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窓際のおっさん23 人材育成に昔の価値観が上手く通じない背景(1/4) 単なる徒労を良質な「苦労」と正当化している

 仕事場で昔の価値観が通用しなくなってきている。それどころか現在では害悪として多くの人を苦しめている。
 結論から言って、昔の指導理論は本来はもう少し中身のあるものであったが、したの人間に対する、都合の良い攻撃手段などとして使われるようになり果てて、形骸化、有害化しているように思う。

 今回はそうした、現代では通用しない昔の価値観について、おっさんの体験を交えて考察していきたいと思う。

<仕事上、現在ではNGの価値観>


 色々あるが、今日は大まかな人間教育的概念としてよく言われることをいくつか紹介したい。

①苦労すればするほど成長できる
②後輩(部下)教育は厳しく接するべし
③無駄な仕事でも、上の決定には黙って従うべし
④仲良く打ち解けることが仕事では大事

 現在では共感よりも反発が多い内容に思う。

 尚、初めに言っておくが、おっさんは必ずしも完全否定はしない。

 問題はあくまで、長年にわたって下の立場に言う事を聞かせるために、これらの教育概念を都合よく運用した結果、形式的で中身がないものに変わってしまった現状と、その歴史的背景にあると思う。
 
一つづつ見ていきたい。

<苦労:徒労を苦労と言い張ったせいで皆が苦労をネガティブに捉えるようになった>


 筋トレならば、負荷をかければかけるほど超回復で筋力がつく。しかし、当たり前であるが、仕事の全てに筋トレ的理論は通用しない。
 

例えば単純事務作業について


 事務処理は筋トレ理論ではすぐ成長限界に達する。半年から1年かけてせいぜい「慣れる」だけだ、その後の個人差は少ない。

 本来は最適の方法に慣れたところで終わらせておけば事務員の仕事としては十分である。その先は俗人化を防ぐためのマニュアル化、以後のRPA等を見越した、簡略化と整理という段階になるだろうが、そっちの本質的な苦労はなかなかさせてもらえないのが現状だ。

 一方で、むしろよせばいいのに「本当はこっちが正しい処理だから」「こうやるとより丁寧だよね」などと、慣れてきたところで、事務処理をあえて変更したり、理由をつけて無駄に手順を増やして複雑化に走る傾向にある。

 どう言うことかというと、仕事が飽和していて成果を誇るのが難しい時代になっているため、無駄に事務処理量を吹かしたり、理屈をごねてコロコロと方法を変えるのである。

 部下や後輩に負荷をかけ、いつまでも、事務処理を筋トレ的理論軸で評価できる状況に仕向け、部下・後輩指導の功と、事務処理適正化の功、二つの嘘の功績を誇り続けているのだ。

 具体的な手口としては例えば、

① 毎度書類にベタベタとタックラベルをつけるよう指示
② 殆どあるいは全く読まない参考資料を毎度添付
③ 同じ意味の図表を、全部必要だと称して、3つも4つも並べて事務量を増やす

 このように事務処理はやろうと思えば無限に増やせるので、頭の悪い人ほど、部下・後輩を犠牲にして、組織に徒労ばかりを蔓延させていく。

<徒労ばかりで必要な仕事に時間を割けず、社員の質も低下する>


 チェック側の立場からすると、チェックが大変で、コピーやスキャナーにかける時にタックラベルや添付資料が紙詰まりする。正直「仕事の邪魔」としか思えないのだが、忙しいふりをするためにこれらの改変を平気でする輩が後を絶たない。

 また、忙しいふりが得意な輩に育てられた後輩は、単純に丁寧な仕事が良いのだと理解し、同様のタチの悪い社員になってしまう。

 最近は技術系の仕事もそんな影響で、書類ばかり得意で専門性がなく、非効率な事務処理人間ばかりになっている。
 現場対応や機械操作、専門知識、安全意識がいつまで経っても身につかないまま、いい歳まで放置されている。
 つまり長い目で人材不足にも繋がっているのだ。

<草臥れた現場と苦労への拒絶感、果たしてその対策はあるのか?>



 皆が専門性のないゆるい人材で、ひたすら無駄な仕事で忙しそうにしている。この状況が更に進むと、いよいよ苦労自体を無駄とする風潮につながってくる。 

 元来、苦労は大事である。
 だが、成長に意味のある「良質な苦労」でなければならない。

 ところが成長のない徒労を苦労と偽ってさせるものだから、苦労そのものを拒否するようになってしまうのだと思う。


 
そんな具合で、今や皆やる気をなくしているのだが、この状況を打開するためには、成功体験が欠かせないとおっさんは考えている。
 
同じく失敗体験も成長にはつながるが、無駄な事務ばかりだとそれらの経験も欠如してしまうので、そこに皆が早く気が付かねばと思う。


次回に続く


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