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レコード棚を順番に聴いていく計画 Vol.46

【過去の投稿です】


[55枚目]●ファンカデリック『ファンカデリック』<ウエストバウンド>(70)

ジョージ・クリントンの自伝『ファンクはつらいよ』に拠ると、ファンカデリックの「デリック」は、サイケデリックの「デリック」だそうだ。時代の趨勢もあるだろうが、確かに、本盤のサウンドは、後のファンカデリックに比べるとサイケデリック度が強い。

また、強調しておきたいのは、彼らのブルース・フィーリングの豊かさである。⑥「クオリファイ&サティスファイ」に至っては、「フーチー・クーチー・マン」よろしくストップタイムをキメている。サイケデリックとブルースは近しい関係なのかも知れないが、本盤を聴くと特に感じる。更に、サイケと言うとカオス的なイメージがあるし、本作にも感じ取れるが、決して収拾がつかないような混沌ではなく、確固としたバンド・サウンドが基本としてある。当たり前かも知れないが・・・。ただ、職人集団としての魅力と同じぐらいに、ユーモア精神に支えられたエンターテイナーぶりも絶賛したい。

①「マミー、ホワッツ・ア・ファンカデリック?」は怪しげな音で始まり一挙にサイケデリックな世界へ。ヴォーカルと言うより囁き、ブルースハープ、女性コーラス、ギターがドップラー効果のように浮遊する。

②「アイ・ベット・ユー」は、いなたいスライみたい。次第に音の渦に吸い込まれる。③「ミュージック・フォー・マイ・マザー」は訥々とした語り調とアーシーなコーラスのリフレイン。

④「アイ・ガット・ア・シング、ユー・ガット・ア・シング、エブリバディーズ・ガット・ア・シング」。ファンキーなギターのカッティングが先導。高速な演奏だが曲の展開自体はゆったりめで、バランスが絶妙。自然なグルーヴに揺れる。⑤「グッド・オールド・ミュージック」。ドラムの音の転がり、ギターのトロンとした感じは絶妙。オルガンも好い味。ラストの「ホワット・イズ・ソウル」も、ちょっとダブみたいな部分も含め、感覚が黒い。

ファンカデリックは、このアルバムを出す前からデトロイトでは人気を博しており、満を持してのリリースだった。Pファンク軍団を語るのに、ジョージ・クリントンの存在が欠かせないのはもちろんだ。よく言われるように、細かい部分まで指示を出し、統率しているJBと違い、メンバーは一見自由に振る舞っているように思える。しかし、乱れてはいない。全員がジョージの“思想”を解釈し世界観を創っているのではないだろうか。正に「ワン・ネイション・アンダー・ア・グルーヴ」である。軍団の歩みを最初に纏めた本アルバムにも強く感じる。

最後に、メンバーを表記通りに書いておく。エド・ヘイゼル(リード・ギター、ヴォーカルズ)。ビル・ネルソン(ベース、ヴォーカルズ)。タウル・ロス(ギター)。チキ・フルウッド(ドラムス、ヴォーカルズ)。ミッキー・アトキンス(オルガン)。

MOMMY, WHAT'S A FUNKADELIC?

I Got A Thing, You Got A Thing, Everybody's Got A Thing

Qualify And Satisfy

(Full Album)


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