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「成長の壁」はどれほど高い壁なのか? 〜ニンジャスレイヤーRPGじゆうけんきゅう

ニンジャの世界が変わると言われる「成長の壁」。
これを突破したものはより強力な攻撃力とスキルで他を圧倒するようになる。
現在、通常のPCで「成長の壁」を突破することは認められていないが、「仮にスクラッチビルドで成長の壁を突破するとしたら、何ポイント消費すれば良いか」を思考実験することにした。

これには以下のような応用性がある。
・NPCでボスを作成する場合、どの程度強い敵を作成するかの指標
 …成長の壁による消費ポイントを計算することで、例えば「ニンジャスレイヤーを作成するのにスクラッチビルドでは何ポイント必要か」を計算することができるようになる。これにより、「ニンジャスレイヤーより弱いNPCを作ろう」と考えた時、「どの程度弱くするか」を定量的に考えることができるようになる。

・イベントなどで「成長の壁」を取り除けるようにする場合、その難易度や妥当性を検証する場合の指標
 …シナリオ中のイベントで「成長の壁」を取り除けるようにしよう!とした場合、それが本当に妥当なのかを検証する材料となる。
  具体的には、「能力を1上げる効果」の何倍、「成長の壁を取り除く」ことには効果があるのかを検証することで、イベントを能力上昇イベントの何倍難しくすれば良いか、を考察することができる。

・成長の壁とは
  現在の公式ルールにおける成長システム上の「限界点」
  能力値は1D6のダイスしか振れないので、6が限界。これを突破すると2D6を振り、7以上に成長可能になる。

・今回の研究
 「成長の壁」はどれくらい高い壁であるか。
 基準として、「スクラッチビルドに換算するなら、どれくらいのポイントが適切なのか」を研究する。

成長の壁は、取り払った際に期待される効果と、実際に成長した後の効果の2要素が存在する。

・「成長の壁」を取り払った時に期待される効果
 ・トレーニングでの能力増加期待値の上昇 ※1

・「成長の壁」を取り払い、7以上に成長した時の効果
 ・ダイス数の増加
 ・『連続攻撃』や『連射』といった自動的なスキルの獲得による、火力の増加 ※2

今回は※1、※2の観点について調査し、それを勘案して「スクラッチビルド換算で何ポイントになるのか」を提案したいと思う。

以下長いので、先に結論とする。

結論

・成長の壁突破をスクラッチビルドで実現する時、そのポイントは8ポイント程度が適当であると考えられる。
・またイベントで「成長の壁」を突破させる場合、そのイベントは能力を5→6上げるイベントの3.5倍程度は効力があることを考えなければならない。

※1 トレーニングでの能力増加期待値の上昇

能力値6→7に上昇させる時の確率(能力増加の期待値)は、そのまま成長の壁突破時の効果として認められる。突破前は能力増加期待値は0なので、仮に「スクラッチビルド」で成長の壁を取り除くと仮定すると、能力値6→7に上昇させる確率分、作成キャラクターは恩恵を受けたことになる。

では期待値はいくらか。これは能力上昇ダイスを振った時の成功確率に等しい。
つまり、2d6>=7の確率である。
今回は以下のサイトより確認させてもらった。
https://www34.atwiki.jp/hddt/pages/16.html

このサイトによると、出目の合計が7以上となる確率は58.33%である。
58.33%の確率で能力が1上昇するので、能力増加期待値は0.5833である。
これは「スクラッチポイントをnポイント消費して成長の壁を突破した場合の効果力」といえる。

では能力を5から6に成長させる場合の能力増加期待値と比べてみよう。
これは1d6>=6の確率に等しい。
つまり能力増加期待値は0.1667である。
これは「スクラッチポイント1ポイントを消費して能力をあげた場合の効果力」といえる。

これより、成長の壁を取り払うのは、能力を5から6にあげる際の効果から、 0.5833 / 0.1667 = 3.4991 となり、
5→6にあげるポイントの3.5倍程度の効果を持つことになる。
つまり、能力増加期待値の観点からは、成長の壁を取り払うのに必要なポイントはおおよそ3〜4ポイントと考えることができる。
またこの値は「能力上昇イベント」と「成長の壁突破イベント」の効力差としても考えることができる。
つまり、能力を5→6に上げるイベントより、成長の壁を突破するイベントの方が3.5倍効力があるので、それに合わせて成功率は低く抑えた方が良いことを示唆する。成功率を5→6に上げるイベントの1/3程度にするとちょうど良いのではないだろうか。

※2 『連続攻撃』などのスキル獲得による、火力の増加
上記の※1で能力が上昇すると、『連続攻撃2』などの、1ターンに2回攻撃するスキルを獲得できるようになる。
これにより、能力値6までのキャラよりも格段にダメージ期待値が上昇していると予想できる。これも『成長の壁』を取り払ったことによる効果である。

では実際にどれほどダメージ期待値が上昇したのか。
成長の壁を取り払う前(X1)と、成長の壁を取り払い、能力が上昇した後(X2)の値を比べてみよう。

X1を実現するため、スクラッチビルドのポイントを6消費して能力値を6にした、と仮定する。
X2を実現するため、X1の操作後、成長の壁をスクラッチビルドのポイントmで除去し、さらに1ポイント消費して能力値を7にした、と仮定しよう。
この状態でX1とX2のダメージ期待値を算出する。
攻撃は【近接攻撃】とし、サイバネなどの装備はいずれもなく、相手の回避は無視する。この場合、命中した時のダメージは1となる。
X2は常に最大火力である『連続攻撃2』を選択するものとする。
また、ダメージについては『サツバツ!』によるダメージ上昇もある。今回はサツバツ!の期待ダメージを「2」として計算する。
そのほかニンジャがダイス数、およびダメージに影響する固有のスキルを持たないものとする。
攻撃難易度についてはNORMALと、連続側転後の攻撃によるHARD、さらに攻撃集中によるEASYの3通りで計算する。そのほかの難易度については今回は割愛する。

難易度NORMALでのダメージ期待値
X1N = (6d6>=4)の確率 - (6d6で2つ以上6が出る確率) + (6d6で2つ以上6が出る確率)*2
 = (6d6>=4)の確率 + (6d6で2つ以上6が出る確率)
 = 0.984 + 0.263 = 1.247

X2も上記計算式を応用する。
X2N = (4d6>=4)の確率 +(4d6で2つ以上6が出る確率) + (3d6>=4)の確率 + (3d6で2つ以上6が出る確率)
 =0.938+0.132+0.875+0.074 = 2.019

X2N - X1N = 0.772
である。

難易度HARDでのダメージ期待値
X1H = (6d6>=5の確率) + (6d6で2つ以上6が出る確率) = 0.912 + 0.263 = 1.175
X2H = (4d6>=5)の確率 +(4d6で2つ以上6が出る確率) + (3d6>=5)の確率 + (3d6で2つ以上6が出る確率) = 0.802 + 0.132 + 0.704 + 0.074 = 1.712

X2H - X1H = 0.537
である。

難易度EASYでのダメージ期待値
X1E = (6d6>=3の確率) + (6d6で2つ以上6が出る確率) = 0.999 + 0.263 = 1.262
X2E = (4d6>=3)の確率 +(4d6で2つ以上6が出る確率) + (3d6>=3)の確率 + (3d6で2つ以上6が出る確率) = 0.988 + 0.132 + 0.963 + 0.074 = 2.157

X2E - X1E = 0.895
である。

以上3通りの攻撃が、仮に等しい確率で出るとしよう。
その場合は上記3つの値の平均となる。

上記の平均値は 0.735 である。

この値が、「仮にスクラッチビルドで成長の壁を取り除き、7へ成長させた場合」の、ダメージ増加期待値(★1)である。
つまり、スクラッチビルドのポイントで換算すると、m+1ポイント消費したことで、ダメージが0.735増加した、ということになる。

さて、成長の壁を取り除いた場合のダメージ期待値を測ることはできたが、この値は果たして大きいのだろうか?それとも小さいのだろうか?
これを測るには同じ指標を用意し、比較する必要がある。ではどんな指標を用意すべきか。
同じダメージ期待値をとして、「スクラッチビルドで能力値を1増加させた時のダメージ期待値」を測ろう。
能力値0から6までの間において、最もダメージ期待値が高いのは0→1の時であり、それ以降は1増加するごとに期待値の増分は逓減するが、今回は成長の壁を破る直前の能力増加を指標として比べよう。

比べる能力値はそれぞれ5(Y1)と6(Y2)である。
前提条件は全てスクラッチビルドのポイント消費でそれぞれの値まで増加させたこととし、そのほかの条件は先の計算と同じものとする。

難易度NORMALでのダメージ期待値
Y1N = (5d6>=4)の確率 + (5d6で2つ以上6が出る確率)
 = 0.969 + 0.196 = 1.165
Y2N = X1N = 1.247

Y2N - Y1N = 0.082

難易度HARDでのダメージ期待値
Y1H = (5d6>=5の確率) + (5d6で2つ以上6が出る確率) = 0.868 + 0.196 = 1.064
Y2H = X1H = 1.175

Y2H - Y1H = 0.111

難易度EASYでのダメージ期待値
Y1E = (5d6>=3の確率) + (5d6で2つ以上6が出る確率) = 0.996 + 0.196 = 1.192
Y2E = X1E = 1.262

Y2E - Y1E = 0.070
3つの期待値平均は 0.088 である。
この値が、「スクラッチポイント1を消費して、能力値を5から6に上昇させた時のダメージ期待値」(★2)である。

ここで★1と★2を数式化する。

スクラッチポイント1ポイントあたりのダメージ期待値の増分を定数kとするとき、
★1・・・(m+1)*k = 0.772
★2・・・k = 0.088
よってm = 7.773 となる。

つまり、成長の壁を取り払う効果をスクラッチビルドで実現する場合、ダメージにおける効果期待値は能力を5→6に上昇させる場合の7.77倍、効果があることになる。

ダメージ期待値の観点から見ると、成長の壁をスクラッチビルドで取り払う場合は、「おおよそ8ポイント分」と見積もれば良いことになる。

能力値の上昇期待以上に、ダメージ期待値の格差が現れる結果となった。これはスキル『連続攻撃』などの自動獲得スキルによる影響であると考えられる。

注意点
今回の計算では以下の仮定に基づいている。これらの仮定を詳細に検討し、上記の計算式に当てはめることでさらに精密な影響力を測ることができるだろう。

・サツバツ!のダメージを一律2としている(もっと高いかもしれない)
・サイバネやカタナなどのダメージを増加させ得る装備は検証していない。
・ダメージ以外での影響がどうなるかは考えていない。
・スクラッチビルドで6→7に上げる場合、ポイント消費は「1」でいいのか?
 (壁突破後は2ポイントの方が妥当かもしれない)
などなど。

だが私はめんどくさいのでやらない。
私は数学の輩ではないので、抜け漏れなどもたくさんあるだろうし、値の正確性を保証するものでもない。
参考意見として、一読いただければ幸いである。

またより精密に検証してくれる方も募集中。


ニンジャスレイヤーTRPGを盛り上げるために、もしよろしければドネートを…!聖戦の継続の為に…!