ある研究所に残されていた音声記録

「あなたは……私達に?」

「いいえ」

「彼のために?」

「はい」

「そう。幸せ者ね……あの男は。まあ……それも当然かもしれないけど。なにせ、あなたは彼が……」

「はい……」

「……覚えてないの?」

「はい」

「それでも……彼のために? たった一人で?」

「はい」

「ふふっ……あなたは思ったよりもバカなのね。あの男と同じだわ。でも残念ね。もう間に合わないわ」

「いいえ」

「……勝てると言うの? あんな怪物相手に?」

「はい」

「……バカよ、あなたは。何のために彼が……あなたを助けたと思ってるの? こんなところで……死なせるためじゃないわ」

「はい」

「……そう。そこまで言うならもういいわ。私からは……もう何も言わない。ただ……私はこのままここに置いていきなさい」

「はい……」

「……そんな顔しないの。どうせ私はもう……助からない。ここで終わることが……私の……」

「いいえ」

「……許してくれるの?」

「……はい」

「そう……ありがとう。おかげで……このまま安らかに」

「……はい」

「私は……あなたの腕の中から旅立つけど……あなたは……もしその時は……か、彼の……」

「はい」

「じゃあね……ゼロ……バネントも……」

「……はい」

ーーーーー

 男は音声記録の再生を止めると、静かに独りごちた

「ラブだよ、マリィ。ようやくいい名前が思い浮かんだんだ……お前も……今日までありがとう」

(今週のプリンセス・クルセイドはお休みです)

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