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資格いおっさん16 テールゲートリフター特別教育(後編:安全のコツと運送業ほかこぼれ話)

 前回は資格の概要について説明した。1つの資格で2記事に渡るのは初めてだが、今回の講習ではさまざまなこぼれ話を聞くことができたので、是非ともここで紹介したい。


<TGLを使って人は上り下りしてはいけない>
 街中でも人が乗り降りして上下している姿は普通に見かけるが、本来TGLは人が乗ってはいけないものである。製品のトリセツには書いてあるが 業界はあまり周知していない。これは、通常購入時は車屋に行くわけだが、車屋とリフトの製造会社は異なるため、周知がうまくいかないのだろう。

 実技でも実施したが、現在では梯子や折り畳み階段を使って車の荷台に乗り降りせよとなっている。リフトを使わない場合、若い人なら飛び降りてもある程度は大丈夫だが、高齢になると腰や膝を痛めかねない。これからは安全のためにも、梯子や階段は必須であるだろう。


<運輸業はヘルメット着用の習慣があまりない?>
 建設業や製造業であれば、現場内でヘルメットをかぶるのは当然のこととされている。法律の規定によらず、社内ルールが設けられていたり、そうでなくとも先輩や上司から厳しく指導される点でもあるだろう。
 一方で運輸業(トラックの運転手)などはあまりヘルメットをつけないようだ。運転中につけろという意味ではなく、降りて荷下ろしをする時にという意味で言っているのだが、確かにあまり見かけないように思う。
 だがこの度、ヘルメットの着用が、2t以上とはいえ義務化され、TGLは特別教育も義務化された。今後のヘルメットの普及に期待したいところである。

<特別教育の負担が生じたのは中小運輸だけ?>
 S川やYトなどの大手では、社員は手積み手降ろしが未だに主流であるらしい。確かに一般家庭に配送している荷物はそんなに重たいものはない様に思う。となるとTGLはあまり出番がなく、これらの会社では社員教育の費用はそれほどかかっていないのかもしれない。
 一方で、製造業や建設業、それらの下請けとして運送を請負う中小企業や個人事業主は、どうやら新ルールで割り食っている可能性が高い。安全は大事だが、末端に行くほど多くの費用がかかる(の割りに儲からない)という仕組みは、安全意識の浸透という目的にはブレーキをかけており、皮肉な結果である。

<こうした教育は案外刑務所関係でも実施されている>
 確かにと、聞いていて膝を打ってしまったが、受刑者が刑期中に受講しておけば社会復帰も早い。しかも、特別教育や技能講習であれば、日数も少なく受講させやすい。この点においても安全衛生教育の体制維持の大事さはある。

 また、一昔前、少年院はヤンキーで事故や暴力沙汰を起こしたヤンチャな子が多かった様だが、今は生活に困って振り込め詐欺に加担したり、知らずに薬物の受け渡しに関与したりといった罪での服役が多く、故に素直で覚えの良い受刑者が多い様である。ならば益々やる意義は大きいだろう。

<運輸業の苦悩、車上・軒先・置き場渡し>
 運送屋さんは、受取先に荷物を運ぶと、多くの場合「事業所のどこそこまで移動して欲しい」と普通その場で依頼されるが、実はここに苦悩があった。
 契約形態としては、車上渡し・軒先渡し・置き場渡しの三つが本来はある。
 
 
車上であれば、受け取り先でクレーンやフォークで移してくれる。
 
 軒先なら自分で重機やTGLを使う必要があるが、それでもその場で下ろせればなんとか終わり。
 
 だが、置き場ともなると、車両ごと搬入するための待ち時間が必要であったり、重機で下ろした後の手運びや現場での荷物積みまでやらされるケースもあり、結構困るらしい。
 昨今ではドライバーの長時間運転による疲労と事故の問題もある。また、拘束時間や、運転外の危険作業に伴う残業やお手当が出ない事もあるというのだから、なんとも悩ましい現状である。

 かくいうおっさんも、見積もりや電話による個別依頼をする時もどこ私なのか、話をしていなかった。上司の世代には、軒先に置いて帰ると怒る人もいるのだが、これもしっかり契約していないこちらが良くないのだなと気が付いた。これからは気をつけたいと思った。

<運送業の立場>
 車上・軒先・置き場渡しの件もそうだが、運送屋さんは基本は客先に出向いて頭を下げて仕事をもらうというスタンスになりがちである。故に現場で危険があっても中々言い出せないという立場でもある。

 例えば前回、ロールボックスパレット(ロール台車)の危険性と、重心を考えて積むという話をしたが、もし重心が高い危険な積み方をしたロール台車があったとしても、運送業者の立場からは「危ないから積み直してくれ」とは言いづらい。

 また、TGLの正しい使い方を踏襲すると、今までよりも若干時間のかかる作業になる恐れがある。これも客先が厳しいと、安全作業を完徹しづらいという、空気的な辛さがある。そう考えると、運送業以外でも、運送業に大きくお世話になる業界にいるならば、この特別教育を受けておいた方がいいようにおっさんは思う。

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