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クマの夢を見る

 夜中、小腹が減って台所に行くと、クマが冷蔵庫を漁っていた。驚いた。それが目覚める直前まで見ていた夢と同じだったからだ。

「あ、また来た」

 驚きで固まっていると、クマがぼくを見つけて言った。どうやらクマにとっても既視感のある状況らしい。というか、なぜクマが喋るのか。

「もしかして、これって夢?」

 クマが話すなんておかしいと思いながらも訊かずにはいられなかった。するとクマは、

「ウン、夢だよ」

 とあっさり答えた。さらに「ボクのね」と付け足す。どうやらこれはぼくの夢じゃなく、クマの夢らしい。

「今ボク、冬眠中なんだ。冬眠前にはたくさん食べたけど、さすがにお腹が空いて来た。だからこんな夢を見てるんだね」

 ぼくはまた驚いた。最近のクマは夢判断もするらしい。

「でも、夢だと食べても食べてもお腹がいっぱいにならないんだ。それでも口寂しくてずっと食べちゃう」

 そりゃ、夢の中でいくら食べても、現実の体は満たされはしないだろう。
 ……あ、すごいことを思いついてしまった。

 人は幸せでも、もっともっと幸せに、お金もいくらあってももっともっと欲しいと際限なく求めてしまう。
 それって人も夢を見ているからなのかもしれない。だからいくら何かを手に入れても満足できないのかも。

 でも、その夢は果たしてぼくの夢なんだろうか。それともクマの夢なんだろうか。
 考えたけれどわからなかった。

「じゃあ、いっただっきまーす」

 そしてぼくはクマに食われた。さっき目覚める直前に見ていた夢と同じように。

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