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宇宙の果ての先の星

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“宇宙の果ての先の星”に関連する超短編小説
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#宇宙の果ての先の星

出来るだけ早く来てね

「1971番、そろそろ時間だ」

私は椅子から立ち上がった

「1971番、何か言いたいことはあるか?」

首を横に振り前を向く
本当は言いたいことは山ほどある

「では行くぞ…」



「出来るだけ早く来てね、宇宙船に乗るまでは毎日連絡して!」

「もちろんだよ、できるだけ早く今の仕事に目処をつけるから」

「うん!」
私より20歳以上若いのだから当たり前だが、目が細くなった笑顔は何処となく幼

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あなたと私

「あなた、本当に大丈夫なの?」

「もちろんさ。今月帰還したシャトルのメンバーの報告だと、酸素も豊富で人間が生きていくには最適な環境ということらしいぞ」

「そういうことじゃなくて、あなたの政治生命にも関わることなのよ。」

「君には心配ばかりかけて申し訳ないとおもっている。だけど、この事業は私の夢でもある生まれながらの貧富の差をなくす社会の第一歩になるはずだ。移住した人が平等に宇宙の

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ウサギ

「宇宙の果ての先の星のこと、どう思う?」

「おもしろい試みだとは思うが、まだまだ難しい面も多いだろう….」
父は無関心に答えた。

「私、宇宙の果ての先の星に移住したいと思ってる」

「おいおい、急に何を言いだすんだ。それにどうやって生活するんだ」

「お父さん、一緒に行ってくれる?」

「無理に決まってるじゃないか。」

「じゃ、私1人で行くわ」

「1人で行くって

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あなたと新生活

「“宇宙の果ての先の星”に行って本当に幸せな生活が保証されるの?私とっても不安だわ。親も友達もいないし…」

「あの星は僕たちが住むのに十分な酸素もあるし、この星より自然が豊富っていわれてる。基本的なインフラも完備されているし、これからみんなが移住するから人種も仕事による収入なども差別や格差もないスタートがきれるはずだよ。それにさ…」

「それに?」

「僕がいるじゃないか」

「それはそうだけど

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戦士がみた青い星

この10日間の戦いで、僕の体はキズつきすぎていた

3日間もあれば解決するはずが、反乱軍の戦闘機の戦力がアップしていたことと、こちらは援護がほとんどないほどの数に減ってしまっていたのも誤算だった

とにかくコロニーで最低限ではあるが、破損した関節部分の補強とやはり最低限の燃料補給はしてもらわないと。

もしすぐ彼奴らがまた奇襲攻撃でもされたもんなら、今度はキズや破損ではすみそうにもない

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そして彼は来なかった

この星での最後の食事は、ため息と共に独りの食事となった。

彼となら“宇宙の果ての先の星”でも楽しくやっていけるとおもってた。
でも彼が今日こないこともわかってた。

でも私は決めたんだ、あの星で生活するって。

「ホットコーヒーお待たせしました」

「ありがとう」

あれ?コーヒーってこんなに美味しかったかな。
この星で最後に口にした食事は、味気ない気持ちとは裏腹に想い出深

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今夜旅に出ることにした

急に思いついたわけではない。前からそう思っていた。ただそれが今夜実行されるだけだ。

最低限の荷造りの用意をして、先日買ったショルダーにそれを詰め込んだ。

荷物といっても型落ちどころかジャンクショップで偶然見つけたタブレット端末とモレスキンノートに筆記用具。タブレット端末なんて今どき持っている奴なんていないだろうが、以前の所持していた野郎が純文学が好きだったのか電子書籍がそのままインスト

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