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読了のおっさん15 夢の雫、黄金の鳥籠(篠原千絵/姉系プチコミック)

今日も、おっさんが全巻読んで面白かった漫画をご紹介です。
個人の感想であり、感じ方はそれぞれなれどご参考に。
概要的なネタバレは含みます。

夢の雫、黄金の鳥籠
(篠原千絵/姉系プチコミック)
2010年~ 既刊19巻

① タイプやテーマなど
 歴史もの、レディース、オスマン帝国、大航海時代、宮廷、恋愛、戦争、奴隷、政争、地理、教養

② 簡単な内容
 主人公はオスマン帝国のスレイマン大帝の寵姫ヒュッレム。ルテニアの寒村から攫われ、奴隷としてマテウス(後のイブラヒム大宰相)に買われ、
マテウスを貢献として後宮のハレムに献上される。ハレム内にて教養を学びつつ、スレイマンにも寵愛を受ける一方で、ハレム内の闘争や、
皇室関係者との友情などから様々な事件に巻き込まれていく。また、マテウスとの恋愛や、スレイマン大帝との蜜月、間に生まれた皇子らとの関係で
苦しみつつも、他のハレムの妾とは一線を画す教養や行動力を持って、スレイマン大帝と共に歴史を作っていく。

③ 読みどころ
 絵が美しい。レディース向けは「美麗」を志向した作画が多いが、やはり類に漏れない。人物も美しいが、船舶や街の景色、後宮内の書き込みも良く、
絵を見て買うという選択肢もあり(表紙も綺麗)。内容としては歴史ものであるので、歴史が好きな人にはお勧め。特に本作と同じ著者のタイトル
「天は赤い河のほとり」と、時代は異なるが同じ地域の歴史を描いたものであり、地理的に黒海沿岸や中近東に興味がある人にもおすすめ。
 また、やはり恋愛模様やハレム内の闘争が色濃く描かれており、女の闘い、あるいは人間ドラマというものも非常に楽しめる。一般的な史実とは
解釈が異なる部分も当然あるが、気にせず夢中になれる。


④ 雑多な感想 
 オスマンなので侵略戦争の描写が多く、戦闘の類も描かれている。男性向け作品では、大きな武力による蹂躙も含めた迫力ある戦闘シーンが多いが、
本作はその点はやや控えめ、綺麗な絵で当時の城塞や兵器が描かれており、戦術でそれを運用するといった展開になる。謀計の描写は戦争ではそれ程なく、
どちらかというとハレム内でばかり描かれている。このバランスがレディース向けで、おっさんにはやや新鮮。そしておそらく全ての読者にとっても、
いい塩梅である。
 おっさんは大航海時代が好きなので、15、16世紀の世界情勢や地理を少し知っていて、楽しめた。当時のキリスト教圏との争いや、地中海沿岸の
騎士道精神的思想を持った武力集団の存在、エジプトや北アフリカの情勢や赤ひげの大海賊(ハイレディンバルバロッサ)、スラブ諸国や黒海周辺地域
の民族模様などもエッセンス的に随所に登場する。

⑤ その他
 当時のオスマン帝国の影響力は大きく、ヨーロッパとの戦争あるいは交流によって、人類全体として文化技術双方において爆発的に進歩が進んだ時代でもある。
後宮にフォーカスが当てられているため、そうした時代背景はエッセンス的にとどまるものの、知っていると感じ方が異なると思う。
 例えば天は赤い河のほとりでは「鋼」の製法が、戦争の明暗を分けるほどに大きく描かれていたのだが、本作では砲術や地理学などその描写はやや控えめ。
良し悪しで言うとそれはいい塩梅であると思うが、かといって何も知らないと少し物足りない描写もあるかもしれない。
 非常にコアな話になるが、赤ひげの海軍提督とヒュッレムの直接の邂逅はあったのだろうか? 本作はお忍び的に面会を果たしており、書簡や情報交換を行う
登場人物になっているが、こうしたゲストの登場を楽しめるかどうかも、時代背景を知っているかどうかで異なるように思う。

 それにしてもスレイマン大帝とイブラヒム様のお美しいこと(悪い意味ではない)。おっさんが歴史の教科書や資料で見た姿では、どちらも髭もじゃで
恰幅が良く、顔つきも男臭かったと思うが、本作のお二人はまるで男性アイドルである。
 恋愛と女性の話も多いが、この両イケメンほか男同士の会話もまた見ていて面白い。主要人物がむさいおっさん同士でその会話が続く展開となると、
ヒュッレムもギュルバハルももっと野暮ったく描かないといけないだろう。
 おいおい、それは作品の良さが台無しだろうと思うので、やっぱり本作では超絶イケメンで書いてくれて良かったと思う。読んでいて清々しくなる。

 余談だが、巻末で急に同じ著者の作品「天は赤い河のほとり」の読み切り外伝的なものが登場することもある。繰り返しになるが、舞台となる地域は
一致している。続きものというわけではないものの、先に読んでおくとより本作が楽しめるように思う。

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