と言ったり、本人達への確認なく荷物を処分したら、きっとすごく反発するだろうなぁ、と想像しました。「大人は勝手で嘘つきだ!」と。
そして、そう思われないような大人でいたいし、誰かの物を勝手に不要だと決めてしまわない大人でいたいとも思いました。
(もちろん自分も、周りから見たら無駄な物でも、捨てられたくない物はたくさんあります。)

そして子供達が近い未来そういう場面に遭遇した時、考えたり話し合ったり過去を学んだり記録したり、自分の内から出る行動に移せる人になってほしいと「勝手」に思ったりもしました。
そのためにも多くのことを経験し見て知って聞いて感じてほしいと、これまた「勝手に」思った次第です。
とても個人的なことを長く書いてしまいました、すみません。最後まで読んでいただけたようでしたら嬉しいです。

ワンダーウォール劇場版が、多くの方に届き、何かに触れることで、たくさんの思いが広まっていくことを願っています。
演奏場面のような光景がまた現実世界で見られる日が戻って来ることも合わせて願っています。
この時期にこの作品に出会えて良かったです、ありがとうございました。

⇨✉️脚本・渡辺あやからのお返事

うさこ母ちゃんさま

こんにちは。
映画をみてくださってありがとうございます!

子供の部屋って、なかなかいろんなことを考えさせてくれるものですよね。
うちにも娘が2人いて(1人はもう独立しているのですが)、私もやつらの居住空間に近づくと、 今日まで積み上げてきた主婦としてのプライドとか掃除という概念とかが、グラグラになるので なるべく近寄らないようにしています。要するにいったんツッコミだすと終わらないバトルにまで 展開しかねないゆえに、早々に諦めて考えないようにしてる感じですね。

時々ドアを開けて覗いてみると、常にどうみてもゴミにしか思われない多種多様なものに溢れか えっているのですが、ある時期を超えると急に潮が引くようにそれらが消え去っていたりもしま す。そして代わりにまた新しい群生が生まれていたりする。なんか野原の植生の移り変わりを見て いるみたい、とも言えなくありません。私にはゴミでしかないそれらも、時季時期にはたらくあ りがたい細菌のように、彼女たちを育んでくれているのかもしれないですね。許されるものなら 一気にまとめて捨ててやるのにな!といつも思っているけれど、感謝した方がいいのかもしれな いです。

うさこ母ちゃんさんの(勝手に)と前置きをされるその理性を素敵だなあと思いました。そんなお母さんに見守られて育つお子さんたちの幸せが、私も(勝手に)嬉しかったです!

                                             渡辺あや