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一人暮らしはつづく

「帰る理由がみあたらねぇ!」
少し前、バツイチで一人暮らしをしているおじさんが言っているのをよく聞いていた。

その頃一人暮らしをはじめたばかりで、部屋に自分で買ったガーベラを飾り、掃除グッズをたくさん揃え、蛇口に浄水器を取り付け、毎日のお弁当作りをするくらい生活を楽しんでいた私はまったく共感できず、さみしい人だなぁくらいにしか思わなかった。

なのに、最近その人の気持ちがよく分かる。

一人の部屋に帰ると誰とも喋れない。次の日の朝出社して「おはようございまーす」を言うまで誰とも言葉を交わさない。テレビに爆笑する時と歌っている時以外は声も発しない。

これは息がつまる。会話したい。

とは言えさみしいからと誰かを誘うのも気が引けてしまうめんどくさがりな私は、先日ひとり焼き鳥デビューをした。

家から5分、外から見るといつも賑わっていてちょっと雑多な雰囲気が良い感じだ。うまくいけば気取らずにスウェットとかで通えるようになるかもしれない。行けば誰かが迎えてくれる場所に憧れて、帰る理由のない家にまっすぐ帰らなくても済むように勇気を出して暖簾をくぐった。


結果、


焼き鳥はめちゃくちゃ美味しかったからまた行きたいけど、終始緊張してひと時も心が休まらないし、強面の店主にかけた言葉は「ビールとねぎまとレバー」のみ、当初の目的だった会話を誰とも交わすことができずに1時間程Twitterを眺めて退散した。ひとり焼き鳥に完敗だ。

それでも、頑張って行き続けるうちにもしかしたら居心地が良くなるのかもしれないし、気があうひとり飲み友達ができるかもしれない。暖簾をくぐる勇気だけはもう少し持ち続けてみようと思った。

いや、持ち続けて良いのかしら。

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