ハードボイルド探偵バネントの追憶

「グルルル……」

 どす黒い雲から冷たい雨が降り注ぐビル街の路地裏で、四足歩行の巨大な獣が唸る。その鋭い牙が光る口元から滴る赤い血は、周囲のビルの壁に付着しているものと同じ色だ。獣は今一度口元の血を舌で舐めると、次なる獲物を求めておもむろに歩を進めようとした。

「………グル? グ、グルァーッ!」

 だがその歩みは、突如として発せられた閃光によって阻まれた。獣は光に包まれるやいなや瞬時に爆発し、緑色の液体を四方に撒き散らした。鮮血に鮮血が上塗りされ、黄色く変色する。やがて光が晴れると、陰惨たる殺戮現場に白衣姿の男が立ち尽くしていた。

「……遅かったか」

 男は手にした金属フレームの銃の目盛りを調整しながら、静かに独りごちた。そして壁の血と、足元に転がる人間の生々しい半身、そして自らに降りかかった緑色の液体とを見る。

「……俺のせいだ。俺が……」

 男はブツブツとそう呟くと、おぼつかない足取りでその場を離れていった。

【続く】

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