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『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』、桃谷ジロウに自分を重ねすぎて辛い

大人気作品の『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』。

普段スーパー戦隊シリーズを見ない私でも、放送開始時からドンブラザーズの噂は聞いていた。王道な展開、大人も楽しめるシナリオ、キャラクターの面白さ、社会派なテーマなど盛り盛りで虜になった。

1年近く一切たれることなく、ずっと面白い作品だ。その中に登場する「桃谷ジロウ」というキャラに心をガッツリ掴まれた。いわゆる、追加戦士としてドンブラザーズに協力(妨害?)するヒーロー。

田舎で育ったジロウは、自身に「生まれながらのヒーロー」だと言い聞かせ(設定上、特別な人間なのだが)、上京。ドンブラザーズの主人公である戦隊のレッド・桃井タロウたちと共に敵と戦っていく。

ジロウは戦いの中で、どう見ても上位互換であるタロウに対抗意識が芽生ええる。大きくなりすぎてしまったライバル心は別の人格として現れてしまう。

劇中では危ないジロウと呼ばれ、純粋にヒーローに憧れる表ジロウとは違い、喧嘩っ早く、邪魔者は殺せ!というような獰猛な性格を持つ。

裏ジロウはタロウを倒して、本当のヒーロー、強者になるという野心が具現化したようなキャラクターだ。

しかし、彼は自分の中に潜む裏ジロウを認識しているが、裏ジロウも大切な自分のひとつだと考えており、2つの力のコントロールに手こずりながら着実に成長し戦いを続けている。


自信と野心に心乱されるジロウ

初登場はけっこうムカつくキャラだった。しかし二重人格キャラとして成立して以降、どうしても自分を重ねてしまっている。

田舎から都会へやってきた、「根拠のない自信」と「何者かになりたい野心」を抱いた若者であるジロウは多くの地方出身者にとって重なる部分があると私は思う。

私も地方出身者。中高生の時は、ちょっとちやほやされて「ワイ、おもろい人間なんや」と自分は特別な人間のような気がしていた。その後、運良く有名大学に入り上京。東京で何者かになれるだろうな、と根拠のない自信に溢れていた。

実際は、地方の特別は東京の普通で(そもそも特別か?)、人間はそれほど他人に興味がない事を知っていく。

ライターになった今だって、消えてしまいそうな「根拠なき自信」に薪をくべ続けながら、肥大していく「何者かになりたい野心」を抑えるのに必死だ。

ドンブラザーズ本編での桃谷ジロウの喜びや、葛藤が描かれるたび、「自分の事なんじゃねえか?」と思う。彼を全力で応援しつつ、物語の最後にジロウが一体どうなってしまうのか、怖さもある。


野心、ハウス!

ジロウは表裏2つの力を使って、彼単体で合体ロボに変身することができる。

ピュアで正義の心を持つ、表のジロウは龍がモチーフ。暴力性と野心を持つ裏ジロウは虎がモチーフになっていて、合体ロボになる際にはドラゴンのロボがトラを追いかけてとっ捕まえて合体する。


デザインも秀逸だが、彼の胸に収まったトラにたいしてジロウは「ハウス!」と呟く。彼はもうひとりの自分としっかり向き合って、野心を飼いならしヒーローという目標に突き進んでいく。

お供を従えた、自分より強い桃井タロウたちと共に戦いながら、彼がどんな人生を生きて、答えを出すのか。ドンブラザーズが完結するまで絶対に死ねない。

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