ジェンダーギャップを解消するための「黄金の3割理論」
【2023年最新版】ITエンジニアの男女間賃金格差を調査
興味深い記事がありました。ITエンジニアの男女間賃金格差を調査した結果を考察した記事です。
サンプルサイズは以下とのことで、もう少し女性のサンプルサイズが大きいとよいのですが、それにしても目を引く男女の差異がありました。
年収800万円以上は30代女性の8%しかいないのに対して、30代男性は20%いる ということです。
もし、もっと大規模な調査が実現すれば、おそらくは40代以上はもっと男女差が広がっているのではないでしょうか。この結果にはIT業界から離脱していく女性のITエンジニアの人数が男性よりも多いことが影響していると思います。
そのため、「2009年に比べ4倍以上もITエンジニアを目指す女性が増えている」と言われながらも、「日本におけるITエンジニアの女性比率は約20%」に留まっているわけです。
このままでは、日本における女性のITエンジニアはマイノリティであり続けることになってしまいます。
黄金の3割とは
イギリスで創設された「30% Club」という世界的キャンペーンがあります。これは、取締役会を含む企業の重要意思決定機関に占める女性割合の向上を目的としたキャンペーンですが、定量的な目標として取締役会に占める女性割合を30%以上にするというものです。日本を含む19ヵ国で展開されており展開国の数は増え続けています。
この30%以上という数字には根拠があります。それは、ハーバードビジネススクール教授で経営学者のロザベス・モス・カンター氏が提唱した「黄金の3割」という理論です。
集団の中のマイノリティ(少数派)は、様々な阻害要因や少数派ゆえの課題により十分に力を発揮することができない状態にあります。30%(論文では35%になっているが、30%をゴールにしている組織や団体が多い)という数字は、「クリティカル・マス」と呼ばれる比率で、マイノリティがマイノリティでなくなる必要最低限の割合です。
つまり、「組織においてマイノリティと言われる人でも、その構成比率が3割を超えるとマイノリティではなくなり、意思決定に影響を及ぼすことができ、組織全体の変革が始まる」というものです。
まずは3割を目指すのがいいのではないか
当社の場合、取締役会以前に、全従業員に占める女性の比率が約12%と低い数字になっています。「クリティカル・マス」に到達するには、しばらく時間を要することになりそうです。なので、日本の社会、IT業界がどうあるべきかを語る前に、まずは自分自身に課題意識を持って取り組まなければなりません。
道半ばどころか、はじまったばかりの当社の取り組みですが、「女性ITエンジニアのロールモデルを増やす」ことからアプローチをすることにしました。
実力も能力もあるのにIT業界から離れてしまう人が過去に何人もいたのですが、「身近なロールモデルがいるかどうか。困ったときに相談できる人がいるかどうか」が会社の離職率を下げる、IT業界から離れる人の数を下げる、につながっていくと考えています。
たくさん女性のITエンジニアがいない場合は対策を自社で全て賄うのは難しく、bgrass株式会社が提供している『テック業界に特化した女性とジェンダーマイノリティのための相談支援プラットフォーム sister』を当社の女性社員は利用できるようにしました。その取り組みを始める経緯は、以下のnoteで紹介されています。
社内向けに「sister」利用についての説明資料を準備していますが、その中でこんなメッセージを書いています。
根本的には社会と業界全体でインフローとアウトフローの両方にアプローチしないと解決しない
根本的には、1つの会社で上手くいっていたとしても社会問題の解決にはつながりません。
たとえば、特定の海で魚を乱獲し続けるとどうなるのか。いずれは漁業関係者どころか、その国全体、あるいは多くの国がが困ることになるわけです。
これをIT分野に女性の力が必要という前提で社会の中で考えてみると、「ごく一部の会社だけは女性比率も高いし利益も出ている」が実現したとしても、将来に「社会全体でITエンジニアが不足していて日本経済が停滞する」と言い出すことになるわけです。
人材のインフローとアウトフローへのアプローチは、1つの会社へのものだけではなく、業界へのインフローとアウトフローについても考えて対策を打っていかないと解決に近づいていきません。そしてそれは、時間がかかることですし、責任の主体が誰なのかが不明確なものです。なので、社会のムードで優先度が左右されます。
それぞれの会社で競争があってしかるべきですが、社会全体が停滞したら元も子もないわけです。この考えに共感できる方(会社)がいれば、力を合わせて一緒に取り組んでいきましょう。
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