声優朗読劇フォアレーゼン 「太陽が、痛いほどいっぱい」

note放置してかれこれ数ヶ月…
人生初の朗読劇に行ってきたので感想を。
観たのは昼公演だけです。

声優朗読劇フォアレーゼン愛知公演
「太陽が、痛いほどいっぱい」
アントニオ 山下誠一郎
ウリ 小林千晃
ナレーション/男/ユキヒロ 重松千晴
マリオ/男爵 中澤まさとも
ピアノ 森めぐみ
テノール 坂寄奏太


朗読

声優さん達が席につき、ライトが点灯し千晃くん演じるウリが話し始める。
席は下手側の後方で、視力はあまり良くないものの表情はぼんやりとみえる。
この時点ではまだ「一番好きな人が同じ空間にいてその人の演技を、声を、生で聴くことができる」という自分の状況に実感が無く、始まる前のソワソワとした気持ちを引きずっていた。

ウリの台詞が少し長めに続き、その間にだんだんと心が落ち着いてきた。
と感じたのもほんの束の間、
「ウリ、ぼやぼやするな。引っ越しだ。」
と、山下さん演じるアントニオが話し始めた。

この台詞が耳に届いた瞬間、胸がぶぁーっと熱くなり「今、この瞬間、本当に生でお芝居を聴いているんだ!!!」と、凄まじいほどの嬉しさが込み上げて頭の中がフワフワした。きっと、これが多幸感というやつなんだろう。

先程の台詞をきっかけにテンポ良くウリとアントニオの掛け合いが続く。


ってここまで書いたけどこの文体で最後まで書ける気がしないのでここからは普通に。(諦めが早い)
いやほんとに最初が千晃くんの台詞で助かった。山下さん始まりだったらきっと心がもたなかった。ごめんね、そしてありがとう千晃くん。


まずストーリーは、イタリア人テノール歌手のアントニオとドイツ人ピアニストのウリが、女性に追いかけられながらイタリア各地を逃げまわり、道中マフィアにも追われ、てんやわんやするお話。

刹那的な恋に奔放で雄弁な屁理屈でのらりくらりと生きるアントニオと、自惚れが強くも真面目で嫌々ながら(もどこか楽しげに?)アントニオに振り回されるウリ。

アントニオはアスリート女性ばかり好きになり、アーチェリーの弓で狙われ、槍を投げられ、終いにはマフィアの女に手を出して湖に沈められそうになり…

という感じで、追われては逃げ、追われては逃げのハラハラする展開とテンポの良い掛け合いで、2人はどうなってしまうんだろう?!とワクワクしながら最後まで楽しく観劇できてとってもおもしろかった!!

登場人物に関しては、メインの二人がどちらも国の名前から想像する抽象的なイタリア人像、ドイツ人像のキャラクターだから理解しやすくて助かった。なんせ朗読劇が初めてで、キャラクターの設定やストーリーをきちんと理解できるか些か不安だったから。

そのおかげで終盤の湖のシーン、
ウ「ムッソリーニは…」
ア「ヒトラーは…」
ウ「カトリックは…」
ア「プロテスタントは…」
なんていうお互いのお国弄りだな〜という台詞も理解できた。

そしてこの軽い愛の言葉や軽妙な語り口のイタリア人役が山下さんにめちゃめちゃハマってた。普段から共演の多い千晃くんとの掛け合いはしっかりアドリブも入れつつ小気味良いテンポ感で、何より楽しそうにお芝居する姿を生で見られたことがとってもとっても嬉しかった。

朗読劇だからもちろん声が中心ではあるけど、手先や体の動かしかた、表情や視線の向けかたなどなど身体全体を使ってお芝居している姿がとても印象的だったし、テノールの歌唱中に(自分が歌ってる感じを出すために?)身体揺らしてたのもなんだか可愛らしかった。

加えて「ジュ・タン・ブラス!」
(フランス語で、私はあなたにキスをするの意味)
なんて愛の言葉や電話越しにキスするリップ音まで聴いてしまった。ここで相当数の山下さんファンがハートを射抜かれたことだろう。


千晃くん演じるウリはツッコミかと思いきや真面目が故の天然要素がつよくて意図せずボケてはツッコまれて…そのやりとりの中にそっとアドリブが入る感じで、普段の仲の良さから生まれる空気感や呼吸の合わせ方がきっとあるんだろうなと思った。千晃くんの叫ぶ演技が好きだから「ぎゃー!」が聴けてかなり嬉しかった。


メインの二人の掛け合いが面白いのは当然ながら、脇を固めるお二人もすごかった。

まずは重松さん。やっぱり注目すべきはナレーションと男を連続で演じるシーン。ここは話が展開してスピード感も必要な場面だから、詰めた間で瞬時に切り替えて台詞を言わないといけない。ご本人も役の切り替わりがわかるように工夫したって言っていたけど技術が必要だろうなと。

そしてこのシーン、私が重松さんの役の切り替わりに気を取られてるうちにアントニオとウリがいつの間にか居なくなっていて、男爵や男と同じタイミングで2人の不在に気がついて、[あぁやられた…]って思った。直前の2人の逃げる算段の会話を聴いてたはずなのに…悔しい…(誰目線)


そして中澤さん。マリオの登場シーン、ナレーションの「群衆を押し分けて」の言葉通り、動きは最小限なのに後ろからぐわって人が入ってきたような感覚があって思わず[うーわ、演技うまぁ…]と心の中で感嘆した。マリオは普段とは声色を変えてたし、男爵も(私の知る限りでは)あまりない雰囲気の役だったし、兼ね役だからこその新鮮な役をみられてよかった。アドリブもキャラクターに面白さを足しつつもメインを邪魔しないかんじで、共演の少ない相手とも合わせられるのは芸歴の長さもあるのかな、なんて思った。



音楽

これに関しては素人が適当なことを言ってるから聞き流してほしいけど、一応感じたことを書いておく。


ピアノ
場面展開やBGMとして演奏されるピアノの曲調は、テノールが歌う『O sole mio』『Santa Lucia』などの民謡となんとなく年代を合わせたような雰囲気の音に聴こえた。同じメロディの繰り返しやアレンジ違いが出てきてたので多分それがテーマ曲だったのかな。

でも途中、さっきまでとはガラッと曲調や年代が変わった?と思ったら誰もがよく知る有名な旋律が流れた。それが映画ゴッドファーザーの『愛のテーマ』。映画はみたことないけどシチリアマフィアの話だとは知ってたから、男爵はやっぱりマフィアなのね!と確信したけど、弾いてる張本人ウリくんはまだそんな訳ないと思ってて、そのチグハグ感がおもしろかった。

あと自宅で台本を開いてみてとても驚いた。
こんなにフワッとした指定しかされてないの?って。実際にはもう少し細かく指示や説明があるんだろうけど、ほぼイメージしか書かれていないところから作曲するのはさぞ大変だろう…。

テノール
歌っていた曲は『O sole mio』『Santa Lucia』『Funiculì funiculà』と日本人でも聴き覚えのあるものだし、式場から逃げ出した後に歌う『L'abbandono』はアントニオの台詞からも別れの歌だとわかる。そして最後に湖で歌う、アンナの母が故郷で歌っていたという『Vaga luna, che inargenti』も穏やかで美しくも憂いを含むような旋律で、愛を歌う曲なのかもしれないなと想像しながら聴いた。
オペラって生で聴くと声の圧がすごいし、低すぎず耳に馴染むテノールの音域がすごく心地よかった。


一応ざっくりと歌詞の内容を説明すると、
『O sole mio』
晴れた日は素晴らしい!君は私の太陽だ!
という感じで、故郷と愛する人の素晴らしさを歌っている。
旅の始まりに景気良く歌うのにぴったり。

『Santa Lucia』
サンタ・ルチアは港町の名で、海に月が照り潮風が薫る港は美しい、と讃えている。
水の都ヴェネツィアで歌うのにぴったり。

『Funiculì funiculà』
登山電車(フニコラーレ)で火山の頂上へ登ろう!
本来はヴェスヴィオ火山を歌っているが、パレルモにはエトナ火山が。

『L'abbandono』
捨てられ戻る場所がない孤独さと苦しみを、花に帰るミツバチに語りかけるような歌詞。
アンナへの気持ちを捨てきれず落ち込むアントニオの心情を表した曲。

『Vaga luna, che inargenti』
優雅な月に向かい、恋する彼女にこの胸の高鳴りとため息を伝えて欲しいと願う歌詞。
一方的な愛はアントニオからアンナへの叶わぬ想いを表しているのだろう。
アンナの母が故郷で歌っていたと言ってたから、いずれ家を離れる我が子への愛の歌でもあるのかも。


キャストトーク

休憩を挟んでキャストトークがあったのでその時一人ひとりに対して感じたこととか。

山下さん
共演者の方々へだけじゃなくスタッフさんへの感謝を絶対に述べるところが大好き。環境を整えてくれた人に感謝できる視野の広さをもつ人だと改めて実感した。

演奏者の方々が出てくる時に前から見えるようにしゃがんでるし、こういう気遣いって小さいことだけど日々積み重ねてきたものが出るところでもあるよなと思いながらみてた。

司会者の方に名前呼ばれた時、胸に手を添えてお辞儀してたのかっこよかったなぁ。

一方で千晃くんから服にお茶こぼしたの暴露されてたし、まさともさんと楽屋で戦隊モノトークする約束してるし、そういう少年っぽさも良いよね。

とまぁつまりは、好きな気持ちが深まったよってことです。


千晃くん
なんというかそこはかとなくゆるい空気感だった。もちろんコメントはしっかりしてるし、テノールの方にさっとマイク渡しに行ったりしてて偉いなって思ったけど(誰目線)。でもこの絶妙な弟感が先輩に好かれるんだろうなぁ。
2021年何もなかったと言いつつ、今日のこと僕のことカレンダーに刻んでくださいっていうのも、めっちゃ千晃くんぽい。

重松さん
歩き方も動きも可愛かった。最後台本忘れてテテテテって走ってるところすごく可愛かったな。
(これで歌ったらあの揺れるような妖艶さなんだから参っちゃうなぁ…)
まさともさんに「夜公演で拍手煽ってください」って言ってたとこに関係性がみえて嬉しかった。


まさともさん
共演者全員に所感を述べつつ、話足りてなさそうなところ補完したりしてて、MCのうまさが発揮されてた。自分たちも観客も充分気をつけて愛知まで来たって、遠方からの人が肩身狭くならない感じで話してくれてたのがすごく嬉しかった。あと口元が、笑顔が見たいって言ってくれたのも。

あと重松さんに話振る前にさっと台本確認してて、(たぶんユキヒロの)名前確認したのかなって思った。
こういう話してない時の動き見るの好き。



最後に。

いや〜、なんか色々書いたけど、初めての朗読劇めちゃめちゃ楽しかったです!

4人とも割と知ってる人だったからこそ、ある程度落ち着いてみられたかな、と。

夜公演もみたい気持ちはあったけど、初めてで感じることがいっぱいあったから夜も観てたら多分キャパオーバーだった気がする。

好きな人を生でみて、演技を聴くことができてほんとに幸せな時間でした。

またいつか行きたい!!

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