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オールウェイズ、オールライト!──渡邊亜希子さんすごいな〜と思うシャニマスの歌詞3選



 渡邊さんで「オールライト」なのにスマシンがなくて……ごめん!

イルミネイトコンサート/イルミネーションスターズ

作詞:渡邊亜希子、作曲・編曲:渡辺徹

終わらない 夢ってあるんだね
終わらない 光を奏でていよう

『イルミネイトコンサート』


 早速ですけど、こんな歌詞書けますか!!!!??!?!???

 私だったら絶対書こうと思っても書けないと思う。
 よく言われてるかもしれないことですが、この歌詞に良さを見出だせるのって、現実には終わらない夢も終わらない光もないって思ってるからこそなんじゃないかと思うんですけど、
それでもその前提のうえでここまで言い切ることって、なかなかやろうと思ってもできないことなんじゃないかと思うんです。少なくとも私にはできない。絶対。

 というわけで、渡邊亜希子さんはすごい。

 筆者(すごくネガティブで暗い)にとってシャニマスは一言で表すと「今ある世界の美しさを捉えるためのレンズ」なんですが *1、渡邊亜希子さんが書かれるイルミネの歌詞はまさにそれだなあと思ってしまいます。

Come and join us!
Just be yourself!

ちぐはぐなリズム
笑い過ぎて涙出ちゃう
だけど心地がいいの
無限のアンサンブル

『イルミネイトコンサート』

 Just be yourselfでCome and join usしていいし、その結果ちぐはぐでいいし、そのことを笑いすぎて涙出ちゃう、と温かく包み込むこの歌詞。
自分の中から自然に出てくる言葉では絶対にないから、音楽としてこの言葉が存在していることがありがたいです。
 「アンサンブル」っておおらかというか、ゆるい連帯みたいなものを表すのにすごくマッチしていて、言葉選びも良いな〜と思います。

Secret utopIA/イルミネーションスターズ×アルストロメリア×シーズ

作詞:渡邊亜希子、作曲・編曲:秋浦智裕(agehaspring Party)

Everything's gonna be alright!
Everything's gonna be alright!

『Secret utopIA』


 Secret utopIAの「Everything's gonna be alright!」が私は本当に好きで……。

 なぜかというと、まず、これってSHHisのOH MY GODにもあるフレーズなんですよね。

Everything's gonna be alright!
行けない場所なんてない
自由自在の無二の存在なの

OH MY GOD/SHHis
作詞:Co-sho、作曲:小久保祐希・Eunsol(1008)、編曲:Eunsol(1008)


 シーズはもう登場から三年が経ち、今やHappierを歌っているわけなので、これはもう「当時」の話になってしまいますが、
彼女たちのWINGやイベント「OO-ct. ──ノー・カラット」はどれもシリアスなシナリオで、
シーズの二人はコンプレックスに苦しんだり、自分で自分を許せなかったりうまく愛せなかったり、全く大丈夫(alright)ではなさそうでした。

そんな中、OH MY GODの「Everything's gonna be alright!」も、筆者にはとても張り詰めた響きを持って聴こえていました。
(その裏腹さが良かったし、非常にエモーショナルなセルフボースティングになっていたとも思うのですが)

 さて、Secret utopIAはSHHisが登場した次の年、2022年の4thライブに合わせてリリースされたユニット越境曲です。
イルミネーションスターズ・アルストロメリアというシャニマス開始時からいるユニットと、当時一番後輩だったシーズが一緒に歌っています。


 そしてそんな曲にこの「Everything's gonna be alright!」というフレーズが(おそらく)OH MY GODから引用されていたわけです。

Everything's gonna be alright!
Always with you Always with you
We can do whatever we want!!
いつでもみんなとだから

『Secret utopIA』


 これはある種、OH MY GODと当時のSHHisに対するアンサーともとれるというか……。

 イルミネとアルストという283プロの先輩たちが、いつか全部大丈夫になるよ、とシーズを優しく包み込み、見守っているような印象を抱きます。
しかもその詞を、シナリオ上では事務所の他ユニットのメンバーともそこまで関わりのないシーズが楽曲のうえでは一緒に歌っている。

イルミネイトコンサートの「無限のアンサンブル」もそうでしたが、なんだか音楽の持つ、隔たりを超えて人をつなぐ可能性にまで思いを馳せてしまいます。

 渡邊さんが書かれるシャニマス曲の歌詞には、明るくてポジティブであることの裏にある凄まじいエネルギー、パワーを感じたりもします。
覚悟……とまでいっていいかはわからないのですが、凄みがある。


HAREBARE!!/八宮めぐる

作詞:渡邊亜希子、作曲・編曲:大西克巳

リモコン壊れちゃった
エアコンみたいだね
熱い 想い 止まれない歌だ

『HAREBARE!!』

 さて、そんな明るさ・ポジティブさの裏にある凄み……みたいなものに少し自己言及的かも? と思うのがHAREBARE!!です。

 HAREBARE!!の歌詞はぜひ一度全文見てみていただきたいのですが
このめちゃめちゃまっすぐでポジティブな歌詞に対して、自分でリモコン壊れちゃったエアコンみたいだねって言っちゃってるわけです。
ちょっと制御が効いてないよね、おかしいよね、って言っちゃってる。

 渡邊さんの歌詞って、こういう、ただポジティブなだけじゃないんだよ、という要素の入れ方が本当にうまくて、
この選びぬかれた言葉が作っている鋭い素直さが、「ポジティブ・アレルギー」 *2 な人の心にこそストンと突き刺さってしまうんじゃないかな、と自分がそうであるだけに思ったりもします。

Starlight 見上げてた All night
怖くない この世界 All right

笑顔でいて欲しいだけど
笑顔じゃない日も
私が(まるごと)ギュッとしちゃう 大丈夫!

『HAREBARE!!』


おわりに──All light!

 というわけで、個人的にすごいな~と思う渡邊亜希子さん作詞曲3選でした。

 人はそれぞれ結構深刻に違っていて、どんなに頑張ってもわかり合えなかったり、自分が自分であることで誰かを傷つけてしまったり、反対に他者が他者であることそれ自体に傷ついてしまったり、
そんなことをSNSなんかを通じて何度も自覚しなければならないような日々が、きっといくらかの人々にとってある中で、

そんな私たちだって誰もがいつでも光でもあること、
自分と決定的に異なる誰かとひとときなにかポジティブなものを共有できること(たとえば音楽やライブを通じて)、
世界は美しいばかりではないけれど、それでも世界にある明るく美しい側面を伝えるレンズであろうとし、「大丈夫!」と誰かの背中を押すこと、その凄さ。
 そんなことを私は渡邊亜希子さんのシャニマス楽曲の詞から感じます。

 そしてそれはシャニマスの根底に流れるフィロソフィーでもあると思っているので、283プロ、ひいてはシャニマスのセンターユニットであるイルミネの楽曲を渡邊亜希子さんが担当していらっしゃること……すげ~~!!!!!!!!!!

 この記事はお蔵入りしかけていたものですが、シナリオイベント『絆光記』と、蜷川さんが企画された『#voices_livefun』に背中を押されて書ききることができました。ありがとうございました。

絆光記よかったね~


*1 これは「じゃあ、『聲の形』の原作者と監督はなんと言っているのか。:監督・山田尚子編」という記事の、「今ある美しい世界の仲介者、いわば正しく世界を捉えるためのカメラのレンズであろうとしている」という山田尚子評に大いに影響を受けた考えです。

*2 『絆光記』より引用。




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