おじ様とコロッケパン

深く考えないといけないことばかりのこの世界で、少しだけ休憩の時間を設けようと思う。

終電間近の山手線に乗り込み、
ゆらりゆらりと流れゆく街並みを眺める。

日々何かしらについて考えてばかりいると、
「ふと」した瞬間の自分が怖くなったりする。

自分なんてこの世の中に必要ないのかも、
とか
なんで毎日毎日嫌な気持ちで働いてるんだろう、
とか
今日から何も食べなかったら死んじゃうのかな、
とか
浅そうで深い命の根源みたいなことを考えたりする。

そんなことを考えてるうちに、
さっきまではっきり見えてた窓の外の景色がすこしずつぼやけてきて
しばらくしてから視力の低下じゃない、泣いてるんだと気づく。

たぬきと共存していたくらい田舎の実家を出て早2年。
終電なのに激混みしてる山手線にも、
一回で渡りきれない渋谷のスクランブル交差点にも、慣れてきた。
もしかして自分、都会での暮らしの方が向いてるのかもと勘違いしてしまう日もある。

でも、「ふと」したとき
あれなんで自分って東京にいるんだっけと思えてきてしまう。
ちょっとした苦しい出来事に目が向いちゃったりする。

次の駅で降りよう、
そしてもう何もかも捨て去ろう。
責任なんてどこにもない、理性もこの際どっちでもいい。
何をしようが自分の自由だ。

そう思って目線を下にすると、
あと5分で賞味期限が切れるコロッケパンが目に入った。
ふくよかなおじ様が持っている小さなビニール袋から顔を出している。
高級パンとかじゃなくて、小さな街のパン屋さんで売っているような素朴な見た目で
透明のビニールに30%オフという赤いシールがつけられていた。

別にコロッケパンに何か深い思い出があったわけではない。
ただ、なんかもうちょっとだけ頑張ろうと思えた。

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