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神さまも湯浴みをした扉温泉「明神館」Vol.1

#泊まってよかった宿

天岩戸の「扉」を神さまが忘れていった理由


松本駅からタクシーで約30分。
渓流の水音の絶えない山懐に、扉温泉郷があります。
温泉郷、といっても、今も運営している宿は数えるほどしか残っていません。
明神館は、そんな数少ない温泉宿の一つ。
創業は1931年(昭和6年)というから、2022年時点で91年間も営業してきたことになります。
もっとも、建物は往時の面影を残しつつ、増改築がされてきた様子。
特に近年のリノベーションによって、古さと新しさが絶妙に交叉する空間になっています。

入り口には信州産の鮭が吊されていました


ロビーのソファ。年代物の革張り椅子にファーがかけられている。
冬はあったかそうです。

それにしても、「扉温泉」とは変わった名前ですね。
この地域には、天岩戸開きにちなんだ伝承があるそうです。
岩戸=扉を開けて投げたのは、アメノタヂカラノオノカミですね。
天照大神がおでましになり、世界に再び太陽が戻ってきた後で、
大事を成し遂げたアメノタヂカラノオノカミは、その扉をかついで
エッチラオッチラここまでやってきた。
その道中で温泉が湧いているのを見つけ、ちょうど疲れたところだし
ここらで一息入れていこうと湯につかった。
それが、あまりにも気持ちが良くて、扉のことなどすっかり忘れ、
帰ってしまったのだとか。以来、このあたりの温泉は、扉温泉と
呼ばれるようになったそうです。

力持ちのアメノタヂカラノオノカミに、そんなかわいらしい一面があったのかと、なんだか嬉しくなります。
また、このあたりの山には龍神様が住んでいるとの言い伝えもあるそう。
ますます、扉温泉に魅力を感じます。

渓流の景色を独り占め!お鷹棟の洋室に宿泊

そんな扉温泉明神館に、ついにお泊まりしたのは3月終わりのことでした。
まだあたりには雪が残っており、人もまばらでプライベート感いっぱいです。
お部屋はお鷹棟の洋室(スタンダードツイン)にしました。
広さは56㎡、ひとりには十分、贅沢なスペースです。
窓からは山の尾根と渓流が望めました。

ベッドは実に上質でこだわりが感じられました。寝心地最高です。
ベッドルームのむこうにはリビングスペースがあります。
リビングスペース。ソファに座っていくらでも景色を眺めていられます。
持って帰りたいくらいかわいかったレトロなデスク。ここにパソコンを置いて仕事も出来ました。
暖炉です。が、ガスファンヒーターみたいになっていました。

名物の「立ち湯」は天地と一体になるような感覚!

明神館の温泉といえば、なんといっても「立ち湯」です。
湯面に木々が映り込む光景は、かなり、かなり感激します!
これが夏なら緑に彩られ、秋は紅葉、冬は雪景色に変わるのです。
すべての季節に行ってみたくなります。
いちばん向こうまでいくと、文字通り立った状態で湯に浸かることができます。
眼下には渓流が流れ、まるで景色の中に溶け込んでいくよう・・・。


明神館の名物、立ち湯です。

久しぶりに仕事を離れてゆっくりするために、この時は二泊しました。
一日目の夕食は和食に。
信州の食材を活かした懐石料理です。

和食をいただいたレストラン。灯りを抑え、落ち着いた空間です。

温泉にゆっくり浸かり、美味しいお食事を堪能し、夜は渓流の音を遠く聴きながら、眠りにつきました。

<つづく>

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