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#12 若い時こそ日本を出よう

いつもの通勤電車に乗っていると、私の前に真っ黒なリクルートスーツに身を包んだ男の子三人組が立っていた。
この四月から新社会人になった子達なのだろう。当人達は誇らしげにスーツを着込み、ビジネスバッグを携えているが、あどけなさの残る顔立ちや体躯は、これから七五三のお祝いにでも行くかのように見える。

中年男の偏見と余計なお世話だとは分かっているのだが、こんな幼い子供のような子達が会社組織に入って、一体何の役に立つのだろうか、と思ってしまう。

いや、もちろん私のような人生を凧のように生きてきた中年フリーターの方が社会から見れば労働力としての魅了が低いことは分かっているのだけど、あまりに世間知らずで、無知で、イノセント過ぎる佇まいに要らぬ心配をしてしまったのだ。

ふと、この子達は学生時代に日本を出るような経験をしたのだろうかと疑問に思う。

私が学生だった頃は、貧乏バックパッカーもいたし(今もいるだろうが)、大学を休学して世界一周に出かけるような輩もいた。そういう謎の存在が許されるような余白が世間にあった。
こんな振り返り方をしているのが老化の証拠なのかもしれないが。

この四年間、コロナ、不況、円安、世界的なインフレの影響で若者が気軽に海外に行けるような状況ではなくなってしまった。

気が付けば、訪日客ばかりが増え、日本人が海外に渡航する機会は減っているようだ。

私達日本人はこれまで外からの刺激によって文化を発展させてきた。場所的にも東の果てのどん詰まりの場所である。
閉塞的にならない為にも、外から刺激を貰う必要がある。

海外に出ると、想定外の出来事に沢山遭遇する。
日本とは異なる人達、考え方、インフラ、食べ物、気候などなど。
それらを通して日本の駄目なところも、良いところも浮き彫りになってくる。

何かトラブルでもあろうものなら、それを乗り越える経験を通して逞しくなることもあるし、日本という非常に特殊で限られた文化圏に自分が閉じ込められていることも実感するだろう。

私の場合、二十歳の頃に韓国、フランスと行き、その後もイギリス、オーストラリア、インド、タイとフラフラと旅に出ていた。

就活して、会社の中でひたすらに出世を目指す、という生き方を私は出来なかったから、四十歳を超えた今、後悔していることもあるが、私は私がしてきたような旅のない人生はやっぱり嫌だな。

若い頃の旅の情景は、今も自分の中に濃く刻まれているし、旅の経験が自分の中の大切な部分を支えてくれているという実感もある。

三人組の新社会人の彼らにも、自分という小さな文化圏から、自分を弾き出してくれるような旅を体験して欲しい、と私は勝手に思ったのでした。

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